第4回 美しい人を見かける話
【原文】
※今様に詠みたるをひとつ
幾年か ごとに魅かるる 街角の
同じ顔した 別人のきみ
【現代語訳】
何年かに一度、街角でふと、
「あ!あの人素敵だな」
と思う人を見かけることがある。
前に見かけた人とあまりにも似ているので、
「同じ人と何度もすれ違うなんて、運命に違いない。声をかけてみようか?」
と妄想したりする。
しかしきっと、あれはそれぞれ別の人なのだ。
自分の顔の好みに合致する人に反応しているに過ぎない。
何年経っても、自分の好みというのは、なかなか変わらないものであることだなあ。
【解説】
これは「※今様に詠みたるをひとつ」という注釈も込みで発見されたものだ。
「いま風の短歌をひとつ試しに作ってみました」という意味である。
いま風といっても、現代風とはいいがたい文体である。おそらく近代の作であろう。
わざわざこう書くということは、普段はこういった気軽な歌を作らない詠み手なのかもしれない。
詠み手は何度も何度も街角で同じような顔形の相手を見かけては、そのたびに「同じ人だろうか?」とこっそり観察を繰り返していたようだ。
その行為自体は偏執的ではあるが、頭の中では意外と冷静に、「そう同じ人と何度も出会うわけがない。似た顔の別人なだけだ」と分析も行なっている。
そこに少しの落胆を感じてしまうのは深読みのしすぎだろうか。
この詠み手はもしかしたら、街行く人々の中に、忘れられない誰かの面影を探しているのかもしれない。
それゆえに、いつまでも「きみ」を忘れられないままの自分を嘲笑いながらも、今日も何事もないふりをして街を歩いているのではないだろうか。
James Blunt のYou're Beautiful の世界を思わせる一首。




