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第26話 ナーガ

 とにかくどこでテントを張るにしても、キャンプと言えばまずは焚火だ。いつものように火を起こそうとすると、オベリスクが自分でやりたいというので任せることにした。


 どうも今しがた出会ったナーガに、その技術を見せびらかしたいようだ。俺は手持無沙汰なので、オベリスクに一通りの荷物を出してもらうと、まずは先ほど彼女たちが獲ってきてくれた魚を開いて海水で洗い、目のところにロープを通して一夜干しを仕込むことにした。


 明日また太陽が出たら天日干しも作るとして、一夜干しは味にパンチが無いという人もいるがこれはこれで俺は好きだ。


 もちろん鹿肉もスライスして、あとは焼くだけの状態にしておく。残っている食材でBBQに使えそうなものと言えば、残っているのはピーマンと玉ねぎくらいだ。ピーマンはへたをとって、中の種を取り除いてから四等分に切る。玉ねぎは輪切りにして、ばらばらにならないように、木から切り出した串を通した。


 焚火の火が安定してきたところで、海魚の開きを網にのせて今日作ったばかりの塩を振りかけた。とたんにあたりにいい匂いが立ち込める。魚はすぐに焼きあがった。ソロキャンプ装備しか持っていないのに、三人になってしまったので食器が不足してくる。今日はメスティンだけでなく飯盒も蓋を含めて食器替りだ。


 まずは焼き魚だからだ、メスティンの蓋と本体、飯盒にそれぞれ取り分けてからいただく。


「うん。俺のいた世界の魚と変わらないな。これはアジだ。味がいいからアジって名前になったらしい」


「すごいな、川魚とはまた違った味わいだ。川魚は塩をかけようとも淡白な味わいだったが、海魚は一味違う。引き締まっているというかうま味が絡まっている感じだな。しかも海水から作った塩はいい具合に雑味もあって味わい深い」


 相変わらずのオベリスクの食レポだった。ナーガも俺とオベリスクの様子を見て恐る恐る、渡したフォークで魚の身を少しとっては口に運ぶ。そうして驚きの表情をあげる。


「焼いた魚はこれほどまでに美味なんですか、これだけ長く生きてきたのに全然気が付きませんでした。確かに人族にはそんなことをしている者もいましたね」


「うむ、そうであろう。しかも味付けは海水に含まれている塩だけだぞ……だがな驚くのはまだ早い。……しかしそれは後のお楽しみだ。ケンローここはあれの出番だろう」


 それが何かを聞くほどに野暮ではない、俺はクーラーボックスからラス2の缶ビールを取り出して開ける。まぁそうなるだろうと思ってシェラカップの方には魚はよそわなかった。


 オベリスクにはシェラカップを、ナーガには俺愛用のカップを貸し与えて、俺は飯盒の蓋をカップ代わりにする。ビールは一缶だけなので量は少ないが、こいつはその最初の一口が最高なので、まぁそこは良しとしよう。三人三様の容器にビールを注いだところで


「まずは乾杯だな」とオベリスクが言った。


「乾杯とはなんですか?」

 ナーガが聞く。


「友達同士が記念を祝ってする儀式だ。酒の入った器同士をぶつけ合うのだ」

 完全に俺の受け売りである。


「なるほど、それで今日な何の記念ですか?」


「久々にナーガに再会した事と、初めてケンローが結界の外に出た事、この体でハイオークに勝った事あたりだな」


「それ多すぎないか?」


 俺がそういうと二人とも笑った。三人で即席のグラスを合わせる。最初の一口は予想通り最高だった。


「で、ナーガさんは普段は何を食べているんですか?」


 俺は聞いてみた。率直に言ってドラゴンの普段の食事というものに興味があった。


「この小さな体の時は口からものを入れたりしますが、元の大きな体だと何も食べることはないですね」


「何も食べないであの巨体が維持できるんでしょうか?」


「竜の血族は他のものよりも、大地や大気との親和性が高いのです。魔力の他にもそういった力が自然と取り込めるのです。食事などで維持しようと思えば逆に物凄い量を摂取しなければいけなくなって死んでしまいますねきっと」


「あ、魔族は死なないって聞きましたが、竜は死ぬんですか?」


「まぁ病気や怪我をしない限りは延々と生き続けますね。魔族とも敵対しているわけではないですし、特に他に天敵がいるわけでもありません」


「なんだケンローは竜に興味津々なんだな?」


「うん。元居た世界でも竜だけは別格の存在だったからね。実際に竜とこうして話しているなんて夢のようだよ」


「なんだナーガばかり、魔王というのは人気が無かったのか?」


 魔王は主に悪役で敵のラスボスみたいな立ち位置なことは、黙っておいた方がよさそうだ。


「もちろん魔王も別格の存在だよ。でもなんというか畏怖の念をもっているって感じかな。恐れ多い感じだ」


「ほう、そうか恐れ多いか」


「ケンロー殿はなかなか弁が立つんですね」

 そう言ってナーガは笑った。


「あれ? オベリスクは言語伝達のスキルを持っているって言ってたけど、どうしてナーガさんとは会話ができているんだろう? ナーガさんもそのスキルを持ってるんですか?」


「いえ、私は長く生きたおかげでこの世界の大概の言葉は理解できますが、異世界の言葉は分かるわけがありません。……お話しできるのはケンロー殿のスキルではないのですか?」


「殿はいらないです。ケンローでいいです。……てことは今まで不明だった俺固有のスキルは言語伝達だったってことなのか!」


「ほぉ、余のスキルと被っておったのか。ん? であれば魔族や人族、デミヒューマンとも言葉が通じるというわけだな。まぁ結界の中にいる限りは役には立たないだろうが……」


※飯盒の蓋って本当に重宝します。更に中には中子と言われるアルミの容器も入っているんですが、皿が二つあるようなもんです。本体で炊飯しながら中子で蒸し料理(餃子なんかも)するという技も使えます。

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