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奴隷商人とエルフさま  作者: 遊命月
第2章 幸せな奴隷の1日
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第23話 帰宅

 飲食店ムートを無事に後にした僕は、無事に、無事だろうか?

 悪い事ではなかった、と思う。

 ポカポカする胸の内とは別に、今頃ヴァルコさんに怒られているであろうピーネさんとクニーガの姿が思い浮かんで苦笑い。

 仕入れの為、休業。そう簡潔に書かれた両開きの扉に吊るされている看板を横目にしながら慣れ親しんだどうぐ屋ライオックの中に入っていく。

 仕入れ日の告知はしているのだけど、急を要する冒険者のお客さまがいるかもしれない。

 だけどゲルジッドさんと僕だけでやっているこのお店ではどうしても限界がある。

 今はファンリネーラにいる時だけトリイトさんとネメシーさんが手伝ってくれているけど、それもずっとではない。


 お客さまの為に、なるべく休まず頑張りたいですとお願いした時もあった。

 そんな心配しなくて良いと笑われた。何で俺がここにどうぐ屋を建てたと思ってんだ、とも。

 人間、亜人、魔人、魔族、様々な種族が隔てなく集う、城郭都市ファンリネーラ。

 その城下町のメインストリートに位置する、どうぐ屋ライオック。

 営業時間は朝一からだいたいお昼過ぎぐらいまで。

 客層は、その日に冒険にでる冒険者たち。

 アールヴさんみたいなのは昔馴染みの縁で、例外中の例外だそうだ。

 この都市に他にもどうぐ屋なんて山ほどあるぞ? 今度行ってみろよ。なんて昔に言われたっけ。

 棲み分けと戦略が重要らしい。

 特別な理由がなければあまり外に出たくなかったけど、クニーガにも言われちゃったし、今度他のお店を見にいこう。

 お客さまが誰もいない店内、少なくなった商品を奥の倉庫から運んだり、売れた商品の記録を取ったりしていると時間が過ぎるのはあっという間だった。


「おーう。帰ったぞ」


 と、日が暮れてから帰ってきたゲルジッドさん。

 相変わらず、紺色の着物は土や泥で汚れてボロボロだ。

 本当に、仕入れ作業は何をしているのだろう?

 気になるけど、三年いるのに未だに教えてくれない。


「…………」

「…………」


 そんなゲルジッドさんの後ろに、もっと酷い状態の二人がいた。

 トリイトさんもネメシーさんも、ゲッソリしているというか表情に生気が無い。

 トリイトさんが身に纏う全身レザー製の衣服はゲルジッドさんの着物以上に擦り切れている。

 ネメシーさんの重厚なフルプレートの鎧も新しい傷がいたるところに出来ている上に、明らかに全身泥に落ちた後のような汚れが目立っていた。


「だ、大丈夫ですか!?」

「……お風呂借りまーす」

「……私もー」


 駆け寄る僕の横をふらふらと通りすぎて二人は店の奥に消えていった。

 すぐさま僕は横にいるゲルジッドさんに視線を向ける。


「な、何をしたんですか!?」

「仕入れ」


 いつも通りの返事が返ってきた。

 仕入れってそんなに過酷なの?


「腹減ったろ? あいつ等が休んでる内に飯買ってくるわ。昼は何食った?」

「向かいのムートで。あっ! 飛竜のスープをご馳走になりました!」


 ドガッ! ガラガラッ! ゴシャンッ!!

 店の奥から何かが崩れ落ちるけたたましい音が聞こえてきた。


「え!? 何!?」

「……そっか、飛竜か。良いもん、食ったな……お前……」

「そんな事より奥から凄い音したんですけど!?」

「……疲れてんだろ、あいつ等も。初めての……仕入れで。気になるなら、見にいっても良いが、お前に人の裸を覗く度胸があるなら、許可してやる」

「うっ……」


 想像してしまう二人の姿。

 獣人のトリイトさんはスタイル抜群、友好的な性格とは別に大人の魅力がある。

 ドワーフのネメシーさんは僕よりも小柄で、それこそ子供のような身体だけど力は強い上にそれを感じさせないほどの包容力がある。

 そんな二人のあられもない姿を想像してしまい、すぐに首を横に振って意識からかき消した。

 悟られないように視線を上にしてゲルジッドさんを見上げると、何か笑いを堪えているようでプルプル震えていた。

 喋ってる時から変だったけど、何なのだろう。


「じゃ、ムート以外で何か買ってくる。屋台でも良いか?」

「あ、はい。ありがとうございます」

「ライラ君や」

「はい?」

「何があったか、疲れてる女性に深く聞かずにそっと風呂上りに冷えた水を用意してやって優しく寄り添うのが、モテる男の秘訣だぜ?」

「は、はは……」


 妙に具体的なアドバイスをしてもらった。

 遠まわしに聞くなよと釘を刺しているのかもしれない。

 僕だって、奴隷の事とか、今日の事があるから深く聞こうとはしない。

 クニーガみたいに、強ければそれもできるのだろうけど、僕は弱い。

 ゲルジッドさんの言うとおりにお水をグラスに注ぎ、冷却用の魔石箱の中の氷を入れた。

 それとは別に冷えた濡れタオルを机に置いて待つ。

 

 しばらく待って、少しだけ元気になったトリイトさんとネメシーさんが薄着で戻ってきてドキッとした。

 冷えた水と濡れタオルを渡して対面に座ってもらう。

 誰も何も言わずに一息ついた時、見計らったかのように夕食を買ってきたゲルジッドさんが帰ってきた。

 何があったか、やっぱり気になるけどまずは皆でご飯だ。

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