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異世界に転生したら、頭の上に「好感度ゲージ」が見える体質だった~ヒロインの好感度が下がるたびに俺の体力が減るので、命がけでデートしている~  作者: ハイさん
第2章 氷の令嬢と命がけの茶会

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第18話 三人の温度差

 フィーネの件があってから、俺は三つの好感度を同時に意識するようになった。


 リゼット:【-10】(徐々に回復中。仕事上の信頼は維持)

 フィーネ:【+65】(安定しているように見えるが、内側に波がある)

 自分の心の中:測定不能


 三つ目が一番厄介だ。


 ある日の午後。珍しく三人が同じ空間にいる状況が生まれた。


 リゼットの執務室にフィーネが報告に来たのだ。護衛騎士見習いとしての管轄——城周辺の巡回報告。俺はたまたま執務室で書類整理をしていた。


「——以上、特に異常はありませんでした。ただ、南門付近で不審な商人が目撃されたとの報告が村の警備兵から上がっています」


 フィーネの報告は手短で正確だ。騎士見習いとしての有能さが際立っている。


 リゼットは報告を聞きながら頷き、指示を出した。


「南門の巡回頻度を上げなさい。二人一組で。単独行動は避けるように」


「了解しました」


 フィーネがリゼットに報告している時の好感度を見る。


 フィーネ:【+65】。安定。俺に向けられる数字だが、リゼットと話している間は穏やかに安定している。フィーネはリゼットのことが好きなのだ。護衛対象としてだけでなく、一人の人間として。


 だが——


「リゼット様、最近すごくお忙しそうですけど、体調は大丈夫ですか? ちゃんと食べてます?」


「問題ありません」


「うそー。昨日の夕食、半分残してたって厨房の人が——」


「フィーネ」


「はーい、おせっかい終わり。でも心配してるのはホントだからね」


 このやり取りの間、リゼットの好感度(俺に対する)は微動だにしなかった。フィーネとの会話は俺とは関係ないから、数字は動かない。


 ——だが。


 フィーネが報告を終えて帰り際、俺に声をかけた。


「レン、今日の訓練は夕方でいい?」


「うん、いいよ」


「じゃあ後でね!」


 フィーネが明るく手を振って出ていった。


 その瞬間——リゼットの好感度が動いた。


 【-10】→【-13】


 下がった。フィーネが俺と親しく会話するのを見て、3ポイント下がった。


 茶会の時にもあったパターンだ。俺がフィーネと親しくすると、リゼットの好感度が下がる。


 嫉妬——なのだろうか。


 だが、「嫉妬」のような激しく熱い感情なら、もっと数字が荒れ狂うように大きく動くはずだ。


 今回は下がっている。ということは——嫉妬ではなく、別の感情?


 いや——待て。


 嫉妬の形が違うのかもしれない。


 激しい嫉妬なら心拍数が上がってプラスに振れる。だが、「静かな嫉妬」——つまり、嫉妬している自分を恥じている場合は?


 「そんな感情を持つべきではない」と自分を戒め、冷たい態度で蓋をする。リゼットらしい反応だ。


 態度がマイナスに振れるから、数字もマイナスに動く。感情の中身が嫉妬でも、「嫉妬を否定する態度」がマイナスを生む。


 ——ああ、もう。本当に複雑だ。


「リゼット様」


「何ですか」


「次の書類、取りに行ってきます」


「……ええ」


 書類棚に向かう途中、ふと振り返ると——リゼットが窓の外を見ていた。


 窓の向こうには、訓練場に走っていくフィーネの後ろ姿が小さく見えた。


 リゼットの表情を読むことはできなかった。いつも通りの無表情。だが——その無表情の奥に何があるのかを、俺は少しだけ想像できるようになっていた。


 リゼットは孤独だ。


 フィーネのように気さくに声をかけることもできない。俺のように不器用に歩み寄ることもできない。


 自分から手を伸ばせない人なのだ。


 伸ばし方を、知らないから。


 書類を持って戻ると、リゼットは何事もなかったように作業を再開していた。


 好感度、【-13】→【-11】。微かに回復。


 三人の温度——


 リゼットは氷点下。

 フィーネは春の日差し。

 俺は——たぶん、ぬるま湯だ。


 どちらにも寄りかかれず、どちらとも一定の距離を保っている。


 でも——氷の方に、手を伸ばしたいと思っている自分がいる。


 それがどういう意味なのか——もう、わかっている。


 わかっているから、まだ認めたくない。

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