表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/14

真夜中の訪問者-1ー


風の無い夜だった。

妙に物静かなのが気にはなったが、真夜中に眼を覚ました、蓮が、宿屋の泊まっている部屋から、廊下に出た。

一階に泊まる部屋が点々とあり、蓮が、ほのかと女子チームで103号室に泊まっていた。

ちなみに華は、お隣の102号室だ。男子チームなので、ほだかと、同室だ。

すっかり仲良しになったのだが、蓮は、ふと、外に出てしまった。


大人のほのかは、寝てる時も、色香があふれてて、耐性の無い、蓮には、目の毒だった。変に緊張してしまうのだ。


そもそも、気を許しすぎなのも、如何いかがなものか。


しかし、物音一つしない。

廊下の空気は冷えてて、薄明かりはあるけれど、不気味なくらいに、静かだ。


他の宿泊客も居るのだから、トイレに起きる音とか、少しの話し声がしても、変では無いのに。


それとも、駅近くのこの宿は、夜はこんなものなのだろうか?


疑問がる蓮が、真ん前の丸い窓ガラスを見て、ぞっとした。


前触れも無く、それは、窓をすり抜けて、蓮の前に、降り立った。


「やぁ。こんばんは、と、言うべきかな?」


長いサラサラの黒髪に、青が少し入っている。翡翠ひすい色の眼をした、青年は、灰色のロングコートを、羽織っている。


どすぐろい空気。

この感じは、あの列車でただよっていた、魔族、そのものだ。


「残念ながら、助けは来ないよ。俺の『睡魔』は、この宿屋の人達全ひとたちすべてに、およんでいるから。俺はいけかない大貴族らしか、狩らないから、あの二人には手を出さないよ」


まるで蛇ににらまれた蛙。

安着あんちゃくだが、そんな言葉が、蓮の全身を、こおり付かせた。


「だーかーらー、そんなに、こわがらないでよ。俺は、話し合いに来ただけ、なんだから。君と華に、会いたいって人が居るんだよ。ま、強制だけどね」


扉の前に追い詰められた、蓮が、歯をカタカタ鳴らしながら、手にした、白いふくろうのおまもりを、撫でまわした。


ふわりとかおる、百合の花。

違う。

長い白髪の青年が、不機嫌そうに『転位』してきた。


輝良きら、さん?」


孤児院 春馬の院長が、怖がる蓮を背中に隠すと、やりを片手に、魔族の青年と、対峙たいじした。


「よくも『影』の分際で、蓮を、怖がらせたな!」


わりとガチメに切れた、輝良が、光の閃光せんこうを放った。


「なるほど、ね。道理で、その子から、やーな匂いがすると思った。やぁ、初めまして、百合家の松村 輝良さん。お会い出来て、光栄だよ」


指先一つで、聖なる光をいなすと、青年が、薄く笑った。


「君が出てくるとは、予想外だな。俺はただ、蓮と華を、ここから連れ出したい、だけなのに」


「うるさいですね。貴方はまだ、本体では無いのでしょう? 見た感じ、び出した術者の力が、まだ、未熟な様だ」


「あらま、当てられちゃった。そうだよ。俺の主は、確かに、今は未完成でね。本領発揮するまで、もうちょい、時間が掛かるんだよね」


猛烈もうれつな勢いで、輝良が、槍を突き出すと、青年の姿が、大きく揺らいだ。


「あーあ、残念だな。時間切れっぽい。けど、それは、君も同じだね」


クスリと青年が笑うと、輝良の姿が、梟のおまもりに、戻り掛けている。


「また、会いに来るよ、蓮。俺は、鯨井くじらい きんかん。君の『味方』さ」


先に、消失したのは、魔族、きんかんと名乗る者、だった。


「院長、私は」


「ふぅ。何とかなって良かったよ。貴方が無事なら、それで良い。大丈夫。連れ戻しはしないから。私は、蓮と華の『絶対的な味方』だよ」


一際ひときわ明るく笑うと、輝良が、蓮の頬を撫でて、ふっと、き消えた。


蓮の牛乳色の手に残ったのは、白い梟のおまもりだけ。


パキンと音を立てて、宿屋を覆った術がけると、騒ぎを聞きつけた、ほのかや華達が、走ってきた。


極度の緊張から、解き放たれた、蓮は、一気に、気失ってしまった。



宿屋の外で、一部始終を見守っていた少女が、歯痒はがゆそうな顔をすると、背後の影と、会話している。


「やっぱり、このまま引き下がるのは、しいんじゃ無いのかな? 真七まな


ねずみ色の着物姿の真七が、嘆息たんそくした。


「そもそも、アナタが、いさみ足過ぎるのよ、きんかん。あれでは、警戒されて当然よ」

 

とんとんと路地に紛れ込むと、電柱を見上げる、真七。


周辺には、田園風景が、広がっている。


「まだ、いくらでもチャンスはあるわ。奴隷制度を無くす為に、今の王やその子達を殺す為に、二人は必要だもの」


深い暗闇に紛れる様に、小さな古びたアパートに、真七が、帰って行った。


吐いた言葉は重く、何処までも、血生臭ちなまぐさかった。


とても刺刺とげとげしい真七を、背後に付き添う、魔族のきんかんは、気に入っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ