↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛脚転生 〜箱根駅伝の5区(山登り)の神、江戸の街道を現代走法で無双する〜  作者: 霧島 陣九郎
第二章 京の陰謀編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/50

第20話:影を穿つ脚、深山の疾風

碓氷峠の頂を抜け、黄昏時の濃霧が立ちこめる信州路へ――。

六区の走者として躍り出たお初は、弾丸のような疾走を続けていた。

胸元には、破れた着物の衿を隠すように結び直された浅葱色のたすき。

二の腕には千鶴が与えてくれた生薬の貼り薬が、じんじんと心地よい涼感を届けている。

(……宗吉さん)

脳裏に焼きついて離れないのは、血を流しながらも自分を庇い、「俺のことは気にせず行け!」と背中を押してくれたあの男の温もりだ。

(私のような裏切り者に、なんでそこまで真っ直ぐになれるのよ……。だからこそ――この走りだけは絶対に偽りにしない!)

前方を走る大手の飛脚問屋・嶋屋は、山登りのロスタイムを埋めるべく遥か先を行く。本道をそのまま走っていては到底追いつけない。

だが、お初は信州の深山を自らの領分とする忍びの身。

(……崖沿いの急勾配な獣道を使えば、軽井沢宿の手前で背中を捉えられる!)

お初は迷わず、並の人間では踏み込めぬ険しい抜け道へと身を躍らせた。

重力を味方に置き、骨盤の引き上げで着地衝撃を逃しながら駆け下りる。現代走法と真田流の身軽さが融合した足さばきは、凄まじい勢いで嶋屋との距離を縮めていく。

――だが、九十九折りを見下ろす崖の岩陰に差し掛かったその時!

ヒュンッ!

頭上から幾筋もの黒い影が舞い降り、路面へ大量の撒き菱が乱れ打たれた。

「……そこまでだ、八坂屋の小娘」

立ちふさがったのは、幕府の隠密・榊が放った刺客たち。嶋屋と裏で通じ、八坂屋を物理的に葬り去ろうとする冷酷な残党だ。

「嶋屋へ追いつかせはせん。ここでそのたすきごと首を落としてくれる!」

退路を断つように一斉に抜かれる白刃。絶体絶命の包囲網。だが、お初の瞳に迷いはなかった。

「ふふっ、甘く見ないで……お蘭さんの知恵を喰らいなさいッ!」

お初は胸元から竹筒を取り出し、火打ち石の火花を散らして敵陣の中心へ投げつけた!

ポンッ! と乾いた炸裂音とともに、視界を奪う強烈な閃光と濃厚な黒煙が広がった。

平賀源内の血を引く天才・お蘭特製の『からくり閃光煙幕弾』だ。

「ぐわっ!? 目が……! 前が見えん!」

「なんだこの煙は……ゴホッ!」

刺客たちが悶絶し、完全に動きを止める。

(今よ……ッ!)

お初はお蘭のからくり道具の威力を確信し、煙の隙間を縫って崖下へ躍り出た。このまま駆け抜ければ、追っては振り切れるはずだった。

――だが、安堵したその一瞬の隙を、刺客の頭領は見逃さなかった!

「……甘いわ、八坂屋の鼠がァッ!」

杉木立の暗がりに潜んでいた刺客が煙幕を迂回し、背後から殺意に満ちた小太刀を振り下ろしてきた!

「なっ……!?」

咄嗟にお初は腰の小刀を抜き、頭上からの白刃をギリギリで受け止めた!

キーーーンッ!

甲高い金属音が夜の山林に響き渡る。

だが――衝撃がお初の身体を貫いた瞬間、激痛が走った。

「くっ……あぁぁっ!?」

前の峠で負った腕の傷。千鶴の貼り薬で痛みを抑えていたものの、極限の爆走と敵の重い一撃により傷口が割れ、二の腕から一瞬で筋力が抜け落ちた!

指先が激しく痺れ、手から小刀が滑り落ちる。

ポロッ……チャリンッ!

小刀は無情にも崖下へと転がり落ちていった。丸腰となったお初は衝撃に耐えきれず、山道の土へ力なく膝をついてしまう。

「はははっ! 武器を失い膝をついたか! これで終わりだ!」

刺客は凶悪な笑みを浮かべ、小刀を肉薄させるように高く掲げ直す。

行き止まりの山道。武器はなく、負傷した身体では躍進して避けることもできない。絶体絶命の窮地へ、殺意の刃が一直線に振り下ろされる――!

(宗吉さん……! たすきが……!!)

お初が絶望に目を瞠った瞬間、冷たい刃のきらめきが視界を白く染め上げた――。

最後までお読みいただきありがとうございます。

お蘭のからくり煙幕で難を逃れたのも束の間、潜んでいた残党の奇襲により小刀を失い、絶体絶命の危機に瀕するお初!

八坂屋のたすきを背負う彼女に、逃げ道はあるのか――!?


「続きが気になる!」「お初ガンバレ!」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク登録】や【★★★★★評価】をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。