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第29話 旅立ち

 翌日起きると、早速一夜干ししてあった魚を焼いて食べた。残った分はいつものようにオベリスクに魔法で収納してもらう。


 米はあと少しだけ残っているが、食パンは無くなってしまった。肉と魚はこれでもかというくらいに在庫がある。高たんぱくなのはいいが、やはり穀物系の主食も欲しくなる。


 多分俺の予想だとこの世界での主食は小麦粉で焼いたパンのような気がする。元々何も食べないナーガや、肉や魚を生で食べているであろうオベリスクは、全く気にしていない様子だが、俺的にはご飯かパン、あわよくばラーメンやうどん、そばなんかも食べたくなる。


 もし買い出しに行くのであれば、もちろん米が売っているならば最優先だが、それがなくとも小麦粉ぐらいは欲しい。


 海からの帰りは、俺がいない方が逆に安全だとのことで、海辺のテント場を撤収し荷造りをしたところで、それらすべてをオベリスクに収納してもらい、彼女が一人でテント場まで戻る事になった。


 俺とナーガの二人だけで人間のいる町まで飛んでいく。ナーガには風化したオークが倒れていたところで、転がっていた鎧や斧を収納してもらった。


 町での買い出しが終われば、結界内の川べりに作ったテント場で、オベリスクと落ち合うという事になった。結界があってもナーガくらいの存在になると、その出入りは関係ないらしい。竜は魔物ではなく魔族に近い存在なのだろう。


 俺は一時的ではあるがオベリスクに別れを告げて、竜の姿になったナーガの上に乗った。はっきり言って乗るだけでかなり怖い。シートベルトなどはもちろんないので、その背中を捕まえて振り落とされないようにしなければならない。一体町までどれくらいの時間飛ぶのかは知らないが、これはこれで命がけだなと思った。


 オベリスクは海岸に立ってじっとこちらを見ている。ナーガが飛び立ち始めると俺はオベリスクに向かって手を振った……がすぐにまたナーガの背中にしがみついた。多分離陸の瞬間が一番揺れる。ここで振り落とされたなら死ぬことは無いだろうがかなりかっこ悪い。いや、必死でしがみついているのもかなりかっこ悪いが、背に腹は代えられない。


 あとはオベリスクの姿を確認することもできずにナーガは飛び立ってしまった。離陸するなりナーガはものすごい速度で上昇していく。耳が何度もキーンとした。そうして必死にしがみついているうちに海も森も眼下に小さくなっていた。


 上空を飛行しながらもナーガに話しかけようとしたが、風が激しく吹いていて会話にならない。それはそうだろう、飛行機の翼部分につかまって空を飛んでいるようなものなのだ。学生時代にはバイクにも乗ったものだが、その時と比べ物にならないくらいに風は激しい。台風の風速は時速に直すと150kmぐらいらしいが、それよりもはるかに速いのだろう。


 そうして、飛行時間は驚くほど短かった。飛行機に乗って移動するようなものなのだからそれはそうだろう。地上に降り立つとそこは森と草原の丁度切り替わりのようなところだった。


 上空では一切会話ができなかったが、降りてからナーガが言うには、あまりに街に近づいて姿を目撃されると大騒ぎになるので、町からはかなり離れた場所で着地したんだそうだ。


 ナーガはまた人間の姿に変化しているが、海でもそうだったがもちろん裸というわけではない。竜の姿でいるときは裸であるのに不思議な感じがした。


 そうして収納魔法を解除して大きな帽子を出した。角を隠すためらしい。しかし帽子をかぶったところでかなりの美女だ。自分の姿も元の世界でキャンプに行く服装で、素材はズボンこそ綿素材だが上は化学繊維の長袖Tシャツだ。これは二人で歩くとかなり目立つような気がして少し心配になった。


 町の外れに着くまでにも三十分以上がかかった。町のイメージとしては、城壁に囲まれて門番が検問をしている感じだったのだが、全くそんなことは無く町はずれの畑が広がる田舎風景から始まって、町の中心に向かうにつれて建物の密度が上がっていく感じだった。きっと城壁などいらない平和な時代なのだろう。


 途中ぽつぽつと人ともすれ違ったが、全員が全員ジロジロと二人を見てきた。それでいて誰からも声をかけられることは無かった。しかしそれも建物の数が増える町中に入って人が多くなると、それほど気にならなくなってきた。


 町並みは確かに想像したような中世のヨーロッパみたいな感じではあるが、歩いている人間はすべて西洋人というわけでもなく、色々な人種が混ざり合っている感じだ。中には獣人と思われるものもいた。


 まずはナーガが収納したオークの装備を売る為に武器屋に行った。武器屋の看板は剣の絵が描かれているので、すぐに分かった。もちろん事前に町の人に場所とお勧めの店を聞いてから来た。言語伝達のスキルはかなり役に立つ。町中には露店もたくさん出ていたが、セキュリティの問題があるのか、防具屋はあっても武器屋はなかった。


 武器屋の中に入ると客は他に誰もいなかった。店主が俺とナーガをじろりと睨む。しかしナーガはすこぶる美人なので、その表情は直ぐに緩んだ。


「買い取ってほしいものがある」


 店主にそう言って、ナーガが収納魔法を解除すると、オークが装備していた鎧や斧がどさどさと床に落ちた。店主は驚いている。


「お客さん、あんたそれ収納魔法だよな。悪いことは言わない。あんまり人前で使わない方がいいぜ」


「それはなぜですか?」

 俺は聞いてみた。


「以前はともかく、最近ではその魔法の使い手は殆どいなくなっちまった。悪い連中に目をつけられたら、どこに連れていかれるか分からないぜ」


 よく考えたら確かにそうだ。密輸するにしても盗品を隠すにしても、こんなに便利な魔法はない。ナーガもうんうんと頷いている。


 買い取ってはもらったものの、どうにも貨幣価値が分からない。ただ店主は悪人ではなさそうだったので、買い叩かれたという事もないだろう。ナーガの情報もかなり古いのであてにはならない。


 買取時の金額にナーガが驚いていたので、多分彼女の知っている時代よりもかなりのインフレが進んでいるのだろう。


※収納魔法は本当にキャンプの時にはあったらいいのになと思います。設定によっては中のものが腐らなかったり、温度変化が無かったりって言う場合もありますよね。いや、キャンプだけでは無いですね。家でも絶対重宝します。でもものが捨てられなくなりそう^^;。

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