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第34話 ピンチ

 二人が言っていた通り、ナーガが同行しているからか結界の外に出ても魔物が襲ってくることは無かった。この付近の主のような存在らしいのでそれもそうだろう。


 元から強大な魔力を持つ相手には、恐れをなして近づいては来ないものかもしれない。きっとオベリスクも成長して魔力が上がれば同じことになるのだろう。いや、以前戦いのときは魔物に協力してもらったというような言い方をしていたので、むしろ自由に操れるようにすらなるのかもしれない。


 とにかく藪漕ぎをしながら進むこと二時間ぐらいでダンジョンの前に到着した。そこは木々の間にぽっかりと空間が空いて、中央には小さな岩山があってその真ん中に穴が開いていた。何か自然愛好家の人が建てた住宅の入り口のような佇まいだった。


 昼時ではあるので、まずは平らなところにレジャーシートを出して昼食にする。


「結界の外だというのに、ナーガがいるとなんか緊張感無いな」

 オベリスクは文句を言っている。


「ダンジョンに入れば魔物もうようよ出てきますから安心してください」


 とナーガは返す。俺としてはあまりうようよとは出て来て欲しくはないのだが、とりあえずオベリスクの後をこっそりとついていく事にしよう。ああ、後ろから襲われても困るので、ナーガが後ろになるように、うまく二番目の位置をキープしなければいけない。


 作ってきた弁当は好評だった。あれだけ朝はケチをつけていたパンだったのに、マヨネーズの力は凄いなと感心した。そういえば前回買い出しのときは油と卵は買ったが、酢を買うのを忘れていた。次は忘れないように気を付けよう。マヨネーズはレシピさえ覚えてしまえば簡単に作れる。


 お湯を沸かすのは時間がかかるので、食後は水を飲む。ただぺちゃんこ水筒に入れた水にはレモン果汁を少しだけ混ぜてあって、オベリスクに数個出してもらった氷もカップに加えたので、こちらも至極好評だった。


 腹ごしらえが済んだところで、レジャーシートを畳んで収納袋に入れ、同時に中から先日作ったポンチョを出した。心なしか少し前よりも乾いて硬くなっているような気がする。気にしても仕方がないのでそれを頭から被った。その上にナイフを除けば唯一の武器、斧に木の棒をつけたものを後ろに背負った。


 ダンジョンに入って歩き始める。真っ暗だと思ってLEDランタンを持ってきたのだが、不思議と何があるのかはわかるぐらいには暗くなかった。何か光を放つ鉱石でも土や岩に混じっているのかもしれない。


 並び順は狙った通り先頭はオベリスクで、二番目が俺、そうしてしんがりがナーガだ。なんとも情けない感じだが命がかかっているので仕方がない。


 入って数分もしないうちに魔物が現れた。それはコウモリに近いものであったり、ネズミに近いものであったり、いかにも暗い洞窟で出そうな小動物的なものだったが、先頭を行くオベリスクがどんどんと魔法で倒していく。


 魔力は多くは無いらしいが、魔法自体も弱いものなので結構な数が放てるらしい。前にはオベリスクがいるので魔物がここまでくることは無いが、後ろもしんがりにナーガがいるせいか、魔物が襲ってくる気配はない。時たま後ろを振り返るとナーガが少し退屈そうな顔をしていた。


 しばらく進むと、壁際の床にひと際光る石のようなものをみつけた。


「お、早速あった。これが魔石だよ」

 そう言ってオベリスクはそれを拾い上げて俺に手渡してきた。


「へーきれいなもんだね」


「光ってるだろ? これはたっぷりと魔力を吸っていていいやつだぞ」

 オベリスクは自慢げだ。


「オベリスク様、少々退屈なので私に先頭を任せて頂いてもよろしいですか?」

 ナーガがいい機会だとばかりに聞いた。


「ダメダメ、ダンジョンなのにさっきから誰も後ろから攻撃してこないではないか。きっとナーガのせいだろう。主が先頭を行ったら魔物が一切出てこなくなりそうだ」


 確かにオベリスクの言う通りのような気もする。但し俺の目的は魔石なのでそれはそれでいいような気がしたが、それを言い出せる雰囲気ではなかった。更にダンジョンを進むと、また違った色をしている魔石が落ちていた。


「ケンロー拾っておいてくれ!」


 そう言いながらオベリスクは前に進み出た。慌てて魔石を拾い上げて収納袋に入れる。すると同時に前方でオベリスクの声がした。


「ホムラダマ!!」


 オベリスクの放った火球の明かりで、辺り一面が照らされた。前方にはかなりの数の緑色の小人のような姿があった。


「ゴブリンです!!」


 ナーガの声に後ろを振り返ると後ろからも同じ姿をした魔物が迫ってきていた。


「まずいですね。ゴブリンもオークと一緒で、そのポンチョの偽装は効かないでしょう。しかしこれは楽しくなってきました。ケンローは私たちの後ろに隠れていてください」


 そう言ってナーガは俺の頭をポンと軽くたたくと、腰に携えた剣を抜いてゴブリンの群れに突っ込んでいく。いや、後ろについていけるわけがない。オベリスクの方も見てみたが、結構離れたところで戦っている。火球ではなく近距離の風魔法で相手を切っているようだ。その後ろにも隠れようがない。


 オベリスクとナーガは次々と敵を倒していくが、数が多すぎる。案の定打ち漏らしたゴブリンが俺に向かってきた。俺は背中から斧付の棒を取り出して構える。三匹のゴブリンが一斉にとびかかってきた。手には刃物を持っている。


『まずい!これは死んだ!!』


※レジャーシートは色々なものが売っていますが、私は百均のブルーシートを愛用しています。但し本当にブルーのものは流石に色々とやばい感じなので、グリーンのものを使っています。破れても何しても凹まないで済みます。でも使い捨てはしませんよ。とことん使い込みます。

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