表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの夜──モブの私はパーティーの仲間と四股(よんまた)します!  作者: 転生新語


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

ドラゴンの夜

全員(ぜんいん)()きて! (まち)襲撃(しゅうげき)されるわ!」


 いち(はや)装備(そうび)()()け、私は宿(やど)仲間(なかま)怒鳴(どな)りつけるように、()こしていった。比較(ひかく)(てき)軽装(けいそう)である、魔法使(まほうつか)いと僧侶(そうりょ)が私に(つづ)いて身支度(みじたく)()える。


(まち)中央(ちゅうおう)広場(ひろば)移動(いどう)して! そこからなら、どの方面(ほうめん)へも()ける。住民(じゅうみん)避難(ひなん)(さい)優先(ゆうせん)にするわよ!」


 野伏(レンジャー)の私は、パーティーの(なか)でもっとも、救助(きゅうじょ)活動(かつどう)()いている。これからが、このゲーム世界(せかい)での最終(さいしゅう)決戦(けっせん)である。まずは(まち)住民(じゅうみん)(まも)り、それから(りゅう)(おう)(たたか)うのだ。


 宿(やど)()て、私と魔法使(まほうつか)いと僧侶(そうりょ)中央(ちゅうおう)広場(ひろば)(はし)る。石畳(いしだたみ)()()けて、()(まど)人々(ひとびと)横目(よこめ)()ながら(とう)(ちゃく)した広場(ひろば)で、夜空(よぞら)見上(みあ)げる。(りゅう)(おう)単独(たんどく)()んでくるのが()かった。


 爆撃機(ばくげきき)(おも)わせる、(あか)(はだ)巨体(きょたい)である。(つばさ)をはためかせながら、(はる)上空(じょうくう)から(ほのお)()いてきた。直撃(ちょくげき)()ければ、ひとたまりもない。(こう)不幸(ふこう)か、(りゅう)(おう)は私たちなど眼中(がんちゅう)になく、無差別(むさべつ)(まち)家屋(かおく)()いていった。もちろん、この世界(せかい)消防車(しょうぼうしゃ)などはない。


魔法使(まほうつか)いは(みず)魔法(まほう)で、できるだけ火災(かさい)()して! 僧侶(そうりょ)怪我人(けがにん)(さが)して、回復(かいふく)呪文(じゅもん)手当(てあ)てを! 二人(ふたり)とも手分(てわ)けをして、できる範囲(はんい)消火(しょうか)回復(かいふく)をお(ねが)い!」


「わかった!」、「わかりました!」と、私の指示(しじ)二人(ふたり)(はな)れていく。憲兵(けんぺい)住民(じゅうみん)避難(ひなん)誘導(ゆうどう)をしていて、私がいる中央(ちゅうおう)広場(ひろば)には戦士(せんし)合流(ごうりゅう)してきた。


戦士(せんし)(いえ)(くず)れた(あと)に、下敷(したじ)きになった(ひと)がいないか確認(かくにん)して! 可能(かのう)なら(いし)をどかして、怪我人(けがにん)がいたら救助(きゅうじょ)を。臨機(りんき)応変(おうへん)にお(ねが)い!」


「あいよ、了解(りょうかい)!」


 (まち)家屋(かおく)石造(いしづく)りで、木造(もくぞう)より火災(かさい)()(ひろ)がることは(すく)ないが、(くず)れたときの落石(らくせき)(こわ)い。そんなところに()けと()われて、()危険(きけん)(かえり)みず、ただ戦士(せんし)(はし)っていった。


「レ、野伏(レンジャー)! 私は(なに)をすればいいの? ねぇ、指示(しじ)()して!」


 最後(さいご)広場(ひろば)合流(ごうりゅう)してきた、勇者(ゆうしゃ)が私へ、(すが)るような()()けてくる。戦闘(せんとう)ではリーダーであり、普段(ふだん)のパーティーをまとめる役割(やくわり)彼女(かのじょ)(いま)、とても無力(むりょく)だった。彼女(かのじょ)だけではない。(おお)いなる(わざわ)いの(もと)では、個人(こじん)など無力(むりょく)なものなのである。


 (そら)から()()く、(りゅう)(おう)討伐(とうばつ)できる軍隊(ぐんたい)などはいない。(ねむ)っている(りゅう)(たお)すべく(だい)部隊(ぶたい)展開(てんかい)すれば、(かえ)って(りゅう)(おう)目覚(めざ)めかねなかった。だから勇者(ゆうしゃ)(ひき)いる私たち五人(ごにん)パーティーが、(りゅう)暗殺(あんさつ)するべく結成(けっせい)されたのである。その私たちも、(いま)分断(ぶんだん)された状態(じょうたい)だ。


 前世(ぜんせい)のゲームだと、ここで私は選択(せんたく)(せま)られる。あちこちに()かれたパーティーの仲間(なかま)の、(だれ)一人(ひとり)と私は合流(ごうりゅう)目指(めざ)すのだ。そして──私と、合流(ごうりゅう)()たした一人(ひとり)仲間(なかま)しか、()(のこ)ることはできない。(ほか)三人(さんにん)(りゅう)(ほのお)()かれて、この()()ってしまう。


 私は仲間(なかま)一人(ひとり)(とも)(りゅう)(おう)(たお)し、好感度(こうかんど)()げていれば、めでたく仲間(なかま)(むす)ばれてエンディングとなる。(さき)()べたとおり、この世界(せかい)蘇生(そせい)魔法(まほう)はない。()(のこ)った私たちは、仲間(なかま)()()()えて力強(ちからづよ)()きていくのだった。それがゲームのシナリオだ。


「……勇者(ゆうしゃ)は、私と一緒(いっしょ)()て。やってほしいことがあるの」


「なにか作戦(さくせん)があるのね。いいわ、(はや)()きましょう!」


 そう、私には(かんが)えがある。(けっ)して、四人(よにん)仲間(なかま)(だれ)()なせはしない。ゲームには(べつ)のシナリオもあって、その(じつ)(げん)には勇者(ゆうしゃ)存在(そんざい)不可欠(ふかけつ)なのである。火災(かさい)(けむり)()()()()()ように、勇者(ゆうしゃ)()()って私は(まち)なかを(はし)った。




 おかしな(はなし)だが、この状況(じょうきょう)で私が勇者(ゆうしゃ)(はな)れない(かぎ)り、(ほか)仲間(なかま)()ぬことはない。前世(ぜんせい)のゲームシステムがそうなっているのだ。私たち五人(ごにん)パーティー全員(ぜんいん)が、(まち)人々(ひとびと)避難(ひなん)させるため()()りになると、()主人公(ロイン)の私が合流(ごうりゅう)する仲間(なかま)(だれ)にするか(えら)ぶイベントが(はじ)まる。


 いわば、三人(さんにん)仲間(なかま)()進路(ルート)確定(かくてい)するのであり。(ぎゃく)()うと、ここで特定(とくてい)行動(こうどう)()こせば、四人(よにん)仲間(なかま)生存(せいぞん)するルートへ移行(いこう)できるのだ。私と勇者(ゆうしゃ)教会(きょうかい)(まえ)到着(とうちゃく)していた。


(まち)建物(たてもの)のなかで、ここはまだ無傷(むきず)なのね……。(かみ)のご加護(かご)かしら」


 (しん)じてもいないのに、そんな言葉(ことば)が私の(くち)から()れて、(おも)わず苦笑(くしょう)する。ここへ()たのは、(かみ)さまに(たす)けを(もと)めるためではない。(たん)に、(たか)建物(たてもの)を私は(さが)していただけだ。教会(きょうかい)尖塔(せんとう)となっていて、(まち)何処(どこ)からでも()つけられるよう、もっとも(たて)(なが)(つく)られた建物(たてもの)なのだった。


「ねぇ、どうするの? (りゅう)(おう)上空(じょうくう)から(ほのお)()いてくる。まともな(たたか)いにすら、ならないわ」


 勇者(ゆうしゃ)()うとおりだった。前世(ぜんせい)のゲームだと、正規(せいき)のルートでは仲間(なかま)一人(ひとり)が、(りゅう)地上(ちじょう)へと()()せるのだ(そのとき、すでに三人(さんにん)仲間(なかま)(いき)()えている)。戦士(せんし)なら(やり)投擲(とうてき)して、(りゅう)(おう)(つばさ)にダメージを(あた)える。魔法使(まほうつか)いなら攻撃(こうげき)魔法(まほう)僧侶(そうりょ)なら()(くら)ませる(ひかり)魔法(まほう)(りゅう)(おこ)らせて地上(ちじょう)(せん)()()む。


 勇者(ゆうしゃ)場合(ばあい)は、仲間(なかま)()によって覚醒(かくせい)した彼女(かのじょ)が、装備(そうび)している伝説(でんせつ)武具(ぶぐ)魔力(まりょく)()()す。(りゅう)(おう)()べなくなって、最強(さいきょう)となった勇者(ゆうしゃ)討伐(とうばつ)されるのである。いずれにしろ、仲間(なかま)犠牲(ぎせい)がないと地上(ちじょう)(せん)には()()めない。


勇者(ゆうしゃ)、私に補助(ほじょ)魔法(まほう)をかけて。あとは私が、(かた)をつけるから」


「……強化(きょうか)魔法(まほう)のこと? ひ、一人(ひとり)(たたか)うつもり⁉ 無茶(むちゃ)よ、()げましょう!」


 これが私の(えら)ぶルートである。勇者(ゆうしゃ)仲間(なかま)戦闘力(せんとうりょく)をアップさせる魔法(まほう)をかけることができる。そして私は野伏(レンジャー)で、このゲーム世界(せかい)では災害(さいがい)()など、(いま)のような危機(きき)(てき)状況(じょうきょう)戦闘力(せんとうりょく)()()がるのだ。勇者(ゆうしゃ)魔法(まほう)(くわ)えれば、(さら)能力(のうりょく)はプラスされる。


 以前(いぜん)()べたように、このゲーム世界(せかい)には地形(ちけい)効果(こうか)というシステムがあった。()(さか)(まち)があるエリアでは、その上空(じょうくう)(ふく)めて、ほとんどのキャラクターは戦闘力(せんとうりょく)がダウンする。それは()()()()例外(・・)()()()()、──私だけが(いま)状況(じょうきょう)で、戦闘力(せんとうりょく)()がるのだ。


 比喩(ひゆ)でなく、この()では私が世界(せかい)最強(さいきょう)になれるのだった。こういうのを主人公(しゅじんこう)補正(ほせい)というんだろうなぁ。


勇者(ゆうしゃ)()うセリフじゃないわねぇ、『()げましょう』っていうのは。世界(せかい)(すく)うんでしょ」


「なら私も(たたか)わせてよ! どうして一人(ひとり)で、私を()いていこうとするのよぉ……」


「ごめんねぇ、これがベストの方法(ほうほう)なの。貴女(あなた)()(のこ)って、世界(せかい)希望(きぼう)(あた)(つづ)けて」


 (まち)()(はら)っている(りゅう)(おう)が、何度目(なんどめ)かの周回(しゅうかい)上空(じょうくう)から近寄(ちかよ)ってくる。()(うなが)して、私は勇者(ゆうしゃ)魔法(まほう)をかけてもらった。筋力(きんりょく)一時(いちじ)(てき)(きょう)()されたことを実感(じっかん)する。


(はや)く、ここから(はな)れて。大丈夫(だいじょうぶ)だってば。(かなら)ず、私は(かえ)ってくるから」


 勇者(ゆうしゃ)背中(せなか)()すように、私は大嘘(おおうそ)をついた。(なみだ)ぐみながら(はし)()っていく、彼女(かのじょ)姿(すがた)見送(みおく)りながら、ゲーム世界(せかい)のイベント進路(ルート)確定(かくてい)したと(はだ)でわかる。これで仲間(なかま)()ぬことはない。心置(こころお)きなく、私は教会(きょうかい)へと疾走(しっそう)した。


 石造(いしづく)りの、垂直(すいちょく)(かべ)一気(いっき)()()がる。(いきお)いを()めず、尖塔(せんとう)屋根(やね)()って(ちゅう)へと()()し、ざっと(ひゃく)メートルの上空(じょうくう)で私は(りゅう)(おう)背中(せなか)へと()()った。(かん)(ぱつ)()れず、(りゅう)(なが)(くび)(はし)って、(あたま)(ちか)(くび)裏側(うらがわ)()(ざん)(よう)のピッケルを()()む。つるはしのような形状(けいじょう)道具(どうぐ)だ。


 (くび)から()()とされないよう私は左手(ひだりて)でピッケルを(つか)み、右手(みぎて)(おお)きな(やま)(がたな)攻撃(こうげき)(くわ)えた。鼓膜(こまく)(やぶ)れそうな咆哮(ほうこう)をあげて、空中(くうちゅう)(りゅう)(あば)れる。無視(むし)して右手(みぎて)刃物(はもの)で、(かた)(うろこ)()()り、(さら)(にく)まで()()いた。灼熱(しゃくねつ)血液(けつえき)()()して、私の(はだ)()いていく。それも無視(むし)して(ほね)()つまで私は斬撃(ざんげき)(くわ)(つづ)けた。


 もう()()えないが問題(もんだい)ない。()きものの急所(きゅうしょ)感覚(かんかく)でわかっている。()ってる武器(ぶき)はゲーム世界(せかい)最高級(さいこうきゅう)強度(きょうど)だ。(りゅう)と私が(こわ)れるまで、()れることもなく仕事(しごと)()えてくれるだろう。ふと手応(てごた)えが()わって、(りゅう)(くび)(ほね)切断(せつだん)できたとわかった。


 (くび)(なか)ば、ねじ()れた状態(じょうたい)となったことで、左手(ひだりて)(にぎ)っていたピッケルが(にく)から()ける。(ささ)えがなくなって、私は(ちゅう)へと(ほう)()された。(りゅう)と私が墜落(ついらく)していくのは()なくても理解(りかい)できる。(まち)建物(たてもの)石造(いしづく)りで、(みち)石畳(いしだたみ)だ。加速度(かそくど)をつけて()ちれば間違(まちが)いなく(りゅう)絶命(ぜつめい)するだろう。


 これでゲームエンドだ。勇者(ゆうしゃ)は私の()()()えて、世界(せかい)希望(きぼう)(あた)える存在(そんざい)となっていく。(くわ)しくは(おぼ)えてないけど、戦士(せんし)僧侶(そうりょ)魔法使(まほうつか)いは、勇者(ゆうしゃ)補佐(ほさ)して伝説(でんせつ)(てき)なメンバーとして後世(こうせい)まで(かた)()がれるんじゃなかったかな。戦死(せんし)した私は、人々(ひとびと)記憶(きおく)(のこ)らない。モブな私にふさわしい最期(さいご)だ。仲間(なかま)たちにさえ(おぼ)えてもらえれば、名誉(めいよ)なんか私は()らない。


 所詮(しょせん)、私は四股(よんまた)レンジャーである。ゴレンジャーなんかとは大違(おおちが)いだ。()(のこ)ったところで、むしろ仲間(なかま)から(ころ)されるのがオチじゃないだろうか。戦士(せんし)なんか、私の(くび)()ねるとか()ってたし。世界(せかい)仲間(なかま)(すく)程度(ていど)のことをしなければ、(ゆる)してもらえないだろうと私は(おも)った。


 ただただ私は、仲間(なかま)(いと)おしかった。ゲーム世界(せかい)(なか)()れば()るほど、彼女(かのじょ)たちが()ぬことなど、とても()えられなくなった。私には前世(ぜんせい)記憶(きおく)もある。それも()わせれば、十分(じゅうぶん)すぎるほど(たの)しく()きていけたといえる。満足感(まんぞくかん)(つつ)まれて、私の意識(いしき)途切(とぎ)れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ