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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第4章 仮面舞踏会の真実

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第45話 好感度なんて気にしなくていい

リゼットとセラフィーナが子供時代の話をしている間、俺は別室で聖典の写本を広げていた。


 解呪に必要なのは、セラフィーナが自らの意志で涙を流すこと。


 だが感情がない人間に、感情で泣けとは言えない。


 聖典を改めて読む。


   *『心鏡の所有者が真の信頼を示した時、凍結の氷に罅が入る』*



 真の信頼。


 リゼットの好感度が消えた時、俺は彼女を「数字ではなくそのまま」信じた。結果として呪いの第三段階を突破した。


 セラフィーナに対しても同じことを——「好感度が見えなくても信じる」ことを示せばいいのか?


 いや——少し違う。


 セラフィーナの場合、好感度が【???】なのは俺の問題ではなく、彼女の問題だ。感情が凍結されているから数字が出ない。


 俺が信頼を示しても、受け取る側の感情がなければ——氷に罅は入らないのでは?


 ——いや。感情はなくても「意思」はある。


 セラフィーナは、会いたいと思った。記憶を守りたいと思った。手紙を書いた。


 意思は生きている。


 なら——信頼を示す相手は、感情ではなく意思だ。


 応接間に戻った。リゼットとセラフィーナは、並んで窓の外を見ていた。白い薔薇の庭園。夕焼けが白い花弁を橙色に染めている。


「セラフィーナ様」


「はい」


「一つ、聞いてもいいですか」


「どうぞ」


「俺の好感度——セラフィーナ様から見て、どう見えますか?」


 セラフィーナが首を傾げた。


「……好感度? 私には、そのような能力はありませんが」


「いえ、能力じゃなくて。普通の感覚で。俺のこと——どう思いますか」


「…………」


 セラフィーナが考え込んだ。微笑みが——消えていた。


「わかりません。どう思うか、と聞かれても——思うための感情がないので」


「じゃあ、質問を変えます。俺が明日死んだら——セラフィーナ様は、何か変わりますか?」


 不躾な質問だった。だが——核心を突くために。


「…………」


 長い沈黙。


「変わらない——と思います。悲しめないので」


「そうですか」


「でも——」


「でも?」


「……手紙の宛先が、一つ減ります」


 その答えに——俺は、確信を持った。


 感情がなくても。好感度が見えなくても。数字が???でも。


 セラフィーナの中には——「つながり」がある。感情ではなく、意思としてのつながり。手紙の宛先が減る——それは、彼女にとっての「喪失」だ。


 感情のない喪失。論理としての喪失。


 でも——喪失は喪失だ。


「セラフィーナ様。俺からも一つ伝えたいことがあります」


「何でしょう」


「好感度なんて——気にしなくていいです」


「…………」


「俺には人の好感度が見える能力があります。セラフィーナ様の好感度は【???】——見えません。でも、それでいいんです」


 セラフィーナの蒼い瞳が——俺を見つめた。


「見えなくても、俺はセラフィーナ様を信じます。あなたが感情を持っていなくても、笑えなくても、泣けなくても——あなたが手紙をくれたこと。証拠を届けてくれたこと。リゼット様を心配してくれたこと。全部——値がなくても、確かです」


「…………」


「数字なんて、なくていい。好感度がゼロでも、マイナスでも、???でも——セラフィーナ様は、俺の大切な人です」


 リゼットが隣で静かに頷いた。


「私も——同じです。セラフィーナ。あなたの好感度がどうであれ——あなたは、私の友人です」


 セラフィーナの微笑みが——揺れた。


 いつもの仮面の微笑みではない。何かが——内側から揺れている。


「…………」


 セラフィーナが唇を開いた。声が——かすれた。


「ありがとう——ございます」


 その瞬間。


 好感度が——動いた。


 【???】が——ちらついた。ノイズのように。


 一瞬だけ——数字の断片が見えた。


 【+■】


 完全には読めない。だが——プラスの記号が見えた。


 ???の向こう側に——感情の欠片が、芽吹いた。


 氷に、罅が入った。

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