第46話:勝の無双と、背中の温もり
【一】勝小吉とお初の無双
廃寺の静寂を破り、勝小吉の圧倒的な威圧感が刺客たちを呑み込んだ。
「てめえら……手弱女一人に寄ってたかって汚ねえ真似しやがって! この勝小吉の峰打ちで、骨ごと叩き折ってやるぜッ!」
勝は柄頭を握り直し、打刀を一閃させた。
ドズンッ! という凄まじい衝撃音が響き、最前列の刺客が鼻骨を砕かれて吹っ飛んだ。勝の刀は一切刃を返さぬ峰打ちでありながら、丸太で殴りつけられたかのような威力を叩き出す。
「ひいッ……!? こいつ、化け物か!」
「動くなッ! 相手は私だ!」
怯む刺客たちの隙を突き、お初が風のごとく影を駆け抜けた。両手に握った鉄扇で刺客の顎と喉元を的確に突き穿ち、真田の忍び特有の体術で次々と男たちを床へ崩れ落ちていく。
「宗吉殿! 今です、お千鶴殿を!」
「おうッ!」
二人が完璧に刺客の壁を食い止めている隙に、宗吉は千鶴の元へ一気に駆け寄った。
【二】解かれた縄と、誓い
「千鶴! 無事かッ!?」
「宗吉……! 宗吉ぃっ……!」
恐怖に耐えていた千鶴の目から、一気に涙があふれ出した。宗吉は懐から脇差を取り出すと、千鶴の手足を縛り上げていた太い縄を素早く切り払った。
自由になった千鶴の身体ががくりと倒れ込み、宗吉はその華奢な肩を強く抱きしめた。
「怖かったろ……間に合ってよかった。本当に……よかった……!」
「私……みんなの足を引っ張りたくなくて……でも、すごく怖くて……!」
千鶴は宗吉の胸に顔をうずめ、声を出して泣きじゃくった。宗吉は千鶴の頭を優しく撫でながら、力強く頷いた。
「もう大丈夫だ。俺が絶対に千鶴を守る。二度とこんな目に遭わせねえ!」
「宗吉殿、後ろの追手が来ます! お千鶴殿を背負って外へ!」
お初が突きを放ちながら叫んだ。宗吉はすぐさま千鶴の前に背中を向け、低く屈んだ。
「千鶴、俺の背中にしがみつけ! おんぶしてここを脱出するぞ!」
「ええ……! お願い、宗吉!」
千鶴は宗吉の首にしっかりと腕を回し、その背中にしがみついた。
【三】背中の温もりと、脱出
宗吉は千鶴を背中にしっかりとおんぶすると、立ち上がって廃寺の裏口へと走り出した。
背中越しに伝わる千鶴の体温と、少し震える吐息。宗吉の脚には、自分自身の体重だけでなく、かけがえのない大切な存在の命が重く乗っていた。
(軽い……こんなに細い身体で、俺たち飛脚の命と身体をずっと支えてくれていたんだ……!)
宗吉は歯を食いしばり、新型厚底草鞋で山道の土を強く蹴り上げた。
「ハハハ! 宗吉、千鶴ちゃんを連れて先に行ってろ! こいつらは俺とお初ちゃんで綺麗さっぱり片付けてから追いつくぜ!」
勝小吉の豪快な大笑いと刀の打撃音が背後で遠ざかっていく。
山道の夕映えの中、宗吉は千鶴を背負ったまま、全速力で安全な街道を目指して駆け抜けた。
「宗吉……ありがとう……私を助けに来てくれて……」
耳元で囁く千鶴の声に、宗吉は前を見つめたまま力強く答えた。
「当たり前だろ! 千鶴がいなきゃ、俺たちのタスキは完成しねえ。長州まで、ずっと側にいろ!」
「ええ……ずっと、側にいるわ!」
なんとか街道に留めていた馬に乗り込み、追っ手から逃れることができた。千鶴は馬から振り落とされぬよう、ぎゅっと宗吉の背中にしがみつく。二人の絆は誰にも引き裂けない確固たるものへと結ばれたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
勝小吉とお初の圧倒的な殺陣! そして宗吉が千鶴を背中に背負い、無事にアジトからの脱出を果たしました!
危機を乗り越え、二人の絆はより一層深く結ばれました。
次回第47話、山から戻った勝とお初と合流し、舞台はいよいよ広島・岩国路へ! 最終決戦に向けた前夜の決意!
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