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第23話 冒険?

 ともかくそこから俺とオベリスクはひたすらに歩き続けた。川は小動物たちの水場でもあるのだろう。途中シカや本物のウサギなどにも出会った。魔物の方は最初にアルミラージュを見かけた以外はなかなか出てはこなかった。


 そう言えば魔物は食事が不要とのことだったので、水もそんなに補給する必要はないのかもしれない。


「魔物って動物よりも少ないのかな」


「個体数はそうだろうな。というか結界の近くにはあまり自分からは寄り付かないだろう。つまり結界から離れれば離れるほど、出てくる確率は上がっていくというわけだ。ほら噂をすればあそこにいたぞ」


 オベリスクの言葉に、彼女の見ている方を俺も見た。すると透明で粘度の高い液体の塊のようなものが見えた。


「あれって……もしかしてスライム?!」


「お、よく知ってるな。ケンローの世界には魔物はいないのだろう? なのになんで知っているのだ?」


「うん。実際にはいなくても想像上の魔物というものは存在していて、スライムっていうのはその中でも有名なんだ」


「主の世界では想像上の存在が、この世界では実在しているのか? それは不思議な話だな。二つの世界には深い繋がりがあると考えるのが妥当だろう。主も転移してきた存在だし、それはそうなのだろうな」


 なるほど、オベリスクの意見は最もだ。二つの世界には共通点が多すぎるし、実在するかしないかの違いはあっても、概念や観念という部分では魔物も共通しているという事だ。もちろんそこにはどういう意味があるのか、俺には全くわからないのだが……。


「スライムは物理攻撃が効かないから、魔法の使えないものには結構厄介な相手だぞ。戦闘力は高くないが、主が一人の時に見かけたら逃げた方がいい」


 話に聞くスライムももちろん見るのは初めてだ。あまりかわいくはない。液体の塊が動いているようではっきり言って気持ち悪い。こんなものに転生したなら、かなり辛いんじゃないかと思った。


 いつの間にか太陽は頭の真上まで来ていた。もう昼時だろう。俺とオベリスクは川原沿いに転がっていた大きな石の上に座って昼食をとることにした。昼食と言っても朝握った塩握りだけだ。なるべく急いで移動した方が良さそうなので、焚火はやめておいた。


「しかしかなりビビってたけど、今のところ出会ったのはアルミラージュとスライムだけだよね。意外と大丈夫な感じかな」


「たまたまついているだけだろう。ウルフ系なんかはやりあえば結構厄介だぞ……いや、というか主一人で見つかってしまった場合、まともに戦ったらアルミラージュやスライムでも命をおとすかもしれんぞ」


 へいへいと言いながら川の向こう岸を見ると、また小動物なようなものが見える。先ほどのアルミラージュにも似ているが、もう一回り大きくて狐のようにも見える。額には赤い宝石のようなものがついている。


「オベリスク、向こうにいるのは?」


 オベリスクも川の向こう岸を見る。


「あれはカーバンクルだな。弱そうに見えるが魔法の使い手だ。アルミラージュやスライムと違ってケンローが戦えば瞬殺されるだろう。見かけたら逃げる……のも無理かもしれないな」


 オベリスクはさらっと恐ろしいことを言った。どうも見た目に騙されてはいけないようだ。考えてもみればこの目の前の八歳の幼女も。その気になれば俺の首などすぐに真っ二つに切断できるのだ。魔法とは便利だがとても恐ろしい。


 あのカーバンクルとかいう魔物も、俺のことを食料だと認識すれば、その場で直ぐに殺されて、あの小鹿のように解体されずとも肉塊となってしまうのだろう。


 オベリスクは塩結び一つでは物足りなそうな顔をしていたが、俺たちはとにかく先を急ぐことにした。そうしてまだ日の高いうちに海に出ることができた。


「意外にもすんなり着いちゃったね」


「うむ。順調すぎて怖いくらいだな。とっとと塩を作って早いところ帰ろう。と言っても暗くなるのも嫌だから、今日はここで一夜を明かすかな」


 とにかくまずは塩作りだ。すぐに焚火を始めて汲んできた海水を飯盒で煮沸する。濃度が濃くなって水量が減ったところで鉄板に移し替える。アルミ製の飯盒で最後まで水分を飛ばしてしまうと、穴が開いてしまう可能性があるからだ、アルミは熱には鉄ほど強くはない。


 そんな事を数回繰り返すと完成した塩はだいぶたまってきた。しかし俺はその時あることに気が付いた。


「なぁオベリスク、考えてみたら海水さえあれば塩は作れるんだから、ここで作らなくても収納魔法で海水を持ち帰って、結界の中で水分飛ばせばそれでいいんじゃないか?」


「……ホントだ。ここにいればいるほど危険だからな。なんで今まで気が付かなかったんだろう。しかし海水を大量に入れる容器はどうする? クーラーボックスとやらではたかが知れてるぞ」


「氷魔法で凍らせちゃったらいいんじゃないか? それで収納魔法使えばもう取り出すまで溶けないんだろう?」


「その手があったか!! よしさっさとやってしまおう」

 そういうとオベリスクは海の方に行って呪文を唱える。


「コオリ!!」


 すると海水の一部分は大きな長細い氷の塊となった。そうしてオベリスクはそのまま魔法を使って収納した。


「長細くしておいた方が切り出す時に便利だろう? 単なる塊だったら大変だからな」


 俺はそこまでは気が回らなかった。この魔王候補はなかなか頭も切れる。


※鉄板を使う人が増えたのは、お笑い芸人のヒロシさんの影響が大きいでしょうね。鉄板は厚ければ厚いほど、肉がおいしく焼けるような気がするんです。私は4.5mm厚を愛用しています。重いです^^;。

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