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奴隷商人とエルフさま  作者: 遊命月
第2章 幸せな奴隷の1日
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第28話 変わろうとする者

「ら、らららライオックさん! うちのクーちゃんが、お世話になりました!」

「気にすんな。二人がずっと楽しそうにしてたからよ。ヴァルコさんにも、昨日は急にすまなかったと言っておいてくれ」

「は、はいぃ!」


 顔を真っ赤にしたピーネさんが深々とゲルジッドさんに頭を下げた。

 赤い髪と紅い髪の二人、何か忘れている気がする。

 それはそうと僕たちの知らない所で、気を利かせてくれたみたいだ。

 後でお礼を言っておこう。


「あれ!? トリイトちゃんたち!? ファンリネーラに来てたなら言ってよぉ! 何でここにいるの!?」

「ケルネちゃん久しぶり! 今はなんとこの店の臨時看板娘やってるんだ! 今回は長居する予定だから今度遊びに行くよ!」

「うん! 待ってるね!」


 トリイトさんとケルネさんが親しげに笑いあっている。

 知り合いだったんだ。


「スィーネさんもお久しぶりです。お部屋、また汚れてないですか?」

「むぅ……ぼちぼちだ」

「また今度お掃除に行きますね」

「情状酌量の余地でどうか穏便に頼む……」


 ネメシーさんとスィーネさんも親しげに、親しげに?

 この二人は二人で何か上下関係みたいなのがありそうだけ仲良さそうだ。


「なんか、すげー事になってんな」

「皆、顔見知りみたいだね」


 僕が知らなかっただけ、いや僕が周りを気にしなかっただけだろう。

 世界は、世間はわりと、狭い。


「……あの! ライオックさん!!」

「ん?」


 意を決した表情のピーネさん。

 突然の大声に全員からの視線が集まった。


「こ、婚約者がいると聞きました!!」

「あ、あぁ……いるけど」


 ゲルジッドさんの視線が僕を射抜いた。

 お前、何か余計な事言ったな? と、視線が語っている。

 そういえば、ピーネさんって。


「はいどうもこんにちはゲルジッドさん。うちの馬鹿姉が失礼しましたそろそろ帰らせてもらいまーす」


 そんな二人の間に、黄色い影がすっと入り込んだ。


「ケルネ!? ちゃっと離してよ! まだ私は想いを何も」

「スィーちゃんもクーちゃんも帰るよー! じゃあまたねトリイトちゃん!」

「じゃあねケルネちゃん!」


 ピーネさんを羽交い絞めにしたケルネさんがトリイトさんに笑顔を向ける。

 トリイトさんも大きく手を振り返した。


「時間じゃ仕方ないな。ネメシーさん、達者でな」

「お休みの日にすぐ行きますね?」

「うぐっ……クーちゃん、帰ろう。父さんも待っている」

「おう。いいのか? 赤ネーチャン、なんか盛ってっけど」

「あれは」

「ちょっとぉ!? どうして邪魔するのケルネ! これから想いを伝えようとしてるのに!!」

「照れて名前も呼べないくせに考えなしに人様の家庭壊そうとしてんじゃないよ馬鹿姉が! やるならもっと準備して逃げ場を無くしてからやりなさい!!」

「私では救えない」

「青ネーチャンも無理なら、仕方ねーな」


 聞いて良いのか悪いのか、物騒な会話を続けるピーネさんとケルネさん。

 それを見て小さく首を横に振るスィーネさんと、頷くクニーガ。


「じゃーなライラ! 昨日は楽しかった!」

「うん、僕も。またねクニーガ」


 全身を使って大きく手を振るクニーガに僕も小さく手を振り返した。

 ガランガラン、扉が閉まる音とベルの音が重なる。

 騒がしかった店内に、静寂が戻った。


「元気だなヴァルコさんの家の子達は。今日はお礼も兼ねて全員で飯食いに行くか?」

「今日は止めた方がいいと思います」

「女心を何も分かっていないよね」

「さっきまで何を見ていたんですか」

「お前等!? ライラまで何なんだよ!?」


 こっちはこっちで新しい火種を生もうとしていたのでそれを阻止する。

 そろそろ開店時間が近づいてくる。


「……さあ皆さん! 今日も頑張りましょう!!」

「ライラ?」

「ライラ君?」

「ライラさん?」


 両手を叩き、急に声を上げた僕に三人が首を傾げた。

 少し、いや、かなり緊張するけれど、僕にも三人がいればきっと大丈夫だ。

 帰っていくクニーガ達を見て、昨日の夜の話で、そう思えた。

 僕に足りない、最後の気合を入れる為に、右手に巻いているどうぐ屋ライオック指定の紅いバンダナを、力強く頭に巻いた。


「ら、ライラ君それ!?」

「だ、大丈夫なんですか!?」

「ええ、まあ、多分!」


 トリイトさんとネメシーさんの視線が僕の右手に向く。

 それはそうだ、今までずっと、初対面の時以外は隠していたのだから。

 事情を知っているからこそ、心配してくれているのだろう。

 だから、多分、大丈夫。


「お前、昨日あの子と何があったんだ? んー?」

「色々です!」


 茶化すのが目的で深くは聞いてこないゲルジッドさん。

 それが分かっているから僕もてきとうに誤魔化した。


「そうだ聞き忘れてた! ライラ君、クニーガちゃんとどういう関係なの!?」

「友達です! 奴隷の!」

「彼女もですか!? ローブで隠れていて気づきませんでした」

「僕より図太いんで気にしないで大丈夫です!!」


 僕より強くて、僕とは違った考えの奴隷の子。

 そんな彼女から少しだけ、勇気を貰えたんだ。


「ほらお前等! 準備始めんぞ!」


 強くなろう。


「ライラ君が仕切ってたのになんで店長が言うかなぁ!」


 少しずつ。


「空気を読んでください!」


 皆と一緒に。


「負けないよ、クニーガ」


 扉の向こうの、友達に向けて。


「店長! ライラ君がクニーガちゃんに夢中で構ってくれなさそう!」

「店長! 親離れにはまだ早いと思います!」

「人に散々言っておいて都合の良い時だけ店長呼びすんな!」

「ほら。本当に急がないとお客さま来ちゃいますよ」


 人間、魔人、亜人、魔族、それから奴隷も集う国、ファンリネーラ。

 そのメインストリートに位置するどうぐ屋、ライオック。

 冒険者で連日賑わうそのお店で、慌ただしく準備する四人の影。

 走り回る中、右手に巻かれた奴隷の証、三つの腕輪が擦れ、キィンと小さく音を立てた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。これにて第2章、終了になります。

あらすじに冒険譚と書いていますが、旅立ちまではもう少しだけ続きます。

1章で奴隷の名がほぼ出ず、2章でまだ旅立たない。

第3章ではあのエルフが色々とやらかしに戻ってきます。

どうか後少し、ライラの成長を見届けていただけたら幸いです。


余談にはなりますが、ブックマークや評価をいただけると泣いて喜びます。

応援の程よろしくお願いします。

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