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美術館と清掃員-2-


歌の家に行く前に、蓮は猫のこすずにうながされて、路地裏の、とても小さな公園に入った。


少しだけ雪が降り積もった地面は、歩くと、シャリシャリ音がした。


かなり真剣な顔をする、毛色の変わった猫に、付きう歌も、興味津々だ。


「おおっ! 図書館に住み着いた、金目の猫ちゃんじゃん!! へぇ。誰にもなつかなかったのに、蓮の事は、好きなんだね」


じろじろと歌に見られて、こすずのしっぼは、かなり不機嫌に、揺れている。


「私に、新しい名前を……」


「?」


首をかしげる蓮。

そう言えば、歌の『本当の姿』は、女神につかえた、神獣しんじゅうだ。


どんな訳か、何にしろ、人として『病死』した、春川 こすずの体は、現在、魔族に奪われ、そして、こすずの魂は、瑠璃色の不思議な猫に、定着している。


こすずいわく、かなり前に、猫を助けた事があるらしい。


ちなみに、猫の魂や『記憶』は、こすずの中に溶けて、共存しているらしい。


そんなこんなで、生前の『姿』にもなれる、妖魔、改め、神獣のこすずは、蓮に、名を求めている。


「そうだね。……貴方も私の新しい家族だから、うーん、春日美鈴はるひみすずは、どうかな?」


晴れ渡る冬空の、多い茂る木々が、ざわめくと、猫のこすず、あらためて、美鈴が、キラキラ瞳を、輝かせた。


「嬉しい! ありがとう、蓮様」


ぽんっと、人型になった美鈴が、成人の姿に、『変化』していた。


平日。しかも、午後一時を過ぎたばかり、さいわいにも、周囲に、人は居ない。


「??」


小さく斜めに、頭をかたむけた蓮が、淡い茶色の着物姿に、豊満な体をした美鈴に、固まってしまった。


確か、こすずは、15-16歳頃の、まだ、幼い体付きの小さな少女だったはず。


それが、一気に、『成人』してしまった!


おそらくは、神獣として、蓮と、契約を結んだ影響も、多分たぶんにあるのだろう。


にしたって……。


蓮が、わびしい己の、ささやかな胸元と、貧弱な体に、心底、ため息を付いた。


大体が、元は死者なのに、大人になるとか、反則では? 


疑問がる蓮の肩を、歌が、軽く揺らした。


「ヤバいな。こんな蠱惑的こわくてきな女性は、世の男性にとって、目の毒だ。よって美鈴は、なるべく、猫の姿のままで居て貰おう」


歌には、美鈴の事は、妖魔だから、人に化けると伝えてはいたが、適応能力が、凄まじかった。


「そ、そうね。う、うん。以降、美鈴は、人前でその姿になるのは、禁止って事で、良いかな?」


蓮に注文されると、やや不服そうな美鈴が、唇をちょっとだけとがらせて、それから、仕方なさそうに、猫に戻った。


「落ち込まなくても、大丈夫だよ、蓮。あたし達は、まだまだ、成長期。伸びしろもあるさ」


蓮と同じく、15-16歳の歌が、片方の目を、ぱちんと閉じた。


言いつつも、歌はしっかりと、肉付きが良く、付くところには、付いている。

良く運動するのか、細身の筋肉質で、おまけに、歌は、からっとした性格だ。


おおらかで伸びやかな歌に、蓮は、あこがれすら、抱きそうになった。

おもに、胸囲方面で。


「しっかし、路地裏の公園とか、まじで、懐かしいな」


感慨深かんがいぶかそうな歌。

しかし、その山葵わさび色の目は、鋭く、敵意を持っている。


大きく木々の枝が揺れると、歌が、ふところに隠していた武器を、取り出した。


そこからは、一瞬の出来事で。


目で追うのもやっと。


俊敏な速さで、木から木へ飛び移る歌は、長く伸びた棒で、灰色狼を、蹴散らした。


ばっと、草場の影から飛び出した、他の『仲間』も、瞬く間、脳天を、かち割っている。


韋駄天いだてん


あまりにも、軽やかで、到底、人の『速さ』を超えている。

 

「途中から、ついてきてたのよね。ふむ。誰かが放った痕跡は無いけど、ちと、におうわね」


数十匹の灰色狼は、音も無く、死骸しがいが消え去っている。

 

「あわよくば、あたしか、蓮辺りを、誘拐しようとしたみたいだけど、あきらかな、実力不足ね。勤務外のあたしに、喧嘩売るなんて、馬鹿の極み、だわ」


べーっと、可愛らしく、ピンク色の舌を出したあと、あらためて歌が、びっくりして動けない蓮の、肩を叩いた。


「大丈夫。もう危険は無いわ。あたしと美鈴が居れば、取り敢えず、蓮は安心よ。必ず守ってあげるわ」


びびってばかり、ずいてばかりの蓮が、震える足を、片方叩くと、


「守られてばかりで、ごめんなさい……。私も、私だって、これから、強くなるから! 絶対、足手まといにだけは、なりたくないの」

 

精一杯せいいっぱいの決意表明。


そんな様子の蓮に、歌は素直に、い子だなと、ほっこりした。


怖くても逃げ出さず、弱いなら弱いなりに、強くなろうと、あり続ける。

諦めないタフさは、必要だ。


蓮はまだ弱いなりに、経験を積んで、強くあろうと、成長しようと、もがきにもがいている。


蓮は、守られてばかりは、嫌なのだ。


「途中で、スーパーに寄って、それから、あたしの家に行こうか。蓮には良かったら、あたしなりの『護衛術』を、伝授でんじゅしてあげる。……て言っても、父さんに比べたら、全然、弱いんだけどね。それでも良ければ」


「う、うん! ありがとう、歌。宜しくお願いします!!」


歌のありがたい申し出を、蓮は、こころよく受け入れて、深々と、頭を下げた。


て事で、ここに、蓮と歌の、『師弟関係』が生まれた。


簡単に言うと、蓮の弟子入でしいりだ。

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