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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第4章 仮面舞踏会の真実

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第49話 グランツ商会の影

ヴィクトールとの商談は順調に進んでいた——表面上は。


 グランツ商会は確かにシルヴァーノ湖の加工魚事業に出資を申し出、王都での流通網を提供すると約束した。条件は公正で、シルヴァーノ側に不利な条項はない。


 だが——ブレンナーが懸念を示した。


「レン殿。グランツ商会の動きが、少し気になります」


「何かありましたか」


「商会が、シルヴァーノ領内の鉱山権も調査しているとの噂があります。加工魚だけでなく——領内の資源全般に食指を伸ばしている」


「鉱山?」


「シルヴァーノ湖の北東部に、小規模ですが銀鉱山があります。現在は休止中ですが、採掘権はシルヴァーノ公爵家のもの」


 銀鉱山。採掘を再開すれば経済的な柱になるが——外部の商会に権利を握られれば、事実上の経済的支配を受けることになる。


「ヴィクトール殿は——変わったんじゃなかったのか」


「人格は変わったかもしれません。しかし、商人としての嗅覚は鋭いままです。善意と利益追求は同居し得ます」


 ブレンナーの好感度、【+28】。冷静な分析者としての信頼が滲む数字。


 俺は好感度の制御を使った。「見る」モードで、グランツ商会から来ている交渉担当者の好感度をチェックする。


 担当者の好感度——【+5】。穏やかな数値。悪意はないが、強い好意でもない。ビジネスライクな態度。


 問題は——この担当者がヴィクトール本人の意向をどこまで反映しているか。


「リゼットに報告します」


「お願いします」


 執務室でリゼットに伝えた。


「銀鉱山の件——知っています」


「知ってたんですか」


「ヴィクトールが来た時から、可能性は考えていました。彼は政治家から商人になっただけです。目的が権力から利益に変わっただけで——他者の資源を自分の手中に収めたい本質は変わっていない」


「じゃあ商談は——」


「続けます。ただし、銀鉱山の権利に関しては一切の交渉に応じません」


 リゼットの声は冷徹だった。公爵としての判断。


「加工魚の流通は利用させてもらい、鉱山は死守する。グランツ商会が鉱山に手を出そうとした時点で——取引を打ち切ります」


「わかりました。流通契約の条項に、資源権の不可侵を明記しましょう」


「ええ。お願いします」


 敵ではなくなったが、味方でもない。利害関係における対等なパートナー。


 ヴィクトールとの関係は——好感度+3の精度で、慎重に管理する必要がある。


 好感度が見える能力を持っていて良かった。——いや、今は「見るか見ないか選べる」ことが重要だ。


 ヴィクトールの好感度は、見る。


 リゼットの好感度は、見ない。


 使い分ける。それが第四段階の力。


 呪いを道具として制御する。


 ようやく——この能力の正しい使い方が、わかってきた。

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