第42話 必殺技
「こいつを使え!!」
そう言ってオベリスクが先ほど倒したハイオークが持っていた斧を俺に投げてよこした。受け取った俺は、一瞬その重さにビビった。強化魔法がかかっているとはいえ、大きすぎて片腕で持てる代物ではない。
「アルティメットドライブのレベル2じゃ!!」
ヘジテが叫んでいる。その言葉を聞いて一瞬俺はひるんだが、今はそういう場合でもない。俺はブレスレットの目盛りを一つ上げると、ハイオークの斧を両手で掴んで振り回した。
それをキングオークは自分の斧で受けた。あたりに金属同士がぶつかる大きな音がこだました。すぐに俺は斧を右肩の方で回転させて次の攻撃態勢に入る。もちろんキングオークもそれを受けようとするが、その速度が俺の攻撃を上回ることは無かった。
俺の斧の先端はキングオークの右肩の防具を突き破って、その肉体へと食い込んでいた。しかしそれでひるむことなくキングオークは斧を左腕に持ち変えると、逆に俺に斬りかかってきた。それを今度は俺が両腕で持ったハイオークの斧で受ける。
またもや鈍い金属音があたりに響き渡った。そこで俺は、今度は右足でキングオークの腹に蹴りを入れる。体格に差がありすぎて、蹴り技は効かないかと思ったがそんなことは無かった。
蹴りの威力にキングオークは前かがみになって一歩後ろへと下がった。頭は下がり、目線は下へとそれた。そこで俺はもう一度斧を振りかぶってその後頭部に一撃を入れた。ハイオークの斧はキングオークの後頭部に突き刺さる。そうしてそのままキングオークは地面に突っ伏した。そこからはもう立ち上がってくることは無かった。
オベリスクが俺の方にやってくる。
「凄いなケンロー。今の余でも流石にキングオークには勝てないぞ。ま、一人なら逃げ切れるとは思うがな……しかし魔石の貧弱な身体強化で、そこまでの力を出せるとかとんでもないスキルだな……しかしなんだ、その何とかドライブっていうのは……叫ばないと駄目な奴なのか?」
何かオベリスクは気の毒そうな目で俺を見る。そこは正直ちょっとスルーして欲しかった。俺は恨めしそうにヘジテの方を見る。しかしどうにも彼には、俺の真意は伝わらない様だ。
「見ましたか、儂の魔道具の威力を! キングオークと言えばかなりの難敵ですぞ!!」
そう言ってどや顔をしている。いや、たしかにそこは凄いし、作ってくれたヘジテに感謝はしてはいるが、問題はそこではないのだ。
「まぁ名前はおいておくとして、確かに凄かったですよ。しかし武器はケンローが異世界から持ち込んだ斧では脆弱すぎますね。今キングオークが残した斧なんかはなかなかの物だと思うんですが、少し大きすぎますかね?」
見かねたナーガが助け舟を出してくれた。
「ふーむ、儂が少し加工して大きさを変えられるようにしてみようか」
そう言ってヘジテはキングオークが残した斧のところへ行くと、背中の大きな荷物の中からいくつか道具を出して加工を始めた。ものの五分とかからずに、キングオークの斧には魔石が埋め込まれ、特に持ち手には装飾を施された小ぶりな斧へと生まれ変わった。
「どうじゃ、名付けてカタストロフィアックスじゃ!!」
ヘジテは斧を掲げてそう叫ぶ。
「それは叫ばないと大きさを変えられないのかな?」
俺はヘジテに聞いてみる。
「いや、これは持った人間の意思をくみ取って大きさが変わるようにしてあるぞ」
「じゃあ名前は却下の方向で……」
「うん、名前はいらないな」
オベリスクが賛成してくれた。
「私もそう思います」
ナーガも言った。
ヘジテは信じられないものを見るように三人の顔を見ている。そうしてまた背中の荷物からごそごそと道具を取り出して斧の改造を始めた。今度は斧のグリップの先端にも魔石を組み込んだ。
「まぁ名前は無くてもよいだろう。しかしカタストロフィアックスと叫んで斬りかかることで、必殺技が炸裂するように、とっておきの魔石を使って更に改造しておいたぞ」
ヘジテはそう説明した。
「それはどんな必殺技なんでしょうか?」
一応俺は聞いてみた。
「ケンロー殿は自分では魔力を生産できず、魔道具を使ってもほんの少しの魔力をまとえるだけの存在じゃろ? だから戦う相手との魔力の差がそのままダメージになるようにしておいたのだ。これは強い相手には有効だぞ」
ヘジテが説明した。
「そんな技をもらったら、私なら即死かもしれませんね……」
ナーガはそう言った。そうして
「その前に必殺技の名前を叫ばれると、笑い死にするかもしれませんが……」
と付け加えた。うん。この必殺技は封印することにしよう。
※斧も大きさは色々ですが、薪割用のハンドアクスはもちろん木を切ったりできませんし、木を短く切り刻むなんて事も出来ません。流石に木こりが使うような柄の長い、本格的な斧を持ってキャンプに来ている人は見たことが無いです。




