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奴隷商人とエルフさま  作者: 遊命月
第2章 幸せな奴隷の1日
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第27話 ぴょんこぴょんこ

 朝日が少しずつ部屋に差しこんでくる。

 暖かく、ちょっとだけ蒸し暑い光から逃げる為、冷たい床に顔を擦る。

 まどろみの中、心地良い早朝の静けさが。


「んぎゃああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!??」

「なっ、なにっ!?」


 叫び声で一気にぶち壊された。


「あれ? 僕、確か……」


 起き上がる僕の足元に、空になった大きな土色のお鍋が転がっている。

 クニーガが僕の部屋に来て、色々な事を話したのは覚えている。

 ……あの後、クニーガ帰ったっけ?


「時間は、うん」


 部屋の壁の魔石時計を確認。

 開店時間までまだ時間はある。

 寝過ごさなくてよかった。


「んだテメー! 急に抱きつくんじゃねーよ!!」


 窓を開け、朝の透明な空気を取り込む。

 気持ちいい。


「離せコラッ! ああ!? 力つえーなんだコイツ!?」


 部屋の扉を開けて外へ、廊下を歩き直線の階段を降りていく。

 いつも皆で食事をしているリビング、桶で貯水をすくって顔を洗う。


「引っ付くな! あちーんだよ! はーなーれーろー!!」

「……さて」


 眠気が覚めたことだし、そろそろこの現実と向き合おうと思う。

 リビングから通路を抜け、店頭へ。

 開店前、準備にもまだ早い時間なのに既に見知った顔が三つあった。


「おはようございます。トリイトさん、ネメシーさん。今日は早いですね」

「おはようございます。ライラさん。ライラさんのお出かけの為に、今日は頑張りますよ!」


 昨日の食事風景が嘘のように元気になっているドワーフのネメシーさん。

 いつもは鎧の上から身につけているライオック指定の紅いエプロンも、昨日の今日でボロボロの為、動きやすい布製の衣服とのセットだ。

 重厚な全身鎧姿を見ることが多いので、この姿は少し新鮮だった。


「おはようライラ君! ねえねえねえねえねえねえねえねえねえ! この可愛い子誰!?」

「離せっつってんだろーが!」

「キャー! 暴れてる! 可愛いー!」

「ライラ! おい助けてくれ! このネーチャン、やベーよ!!」


 獣人のトリイトさんが獣人のクニーガに抱きついていた。

 胸の中でもがくクニーガだけど、賞金稼ぎのトリイトさんの力には敵わないみたいだ。


「えー!? ライラ君の知り合いなの!? ねえ、種族はなあに?」

「ガキ扱いすんじゃねー! トラだよ舐めんな!!」

「私、白いトラの子初めて! 私はオオカミのトリイト! よろしくね!」

「よろしくしねーよ!!」


 同じ獣人だからか、それとも同じ女の子だからだろうか、僕の時より激しいスキンシップを続けるトリイトさん。

 本気で嫌がっては、多分いないと思うけどそろそろ助けてあげようと思う。


「あのトリイトさん。お店の準備もありますし、そろそろクニーガを離してあげ」

「クニーガって名前なの!? よろしくねー! クニーガちゃん!」


 逆効果だった。


「はぁ……セイッ!」

「いっだぁぁっ!?」


 僕の横から溜め息をついたネメシーさんがぐんずほぐれつの二人に歩み寄る。

 手に持ったほうきを反転させて、柄の先端で思いっきりトリイトさんの足を押しつぶした。

 ……うわぁ。


「何すんのネメシー!?」

「ライラさんの為に早起きして頑張るって昨日約束したじゃないですか! このクニーガちゃんって子が可愛いのは同意しますけどまず仕事をする手を動かしなさい!!」

「……なあ、このネーチャン達やべーよ! 何だコイツ等!」

「トリイトさんとネメシーさん。昨日言わなかったっけ?」


 なんとか逃げ出す事に成功したクニーガが、身を小さくして僕の背中に隠れる。

 やっぱりクニーガでも怖いんだ。


「今、何だコイツって言った!?」

「お!? おう……」


 トリイトさんの獣の耳がピクッと動き、目を光らせた。

 あのクニーガが圧倒されている。

 

「そう! どうぐ屋ライオックの美人看板娘コンビは仮の姿!」

「え?」


 トリイトさんに続くネメシーさん。

 何が、そう! なの?

 美人看板娘コンビって何?

 知らないよ僕そんなの。


「誰かが助けを求めるのなら!」


 雇われているだけですよね?


「どうぐ屋の雑用なんのその!」


 それも立派な仕事ですよ?


「そう! 私達は困っている誰かを助ける救世主!」


 そう! 二回目ですけど。


「その名は各地に轟き正義は味方し悪は怯える!」


 あ、ここから聞いたことある。


「獣人のトリイト!」

「ドワーフのネメシー!」

「二人合わせて!」

「超一流賞金稼ぎ! トリイト&ネメシー!!」


 お客さまのいない静かなどうぐ屋で、二人の名乗りが響き渡る。

 ちょっと内容違うけど、昨日も見たなこれ。


「……か、かっけー!」

「え!?」


 僕の背中に隠れていたクニーガが呟いた。

 え、君もそっち側なの?


「超かっけー! 賞金稼ぎ!? すげーな! そりゃつえーわ!!」


 ぴょんこ、ぴょんこ。

 瞳を輝かせたクニーガが二人に駆け寄り興奮を抑えきれず、その場で跳びはねている。


「ハッハッハ! それほどでも、あるよ!」

「何度も危険な目にあっていますから!」


 ネメシーさん、トリイトさんの事を止めに行ってくれたんじゃなかったっけ?

 完全に二人で楽しんでる。


「ふわぁー、眠いなぁ。誰か助けてくれないかなぁ」

「げっ!?」

「うっ!?」

「あ、ゲルジッドさん! おはようございます」

「おう。おはようさん」


 珍しくゲルジッドさんが朝の店頭に現れた。

 朝の準備から開店までは僕に任せてくれているので、この時間に出てくるのは珍しい。

 わざとらしく困った振りをして、誰もいない方に向かって呟いた。


「誰か手伝ってくれないかなぁ。朝の準備せず暇で仕入れを行ってくれる奴がいいなぁ」

「さーて! 品出し始めちゃおっと!!」

「ピカピカにお掃除しちゃいますよ!!」

「……オマエの飼い主、すげーな! 二人よりつえーんじゃね!?」

「あぁ、うん。色々と、多分。あと、飼い主じゃないよ」


 確実に上下関係みたいな何かが存在している事が分かった。

 やっぱり、昨日の仕入れで何かあったのだろう、絶対に。


「そろそろだな」

「はい?」


 壁に掛かった魔石時計を見上げて、ゲルジッドさんが呟いた。

 それと同時に、来客を知らせるベルが鳴り両開きの扉がゆっくりと開いた。


「ご、ごめんくださーい」

「クーちゃんいますかぁ?」

「馳せ参じた」

「んあ? ネーチャン達?」


 赤、黄、青。それぞれの髪色をしたピーネさん、ケルネさん、スィーネさんが現れた。

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