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第24話 戦闘

「しかしどのみち今から帰ったら夜になっちゃうな。夜行性の魔物は強いのが多いし……やはりここで夜を明かすか。さっきの氷の中には魚がいなかったしな」


 そう言った彼女の方を見ていたら、突然その表情が変わった。


「後ろ!!」


 オベリスクの叫び声に俺は振り返って後ろを見る。海岸線に面する茂みから、大きな二つの塊が出てきた。


「ありゃオークだ!! 余一人ならともかく、やつら結構足が速いから主は逃げきれんだろう。これは戦うしかなさそうだ」


「なんでポンチョで魔物の偽装をしているのに、あいつらは向かってくるんだ?」


「オークは魔物というよりは、デミヒューマンに近い。視覚や嗅覚などの感覚器官から入った情報で周囲の様子を把握するし、それなりな知能もある。余と主が普通の魔物で無いことも認識しているのだろう。奴らは大気中の魔力だけではなく、動物の肉も食べてエネルギーを得ているからな」


 オークはどんどんこちらへと近づいてくる。


「オベリスク、クロスボウを出してくれ!」


 俺の声に応じてオベリスクはクロスボウを出してくれた。作ったのは六つだ、それが砂浜の上に転がっている。二つを拾って両腕に構えると俺は一頭に的を絞ってこういった。


「俺は左に向かって二発撃つ、オベリスクは右を頼む」


 段々とオークが近づいてきた。これは確かにでかい。今まであった人間の誰よりもでかい。以前国技館に大相撲、後楽園にはプロレスを見に行ったことがあるが、身長も体重もその時見た人間の比ではない。そいつらが大きな鉄斧をもって迫ってくるのだ。これはかなりヤバい。


 そうしてオークは裸というわけではなく革の鎧のようなものを身にまとっている。しかし鎧で防御しているという事は、生身は意外と柔らかいのかもしれない。考えている時間はなかった。俺は一発は首、もう一発は鎧のない腹部分に向かってクロスボウの矢を放った。


「ブスッ! ブスッ!」


 それは見事に命中したのだが、まったく効いている気配がない。それはそうだ、仮にこの相手が熊だったとして、このクロスボウの矢二本でどうにかできるとは思えない。その熊を一撃で倒す怪物なのだ。俺は直ぐに砂浜に転がるクロスボウ二つに持ち替えた。


 隣ではオベリスクが呪文を唱えている。


「ホムラダマ!!」


 そういってオベリスクから放たれた火の玉は、右側のオークに命中してその体は炎に包まれた。オークは叫び声をあげてその足を止めた。左側のオークはお構いなしにこちらに迫ってくる。


 しかし距離が近づいたおかげで、今度はもう少し正確に狙えそうだ。俺は次の二発を頭に向かって撃った。一発は外れたがもう一発は左目のところに命中した。さすがにこれはオークにも効いたようで、左目を抑えながらその足は止まった。


「まぁまぁやるじゃないか」


 そう言ってオベリスクは前に進み出る。そうして十分距離が詰まったところで、丸太を切ったのと同じ要領でオークの首をはねた。もう一匹の方はまだ燃えている。


 最初は苦しそうに暴れていたが、段々とその動きは鈍くなってきた。そうしてそのうちに動かなくなった。周囲には肉の焼けるにおいが漂う。それはうまそうという事はなく、とても嫌な臭いだった。


 俺とオベリスクは互いの手と手をぶつけて、パーンと音を立てた。別に予行演習もしていないのにタイミングがバッチリだった。これが以心伝心というやつなのだろうか。


 しかしその後すぐにまた、茂みから更に大きな個体がこちらに近づいてくるのが分かった。その背丈は二mどころか三mはある。


「マジか!! ありゃハイオークだな……これは逃げ……」


 そういってオベリスクは俺の方をちらっと見た。


「られないよな……まあ一応……」


 オベリスクはすぐさま呪文を唱え始めた。


「ホムラダマ!!」


 まだハイオークとは結構な距離があったが、射程距離が長いのだろう、火球はハイオークに命中した。しかし燃え盛る炎に包まれたその怪物は、全く動じることなくこちらへと迫ってくる。


「やっぱり余の今の魔力では、口の中にでも叩き込まない限り効かないだろうな。まさかハイオークが出てくるとはな……こりゃ詰んだな」


 オベリスクは自嘲気味に笑っている。


「いいか。余が接近して風魔法で切り込んで時間を稼ぐ、何とかその間にケンローは川のところまで行って中に飛び込め。海は海獣が出るからやめておけ。オークは泳げないから川の中までは追ってこない。まぁ余は死んでも転生するだけだからな。何年後になるかは分からんがまたあのテント場で会おう」


 そう言い残してオベリスクはハイオークに向かって走り出した。そんなことを言われても逃げるわけにはいかないだろう。俺は砂浜に転がる最後の二つのクロスボウを持つとその後ろを追いかけた。また目にでも命中すれば隙ぐらいは作れるはずだ。


「ついてこなくていいって言ってるのにな」


 そういいながらオベリスクはオークの正面に出ると、風魔法でその体を切り裂こうとした。しかしそれは皮膚は切り裂くものの、深手を負わせることはできない。第二撃を入れようとしたところで、ハイオークの斧を持った方とは逆の腕の拳がオベリスクの腹を横から殴りつけた。彼女のその軽い体は横に吹っ飛ぶと砂浜に打ち付けられた。


「いてて、斧に気を取られすぎたな」


 砂地に転がるオベリスクに向かって、ハイオークは今度は斧を振りかぶる。振りかぶったところで俺はクロスボウの矢を放った。至近距離なので外すことはない、頭の方へと飛んで行った。しかし矢の方は尖らせたただの木の棒なので、ハイオークの固い皮膚にはじかれてしまった。


 しかし気を散らすことはできた、ハイオークはこちらを見ている。そうして咆哮をあげて、俺に向かってその巨大な斧を振り上げた。


 なんだ結局死ぬのかと覚悟を決めたとたん、ハイオークの開かれた口に向けてオベリスクが手をかざすと


「ホムラダマ!!」


 と叫んで火球を放った。火球は見事ハイオークの口の中へと入って行った。きっと体の中で炎が燃え盛っているのだろう、ハイオークはのたうち回っている。


「オベリスク、さっき収納した氷をこいつの上に出せないのか?!」

 そう叫んだ俺に


「はいよ!!!」


 オベリスクがそう答えると、大きな氷塊がハイオークのに上に現れてその頭めがけて落ちてきた。長細い形状が功を奏したのか、その衝撃でハイオークの頭は完全につぶれた。

※ハンドアクスと言って小型のものですが、斧も持っていく事は多いですね。実はペグうちのハンマーとしても使えるので出番は多いです。カバーは100均で革材料買ってきて自作しました。

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