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奴隷商人とエルフさま  作者: 遊命月
第3章 誰かの愛と、旅立ちと
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第38話 ラインフォード

「クーちゃんとライラ君どこ行っちゃったの?」

「色々と話作りの参考にしたいのに……けどこれはこれで美味しい展開かも」

「危険を感じたら一目散に砂に潜るその姿は紛れも無く砂漠羊。しかし作戦はもう完遂した筈だが」


 人混みの中をキョロキョロと見回すピーネさん達。

 息を殺してその姿が遠ざかっていくのをじっと待つ。


「あ、ちょっと待ってて二人とも! ゴウゼルさんこんにちは!」

「おうヴァルコのとこの姉ちゃん。今日は使いか? 見てくれこの今朝取れた野菜たち。どれもこれも新鮮でお勧めだぞぉ」

「いえ、今日はお使いじゃなくて。クーちゃんとライラ君を見ませんでした?」

「お、噂の紅坊ちゃんと白嬢ちゃんか? 仲良く住宅街の方に走っていたぜ。へへ、俺も若い時は嫁さんと……」

「ありがとうございます! クーちゃん住宅街の方だって!」

「流石ピー姉! 年上キラー!」

「まだ誰一人落とせていないが」


 出店をしていたゴウゼルさんを見つけ情報を手に入れたピーネさん。

 腕を組んで昔を懐かしむゴウゼルさんにお礼を言って、三人は住宅街へ続く路地へ走っていった。


「もう出てきて大丈夫だぞ坊ちゃん達」

「ありがとうございます」

「何でネーチャン達、追ってきてんだ?」


 ゴウゼルさんの後ろにある空の木箱の中から顔を出した。


「若いねぇ。今日こそ愛の逃避行か?」

「まあ、そんな感じです」

「な、何言ってんだオマエ!?」


 普通に走っても逃げ切れないと思ったので、いつもの出店にいるゴウゼルさんにお願いして少しの間隠れさせてもらった。

 笑いながらからかってくるゴウゼルさん。照れる僕の反応が見たいのだろう。

 逃げている今、時間は惜しいのでそれとなく相槌を打つ。

 隣にいるクニーガが僕の肩を揺らした。


「おかげで助かりました。また今度野菜買いに来ますね。行こうクニーガ」

「なぁどーいう事か説明しろって!」

「青春、いい。俺も嫁さんと出会った時はよく屋敷から無理やり連れ出して……」


 またクニーガの手を取って僕たちは走り出した。

 住宅街へは向かわず、このままファンリネーラのメインストリートを真っ直ぐに。





「なあ! すげーぜこれ!」

「ここじゃ静かにしなきゃ駄目だよクニーガ」


 飾られた絵画に瞳を輝かせるクニーガ。

 僕たちはメインストリートの奥にある美術館へと足を運んでいた。

 意外な事に、入りたいと言い出したのはクニーガだった。

 楽しそうに美術館を回るクニーガも新鮮だ。

 最近僕は、彼女の色々な新しい魅力に気づかされている。


「これもすげーよな。超きれーじゃん」

「グリーブ作、聖女シャリーネの胸像だね。この前僕の部屋に置いていった本が書かれた国、ダスト・ボルディの聖女だった人でグリーブは友の想い人であるこのシャリーネの像を作ったみたいだよ」

「オマエ何でも知ってんのな」

「まあ、教育というか」

「ふーん」


 言葉を濁すとクニーガは察してくれたのかそれ以上聞いてはこなかった。

 会話が終わってしまったので、聖女様の胸像を眺めながら聞いてみる。


「クニーガは芸術好きなの?」

「おう 誰がいつ作ったとか知らねーけど、好きなものを残せるって、かっけーじゃん」

「そうだね」


 クニーガらしい、僕の好きな答えが返ってきた。

 僕みたいな上っ面だけの知識より、純粋な気持ちの方が絶対に大事だ。


「あそこの噴水の前でちょっと休憩しようか」

「もう疲れちまったのか? しゃーねーなー。ちょっとだけな」

「ありがと」


 美術館の敷地内にある大きな噴水の前のベンチに並んで腰掛ける。

 いつもはどうかわからないけど、今日は人が少なく、今は僕とクニーガだけだ。


「ごめんね」

「あん?」

「その、変な事、言っちゃってさ」

「……あぁ」


 落ち着けた事で、ようやく本題に入れた。

 昨日からずっと言いたかった言葉だ。

 理由はどうあれ、昨日クニーガが閉じこもってしまったという罪悪感を持ってしまったから。


「別に、変じゃ、ねーけど」


 途切れ途切れの言葉を繋いでいくクニーガは僕に視線を合わせてくれない。


「なんつーか……今、そうだし」

「そうだね」

「そうだね、じゃねーよ。恥ずかしくねーのかオマエは」

「最初に会った日にオスとかメスとか欲情とか言ってた子に言われたくないよ」

「アレは、ふつーの事だろ」

「じゃあ僕も普通の事だよ」


 同じ奴隷でも、僕と君は違うから。

 だから、思うんだ。


「ラインフォードって知ってる?」

「何だ急に? 当たり前だろ。オレだってそれぐらいの常識は知ってるつーの。貴族御用達の成金奴隷商だろ? 前の飼い主が安いオマエなんかじゃなくて大金でラインフォードから買えば良かったって、何回聞かされたと思ってんだ? オレを買ったの自分のくせに」

「はは、ごめんね」

「何でオマエが謝んだよ」

「僕、そのラインフォード家の人間だから」


 クニーガには全部を聞いてほしい、って。

 顔の横まで右手を小さく上げる。

 手首に巻かれた三つの奴隷の証。

 永遠に刻まれる主の家名。

 その内の一つに、ラインフォードの、奴隷商の家名が刻まれている。

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