第28話 二人の関係
「ナーガはオベリスクの事を様付で呼んでいるけども、二人はどういう関係なのかな?」
俺は二人に聞いてみた。
「オベリスク様は私よりもだいぶ年上ですからね。魔王だったころに知り合ってから、尊敬の念を込めてずっとそう呼ばせて頂いてます」
「そういえばオベリスクって、今までに魔王を何回かやってたんだよね?」
「ああ、魔王の座は血族の間で持ち回りみたいなもんだと言っただろう。死んでも転生してしまうから個体数は減らないが、増えることも無くてどうしたって順番が回ってくる。面倒くさくて嫌なんだけどな」
魔王というのは、そんなマンションの管理組合の組合長みたいな感じで選ばれるものなんだろうか?
「そうかケンローにはまだ詳しくこの世界の事を説明してなかったな。聞いても来ないから、興味がないのかと思っていたぞ」
「まぁ知ったところで森から出られそうになかったので、聞いても仕方ないだろうなとは思っていたよ。でももし買い出しで森の外へ行くなら知っておいた方がいいんだろうな。大体魔族は死なないっていうけど、なら一体いつ生まれたんだ?」
「それが不思議なことに余にも分からないのだ」
「でも前世の記憶はあるんだよね?」
「うむ。しかし例えば主だって子供のころの事をすべては覚えていないだろう? 大きなところは覚えていても昔のことは段々と忘れていくものだ」
「記録を書き残せばいいと思うけどな」
「ああ、人族の使う文字とかいうやつだな。魔族には文字という文化が無い。種族によって言葉も色々だから、共通した何かは発達しなかったのだろう」
「文字という文化は竜族にもありませんよ。大体この体にならないとそんな細かい作業はできませんし……ただ長生きした甲斐あって、人間の文字は読むことはできます」
「え! ナーガは文字が読めるのか? 凄いな。あんな面倒くさいものよく覚える気になったな」
「人族の言葉は魔族ほど種類が多くないですからね。しかしながら最近は人とは交流していないので、今でも通じるかどうかは分かりません」
ナーガが言った。
「長生きって言ったけど竜族は死んでも転生しないんだよね? ということは子供を作ることもあるってこと?」
俺の質問にナーガは頬を赤らめる。
「まぁ一個体の寿命が長いので、滅多にそういうことにはなりませんけどね。私には母もいれば父もいます」
「ああ、そういえばケンローも最初に会ったときに、お父さんとかお母さんとか言ってたな。そういう意味だったのか。余にはそんなものいないぞ。あれ? いたのかな? 大体そんな昔の事を覚えていられるわけがなかろう」
その他にも色々なことを聞いたが、人族の街や文化についてはこの二人はそこまで詳しくないようだ。さらに言えばその知識も随分と昔の話らしい。夜も更けてきたので、加減のいいところで話は切り上げて、その日はもう寝ようということになった。
しかしナーガがいなくなると、また魔物が襲ってこないとも限らないので、彼女も今晩は泊っていく事になった。オベリスクが自慢げにテントや寝袋の話をナーガにして、結局三人でテントの中に川の字になって寝ることになってしまった。オベリスクの体は八歳児のそれなので、彼女を真ん中にしてナーガと俺で挟んで寝れば、何か親子と子供で寝ているような不思議な気分になった。
テントの外では波の音がやむことなく鳴り続けていた。
※ソロ用テントだと、かなり仲のいい人間同士であっても大人二人で寝るのは至難の業ですね。チャレンジした事はありません。




