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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第4章 仮面舞踏会の真実

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第46話 白い薔薇が色づく時

???にプラスの記号が見えた——その翌朝。


 別邸に泊まった俺たちは、朝食の席でセラフィーナと顔を合わせた。


 彼女はいつも通り微笑んでいた。だが——昨日とは、何かが違う。言葉にできない違い。


 好感度チェック——


 【???】


 戻っている。一瞬見えたプラスの記号は消え、再びクエスチョンマーク。


 だが——昨日、確かに動いた。罅が入った。それは消えない。


「セラフィーナ。昨日はよく眠れましたか」


 リゼットが聞いた。以前なら「報告してください」と言っていた場面だが、今は友人としての気遣い。


「……夢を、見ました」


「夢?」


「はい。感情が凍結してから——夢を見ることはなかったのですが。昨夜、初めて」


 感情がない人間は夢を見ない。夢は感情の残響だから。


「何の夢でしたか」


「母の夢です。母が——泣いていました」


 場が静まった。


「私が泣けないから——代わりに母が泣いている夢でした」


 セラフィーナの声には感情がない。事実を述べているだけだ。


 だが——夢を見たこと自体が、変化の証だ。凍結された感情の氷に罅が入り、そこから記憶の断片が夢として漏れ出した。


「セラフィーナ様。聖典の続きを、もう一度確認させてもらえませんか。今の『兆候』について、気になる記述があった気がするんです」


「構いません」


 あの夜、眼の痛みに耐えかねて途中で切り上げた箇所。そこには、まだ俺の知らない真実が眠っているはずだ。


 俺は銀の瞳を凝らし、聖典の白紙に見える部分へと視線を落とした。


   **『凍結の契約の解除は段階的に進行する。第一の兆候——夢の復活。


第二の兆候——身体反応の増幅。第三の兆候——感情の断片的な回復。最終段階——涙。』**


 段階的。一度に溶けるのではなく、少しずつ。


「段階的に進むそうです。夢は第一の兆候——解呪が始まっています」


 セラフィーナが俺を見た。微笑みは——やはり仮面のままだが、目の奥に何かが灯り始めている。意志か。記憶か。あるいは——まだ名前のない何か。


 朝食後、庭園を散歩した。リゼットとセラフィーナが並んで歩き、俺は少し後ろを歩く。


 二人は子供時代の話をしていた。


「この薔薇園、昔は赤い薔薇もあったのに」


「母が亡くなった後、全て白に植え替えました。母の好きだった色だけを残したかったので」


「……でも、お母さんは赤い薔薇も好きだったでしょう」


「…………」


「私、覚えているわ。あなたのお母さんが赤い薔薇を摘んで、あなたの髪に飾ってくれたこと。あなた、すごく嬉しそうだった」


 セラフィーナが立ち止まった。


「覚えています。記憶として」


「嬉しかった?」


「その時は——嬉しかったと、記録されています」


「今は?」


「今は——」


 セラフィーナが白い薔薇を見た。


「わかりません。でも——赤い薔薇を植えてもいいかもしれない、と……思います」


 思う。感情ではなく意思として。


 だが——「植えてもいいかもしれない」という言葉の中に、何かが芽吹いている。


 リゼットが微笑んだ。柔らかく、温かく。


「植えましょう。一緒に」


 好感度は——リゼットは見えない。セラフィーナは???。


 だが——三人の間に、確かに何かが通い合っている。数字では測れない。数字がなくても感じられる。


 それを——信頼と呼ぶのだろう。


 帰りの馬車の中で、リゼットが小さく言った。


「レン」


「はい」


「……ありがとう。セラフィーナのところに連れて行ってくれて」


「リゼット様が来てくれたから——」


「リゼット、でいいです」


「え?」


「様はいりません。もうずっと——いらないと思っていました」


 好感度は見えない。でも——隣に座るリゼットの肩が、俺の肩に触れていた。


 あの時、椅子を並べていた5センチの距離が——ついにゼロになった瞬間。

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