第27話 提案
そうしてオベリスクは何やら考え込む。
「ナーガは当然空は飛べるよな」
「それはドラゴンですからね。アースドラゴンやシードラゴンと違って飛べますよ。大体連中は姿が似ているというだけで、竜の血族ではないですからね」
「そうしたら森を抜けて人の街にも行けるってことだろう?」
「……魔王候補の試練には手を貸さないというのが決まりですから、オベリスク様を森の外にはお連れできませんよ」
「いや、もちろんそれはいいんだが、ケンローを人の街に連れて行く事は問題ないよな」
「まぁそれはそうですね」
「さっき一口飲んだだろう。そのシュワシュワする酒。それはな、人族の街でなら入手ができるかもしれないのだ……それに……ケンロー、例のものを見せてやってくれ」
「例のものって、薬物じゃないんだから……あれかな? マヨネーズの事かな?」
「それと粉末醤油のやつだ」
「了解」
そう言って俺はその二つを取り出して、魚と一緒に焼いていたピーマンを網からとるとナーガの器に入れてあげた。そうしてその上にマヨネーズをかける。それを不思議そうに眺めていたナーガであったが、オベリスクに勧められるままそれを口にする。
「なんと! これは美味ですね。塩をかけて焼いた魚とは全く違う味ですがこれはこれでもの凄くおいしい!」
ほらっほらっという感じでオベリスクが指示してくるので、今度は玉ねぎに粉末醤油系の調味料をかけて、またナーガに渡した。
「……驚いた。これはまた違う味わいです!」
「この他にもトンコツなるものもあるのだが、今は切らせている。人の街にさえ行けばそこで手に入れた材料でこの味が再現できるかもしれないのだ。今現在、そこの川の上流に行ったところにある結界内で寝起きしているのだが、主がケンローを定期的に買い出しに連れて行ってくれるなら、いつでも御馳走しようではないか」
いや、マヨネーズとトンコツはともかく粉末醤油系調味料は再現が難しいと思うのだが、そこは黙っておいた。
「なるほど、実は少々普段の生活に退屈していたのです。オベリスク様を運ばないのであればルールを破る事にはなりませんし、私もたまには人の街などを見て回って、学ぶことも必要でしょう。わかりました。その役私にお任せください」
「うむ。ナーガならきっと引き受けてくれると思っていたぞ。主は頭は固いが好奇心は人一倍旺盛だからのう」
何か俺を差し置いて色々と話が進んでいるようだが、もちろん俺に反対意見があろうはずもない。但し気になったのは移動時には竜の背中に乗って飛ぶことになるという部分だ。落ちたならば確実に死んでしまうのは間違いない。あともうひとつ……
「買い出しとなると、お金が必要になりますよね? 多分この世界にもお金があると思うんですが、もちろん私は一円も持っていません。あ、貨幣の単位は円ではないと思いますが……」
「そこは心配ないであろう。先だって倒したオークとハイオークの死骸は朝になれば風化しているだろうが装備は残る。大した材料は使われていないが、でかいから売り払えばそれなりの金額になると思うぞ」
オベリスクが言った。
話がまとまったところで、魚は終了して鹿肉ステーキのターンに突入である。三人分は鉄板で焼くと時間がかかりそうなので、今回は網にのせて直火で行くことにした。火であぶられた肉からは油がしたたり落ち、それが炎を燃えがらせる。ナーガはそれを楽しそうに眺めている。流石は火を噴くドラゴンである。
ステーキには、醤油系粉末調味料を振りかけた。玉ねぎだけではその実力を真に理解できていないと思ったからだ。
しかしこれだけは再現して作るのは難しそうだ。味噌と醤油は俺のいた日本独特のものだ。魚醤はありそうな気もしたが、あれを蒸発させても粉末醤油にはならないだろう。うん、粉末醤油系調味料は少し節約していこうかなと思った。調味料の中では一番大瓶で持ってきていたので、今まではちょっと使いすぎていたような気がする。
「先ほどの玉ねぎでも驚きましたが、この調味料は肉こそが真骨頂という感じですね。いや、これは先ほどの魚でもいいような気がします」
普段物は食べないと言っていたのに、だんだんナーガもオベリスクのノリに近づいているような気がする。
「そういえば他の物はいいとして、ビールだけは収納魔法が無いと運べませんよね。ナーガさんは収納魔法使えるんですか?」
「ナーガでいいです。私を誰だと思っているんですか? 竜の血族ですよ 逆にケンローは使えないんですか?」
「あ、ケンローは魔法は一切使えないんだ」
「では強力なスキルをお持ちなんですか? 先ほどの様子では失礼ながら戦闘能力はさほど高くないように感じましたが……」
「スキルも今判明した言語伝達以外は何を持ってるのか分からない」
「異世界からの転移者は何らかの強力な特性を持っていると伝え聞いてますが、どうなっているんでしょうね?」
「ナーガは今まで転移者と会ったことはあるのか?」
「いえ、噂でしか……」
「うむ、余も随分と長い間転生を繰り返してきて、噂は色々と聞いていたが転移者に会うのはこれで二人目なのだ」
「たまたま転移したのが結界内だからよかったようなものの、ほかの場所であれば瞬時に死んでいたわけですよね? あ、不死とかかもしれませんね。一度死んでみますか?」
ナーガがとんでもないことを言い出した。
「それは失敗したら蘇生魔法とかはあるんですか?」
「蘇生魔法? ああ、一度死んだものを生き返らせるやつですね。ちょっとその手の魔法は使えません。オベリスク様はお持ちでしたよね?」
「いや、今の魔力では無理だな。殺すならそれが使えるようになってからの方がいいだろう」
そりゃそうだろう。
※マヨネーズは危険ですよね。なんでもおいしくいただけますが、ほりにしと一緒で全部その味になってしまいます。丸ごと一本だと大きすぎますが、これまた小さい子袋入りのものが100均で売ってます。




