PLUS EXTRA : あたらしい、朝がくる。2
ちびちびと描いておりますので、更新が遅いです。
それでも楽しんでいただければ嬉しいです。
真っ白な、けれど眩しくはない空間に、ツェイルはぺたりと座っていた。そのことに、不思議と疑問はない。
ここがどこかは、なんとなくわかる。
「……ガルデア」
呼べば、素直に、真っ白な空間を作り出していた張本人、いや、精霊は現われた。
「ガルデア……どうした?」
ツェイルは小首を傾げ、ガルデアを見上げた。
なんの感情も含ませない表情は彼の特徴ではあるが、片割れのヒーデより豊かな感情を彼は持っていて、けれども口が重いゆえ表情は豊かな感情を押し殺してしまう。
ツェイルの問いかけに、ガルデアも同じように小首を傾げた。
「はなしが……したかった」
「はなし?」
珍しい、と思ってしまうのは、ガルデアからあまり話しかけられた記憶がないせいだ。
ガルデアは片割れのヒーデほど会話が得意ではない。だか話したがらないわけでもない。性質的に言葉をそれほど必要としていないだけで、困ったことがあまりないせいだ。必要性を感じなければ話さない、言葉を使わない、といったほうが正しいかもしれない。
「……なにか、大事な話なのか」
そろっと問えば、ガルデアはこくんと頷いた。その仕草は、ツェイルよりはるかに長く生きている精霊なのに、やけに幼い。
「フレンの……こと?」
さらに問えば、またこくんと頷く。そのまますとんと、ガルデアはツェイルの前に足を組んで座った。
「わかって、いると、おもうが……フレンの……」
「……代償?」
最低限のことしか言葉にしないガルデアのことだから、話があるとすればフレンのことだろうと思っていた。
ツェイルの天恵は、フレンに受け継がれている。ツェイルに代償が発生している天恵は当然、フレンにも代償が発生するものだ。だからいずれ、それについてなにかしらあるだろうと予測してはいたのだ。きっとそれはガルデアからだろうとも。
「フレンが喋らないのは……代償?」
こくり、とガルデアは頷く。
顔が伏せられ、視線が俯いた。どこか申し訳なさそうにしながら、けれども後悔はしていない、負い目はあれど覆すつもりはない、そんな雰囲気が読み取れた。
「性質が、おれと似ている……から、それが代償になった……と、おもう」
「ガルデアと?」
「ことばを、あまり必要としない……人間が言うところの、面倒? とは、ちかうが」
面倒がってフレンが話さない、ということはないと、もちろんわかってはいるツェイルではあるが、強くそれを否定できない。フレンは非常にのんびりとしているゆえ、言葉を後回しにしていないとは言い切れないのだ。
「あれは……ガルデアが思っているほど、こう……てきぱきした性格ではないと、わたしは感じている」
「そうかも、しれないが……」
フレンの性格はガルデアも感じとっているらしい。
「フレンから……なにか、聞いているか」
「なに、て……」
聞くもなにも、フレンが声を発することが少な過ぎるということは、わかっているだろう。それでもなお、なにかないのかとガルデアが訊いてくるのは。
もしかしたら。
「……フレン、は……」
ツェイルは、やはりそうなのかと思いながら、唇を歪める。
いま、たぶん、いやきっと、変な顔をしているだろう。
複雑だ、と思う。
こんな気持ちを自分が抱えることになると、昔の自分だったら考えもしなかっただろう。
けれども、今なら。
今なら。
読んでくださりありがとうございます。
そのうちフレンが主役の物語が描きたいなぁ……なんて思います。