表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛脚転生 〜箱根駅伝の5区(山登り)の神、江戸の街道を現代走法で無双する〜  作者: 霧島 陣九郎
第一章 箱根激走編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/16

第2話:【1st Lap】見知らぬ天井、見知らぬ草鞋

「おい!……きち。……そうきち、起きねえか!」

 耳元で、やけに大きな声が響いた。

 頭が割れるように痛い。

(ここは……病院か……? 助かったのか……?)

 ゆっくりと目を開ける。

 だが、視界に飛び込んできたのは、病院の白い天井ではなかった。

 煤けた太い木の見せる梁。そして、茅葺き屋根の裏側。

「あ、目を開けた! お父う、宗吉が気がついたよ!」

 傍らからのぞき込んできたのは、妙に素朴な着物を着た、髪をきゅっと結い上げた十代半ばほどの少女だった。

 

「おいおい、災難だったな八坂屋の。箱根の山道で馬に撥ねられて倒れてるって聞いた時は、どうなることかと思ったぞ」

 奥から出てきた髭面の男も、これまた時代劇でしか見ないような町人のような姿。

 混乱する頭で、俺は自分の手を視界に入れた。

 細い。だが、指先には見覚えのあるタコがある。自分の顔に触れてみる。骨格は自分のままだ。

 しかし、着ているものは木綿の薄い着物――違和感しかないはずが、なぜか身体に馴染んでいるのが不思議だ。

「ここは……どこ、ですか?」

「何言ってんだい。箱根の峠の茶屋『高嶋屋』だよ。あんた、江戸の町飛脚問屋の『八坂屋』の見習いだろう? 江戸から荷物を預かってここまで走ってきたのに、霧の中でお武家様の馬に撥ねられたんだよ」

 茶屋の娘だという『楓』の話を整理すると、恐ろしい結論に達した。

 場所は、箱根。

 時代は、江戸。

 俺の今の身分は、江戸の町飛脚の見習い『宗吉』。

(嘘だろ……これが転生、ってやつか?)

 呆然としながら、俺は寝かされていた布団から起き上がり、自分の足を見た。

 筋肉のつき方は、現代の俺の肉体よりも少し細い。だが、不思議と心肺機能の奥底に、あの「山の神」と呼ばれた俺のポテンシャルが眠っているような感覚があった。

「荷物……」

 俺はかすれた声で呟いた。

「荷物なら無事だよ。ただ、あんたが持ってきた『江戸からの荷物』は無事だけど、これから『江戸へ持ち帰る手紙』はどうするんだい? 締め切りは明日の昼だって聞いたよ」

 楓が指差したのは、細長い箱(文箱)だった。

 中には、小田原の商家から江戸の日本橋へ宛てた、急ぎの重要書類が入っているらしい。

 本来なら、八坂屋の別の飛脚が持っていく予定だったが、手違いでこの見習い(俺)が運ぶことになっていたという。

「……ここから江戸まで、どれくらいありますか?」

「何言ってんだい、二十五里はあるよ! 普通の飛脚なら昼夜兼行で走って一昼夜、見習いのあんたじゃ二日はかかるよ。もう明日の昼には間に合わない。八坂屋の旦那に大目玉だねぇ」

 髭面の親父が気の毒そうに肩をすくめる。

 二十五里?確か、歴史の授業で、一里は約4キロと聞いた記憶がある。百キロということか。

 ウルトラマラソンの距離だ。

 

 現代のトップランナーなら、百キロをだいたい6時間台で走る。

 今の時刻は、外の明るさからして、おそらく午前六時。明日の正午までなら、猶予は三十時間もある。

(間に合わない……? 誰が?)

 俺の胸の奥で、カチリ、とスイッチが入る音がした。

 一度は死んだと思った命だ。だが、この足はまだ動く。

 しかも、ここは俺が死ぬほど愛し、死ぬほど走り込んだ「箱根」だ。

「その手紙……俺が持っていきます」

 俺は立ち上がり、足元に転がっていた藁で編まれた頼りない履物――『草鞋わらじ』を手に取った。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「面白い!」「宗吉、がんばれ!」「続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部の【ブックマーク登録】と【★★★★★(5つ星評価)】で応援していただくと大変励みになります!

皆様からの温かい星やブックマークが執筆の大きな原動力になります!

引き続き『飛脚転生』をどうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ