第41話 斧対斧
ナーガの言ったとおりそこから少し進んだところで早速魔物が現れた。オオカミのような姿をしているが、動物ではない。頭の付いた首が二本生えているからケンローにも魔物だとすぐに分かった。
「余の試練なのだから三人は手を出すなよ。あ、ケンローは別か、まぁでも危ないから下がってろ」
そう言ってオベリスクはものすごい速さで魔物に向かって走り出した。
「オベリスクのスピードが上がってないですか?」
俺はナーガに聞く。
「試練の時期の魔王の血族の成長速度は凄まじいですからね」
オベリスクはあっという間に魔物の元へとたどり着く、魔物の方も俊敏な動きで、牙と爪を使ってオベリスクに一撃を入れようと攻撃してくる。しかしオベリスクはそれらをヒラリと交わして魔物の一方の首に右手を当てたと思ったら
「バクアツ!!」と叫んだ。
魔物の一方の首は血しぶきをあげて爆発した、頭部は地面に転がり落ちる。すかさず左手でもう一方の首を五本の指で撫で上げる。すると残された首は指の本数分の輪切りになった。多分以前丸太を切って見せた風魔法と同じだ。
あっという間に魔物を倒すとオベリスクは三人の方に戻ってきた。
「大体何の恨みも目的もないのに魔物を殺すなんて嫌なんだよな。向かってくるから仕方がないけど」
オベリスクはそう言った。そこからもオベリスクの戦いは続いた。三人は手助けをするどころかその様子をじっとながめているだけだった。カーバンクルとオベリスクが魔法合戦をしているのを眺めながら、ヘジテがため息をつく。
「これでは儂のハンマーの出番がないではないか。暇じゃのう……」
その言葉を聞きつけたかのように背後から巨体を持つ魔物が現れた。それはオークだった。三体いる。
「なんじゃオークか……まぁよい。そう言ってヘジテはハンマーを構えると、その体は後ろに背負った大きな荷物ごと回転を始めた。原型が分からなくなるほど回転が高速化したところで、その塊は三体のオークの方へ向かって進み始めた。
オークは状況に気が付き、三体同時に斧を振り上げて回転するヘジテに向かって同時に斬りかかった。しかしその三体ともが回転するヘジテに弾き飛ばされた……ように見えた。その巨体は後方にあった大木の幹にたたきつけられる。そうしてその頭やら胴体には大きな窪みができていた。ぐったりとしていて三体とも起き上がってくることは無かった。
俺はその様子を見届けてから視線をオベリスクの方へ戻すと。既にカーバンクルとの戦いは終わっていた。しかし彼女はカーバンクルに代わって、海岸でも遭遇したハイオークと対峙していた。
彼女は全くひるむことなく、ハイオークに近づくと攻撃を加えていく。以前とは違って見る見るうちにハイオークの体には、傷がまた一つまた一つと増えてく。
「以前海岸で戦った時とは段違いに魔力量が増えていますね」
ナーガが言った。
海岸ではそれなりに苦戦したようにも記憶していたが、今はもう相手にはならない様だ。最後に大きな致命傷を首に負ってハイオークが倒れたところで、やっとオベリスクは一息ついた。
しかしその次のパターンも海岸と同じだった。茂みの方から今度はキングオークが現れた。
「さすがにここまでくるとキングオークも初めて見る顔ですね。私の事は分からない様です」
そう言ってからナーガはキングオークの方へと数歩歩み寄る。
「お前は言葉がわかるでしょう。むやみな殺生はしたくありません。ここは黙って引き下がりなさい」
「……見ない顔だが、何を言っている。仲間を四匹も殺したやつらを、黙ってここから逃がすと思うか?」
驚いた。オークも上位種のキングオークになると言葉を話すらしい。しかし戦わずにやり過ごすというのは難しい状況のようだ。
「力の差を見せないと無理のようですね」
ナーガは元の竜の形に戻ろうとしているようだった。俺はそれを止めに入った。
「それをやると、オベリスクを助けることになってしまうんじゃないですか? ここは俺に任せてください」
そう言って俺はヘジテに作ってもらったブレスレットのダイヤルに手をかけた。出力は一番下のところにした。時間の方はよくわからないので三分の一くらいにした。
「アルティメットドライブ!!!」
そう俺は叫ぶ。ヘジテは興奮した顔でこちらを見ている。オベリスクとナーガは、口を半開きにしてこちらを見て固まっている。俺はみるみる顔が赤面していくのを感じていた。それはきっとブレスレットの力ではないだろう。……騙された。この名前はこの世界では、ありふれたもののようにヘジテには聞かされていたのだ。
照れ隠しもあって、すぐに俺は棒の先端に斧をつけただけの武器を振って、キングーオークに立ち向かった。体が軽い。しかし一撃を加えようとしたところでキングオークの持つ斧で受けられて、俺の方の武器は木の部分で折れてしまった。
俺はあわてて先端の斧の部分を引き抜いて構える。大ぶりなキングオークの斧が振り下ろされてきた。それを避けるが、その風圧が顔にかかる。これは一撃でも受ければひとたまりもない威力だろう。避けたところで背後に回って首の部分を斧で狙った。しかしそれをキングオークは振り返りながら避ける。巨体に似合わず動きが素早い。
そうしてまたその大きな斧で斬りかかってきた。一瞬自分も斧でそれを受けようかと思ったが大きさが違いすぎる。多分受けきれずに体まで真っ二つに割られてしまう事だろう。とっさに背後に飛んでそれを避けた。またもや斧の風圧が俺に吹きかかる。
※ペグを打つのには専用のペグハンマーというものもあります。あればそれはそれで便利ですが、あんまり他に使い道が無いんですよね。バトニング(ナイフでの薪割)に使うのもなんかちょっと怖い(ナイフが折れそう)。荷物にもなりますからね……斧の逆側で十分です。




