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第43話 魔王決定戦

 色々と残念な部分はあるが、ヘジテは改造したキングオークの斧用に専用のホルスターも作ってくれて、俺はそれを背中に背負うことにした。流石にそうなるとザックは背負えないので収納袋に入れて、袋部分は前に来るように肩ベルトをかけた。


 森を抜けるまでには他にも色々な魔物が出たが、キングオークほどの難敵に会うことは無く、すべてはオベリスクが一人で倒してしまった。



 森を抜けると、そこには広大な草原が広がっていた。


「ナーガとヘジテは手助けできないという事は魔王城の方角も教えてはくれないという事だよね。オベリスクは魔王城がどっちにあるかは分かるのかい?」

 俺はオベリスクに聞く。


「うむ残念ながら余には分かってしまうのだ。これは余の血が為せる技なのだろう。間違えようがない。しかもどれくらい離れているのかまで分かってしまう」


「さ、今日の移動はこれくらいにして、今晩はこのあたり野営するとするかのう」

 ヘジテが言った。


 草原はところどころ背の高い草が生えているところもある。風の事も考え、そんな場所を選んで草を押しつぶし、昨日のテント場と同じくテントと共にタープも張った。


 高い木は生えていないので持参した長い木の棒を二本ポール代わりに使った。一緒に寝ていると外敵に襲われたときに、無意識でも助けた事になってしまうといけないので、女性姿のナーガには申し訳ないのだが、テント内では俺とオベリスクが、タープ泊はヘジテとナーガがすることになった。


 二つの場所は結構な距離放してある。寝場所とは別に高い草が生えていない場所に焚火台を構えた。草に引火をするとまずいと思ったからだ。


 収納してあった椅子を並べて食器やら何やらも準備すると、食材も酒もあるので昨日までいたテント場とは。川や風呂がないだけで状況はそう変わらない。準備が整えば昨日と変わらず宴が始まる。


「こんな海から離れた内陸部の草原で、魚を食べるというのもなかなかにシュールだな」


 焼きあがった一夜干しを箸でつつきながらオベリスクは言った。


「この森を抜けて草原に出た段階で残りはあとどれくらいなんだい?」


 俺はオベリスクに聞く。他の二人は黙っている。


「歩いたなら丸五日ぐらいの距離だな。他の候補者も同じくらいのところに置き去りにされているから、早い奴はもう魔王城に帰り着いていることだろう」


「候補ってのは全部で何人ぐらいいるんだ?」


「今回は余を含めて四人だな。一人はナーガも言っていた強硬派のマーダー。余ともう一人のシンラは穏健派で、最後の一人は中道派のラファエルだ。みな考え方は違えど付き合いは長い。マーダーとて悪い男ではない。奴が魔王になるというのであれば、その考え方は尊重すべきだろう。自らが責任を放棄して、そのやり方にケチをつけるというわけにはいかないからな。……しかし次の魔王はほかのものがなると思っていたので、マーダーが第一候補だというのは少々意外だった。転生した時期的には奴の魔力は三番目のはずなんだがな」


「オベリスクは何番目なんだい?」


「余は二番目だ。一番は断トツでシンラだから、そもそも今回は魔王になんぞならなくて済むとも思っていたのだ」


「でもなぜオベリスクを除くと二番目のマーダーさんが、今一番の有力候補になったんだい?」


「別に魔王は魔力の強い順に決まるというわけでもないですからな。そんな事であれば試練など課す必要がない」

 ヘジテが言った。


「まだつたない魔力や肉体で、一人放り出された僻地で行き抜き魔王城に帰り着いてこそ正式な候補となるのです。途中強力な魔物に出会えば殺されることもあります。まぁ殺されても転生するだけですけどね」

 ナーガが言った。


「すごろくで言えば振り出しに戻るって事ですね」

 俺はそう返した。


「すごろくというのはよくわかりませんが、どうもシンラ様は何者かにやられてしまって転生してしまったみたいなんです。あ、これは言ってよかったんですかね……」


 ナーガは少し慌てた顔をする。


「なんとなくそうだとは思っておったぞ。しかしまさかあのシンラがな……」


 オベリスクは少しだけ辛辣な顔をした。


「それはそういうこともあるんでしょうね。あの海岸でもナーガが現れてなかったらキングオークが現れた時やばかったですもんね」

 俺が言った。


「何を言っている、主がいなくて余ひとりだけなら逃げおおせたぞ。ま、あの時は流石の余も転生を覚悟したがな」


 はいはいすいませんでしたねと、俺はオベリスクのカップにワインを注いだ。なんとなくその夜は、ビールというよりはワインの気分だった。不思議にもそういう時は、他の三人もそういう気分であったりする。


 魚にワインはどうなんだという人もいるが、俺個人としては、別にそれはそれでありだと思っている。白ワインだけではない、赤ワインであってもいい。そう今飲んでいるワインも赤だ。


 但し焼き魚は最初の一枚だけで、次は鶏肉を焼き始めた。ヘジテには焼き鳥をまだ御馳走していなかったからだ。照り焼きはもうやったので、今回はシンプルに塩だけで焼く。草原には焼き鳥を焼くいい匂いが広がった。


「それで魔王城に帰り着いて、正式な候補になったところで、その後はどうやって次期魔王は決定されるんだ?」

 俺はオベリスクに聞く。


「そこからはまぁ力と力のぶつかり合いだな……と行きたいところだが、どの候補もまだ本来の力を取り戻してはいないからな。代理で側近同士が戦うんだ」


「ああ、じゃあナーガやヘジテさんに戦ってもらうってわけなのかな?」


「何をいっておるんじゃ、儂はただのドワーフじゃぞ。魔族に勝てるわけが無かろう」

 ヘジテが慌てて否定した。


「私とて同じ事です。竜族は魔王一族とは一定の距離を保ってますから、どなたかに肩入れするような事はありません」


「ふむ、そこは心配には及ばん。余にも強力な側近がおるからな。普段は一国を治めていて魔王城にはおらんが、招集をかければすぐにはせ参じてくれるだろう。そいつは強いぞ。ま、余が帰り着かない事にはどうにもできんだろうがな」


「そんな凄い側近の方がいるのに、オベリスクは裏切ってキャンプ三昧で羽を伸ばそうとしていたのか?」


「な、なにを言っておるのだ。側近とはいってもヤツは一国一城の主だからな。余などいてもいなくても問題ない。そのうちあのテント場にも招待しようと思っていたのだぞ」

※草原みたいなところで焚火をするのは、延焼の恐れがあるのでやめておいた方がいいです。枯れてる感じの草は一度着火するとものすごい勢いで火が広がります。野焼きを見たことがある人には分かってもらえるかと思います。

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