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第20話 クロスボウ

 クロスボウの弓以外の部分はすぐに出来上がった。この辺りはどんな木を使ってもいい。問題は弓の部分である。ここの弾力性で威力や飛距離が変わってくる。


 柔らかすぎてもいけないし、硬すぎてもいけない。もちろん矢をセットして折れてもいけない。目についた木はかたっぱしらから材料を切り出して試してみた。矢のほうは適当でいい。昨日切り出した箸が大きくなったようなものでも十分だろう。


 本当は尾のところに羽のようなものをつければ直進性があがるのだろうが、そこまでの精度は必要ない。オベリスクの話によれば、その魔物は大木並みの太さらしいのでどこかに当たればいい。毒魔法を使わせることが目的なので、倒す必要はない。


 十種類くらいの木を弓のところにつけて、試射を繰り返したところでかなり納得のいく材料にたどり着いた。飛距離は三十mぐらいまでなら、結構な確率で目的物に矢を到達させることができる。


 オベリスクはと言えば、小学生が工作の授業ではしゃぐがごとく、キャッキャ、キャッキャと騒いでいる。なんでも風魔法で『カゼノヤ』という魔法が似た感じなのだそうだ。もちろん今はまだ使えないらしい。とにかくある程度実用性がありそうなものが出来上がったところで、すでに太陽は頭の真上まで来ていた。戦いの前には腹ごしらえが必要だ。


 朝の焚火の燃え残りの上でまた火を起こすと、オベリスクから鹿肉を出してもらって昼からステーキだ。寄生虫なども怖いので焼き方はレアではいけない。ウェルダンである。厚く切った肉を熱した鉄板の上にのせる。


 そうして今回は粉末醤油系調味料だ。これから命がけの戦いに挑むのだ。出し惜しみは無しだ。しかし生きて帰って来れた時のために、やはりビールだけは我慢した。それが飲みたければ生きて帰ってこなければならない。


 肉は厚い分昨日に比べて火の通りが悪い。途中焼き加減を見るために二つに切ってみたが、まだ中は赤かった。牛肉ならともかく、ちょっと切り方が厚かったかと反省した。時間はかかったが、そこは鉄の遠赤外線のおかげでなんとか焼きあがった。ボリューム満点の鹿肉ステーキで英気を養い。俺とオベリスクはいざ植物型の魔物のほうへと出陣した。



 魔物の居場所はテント場からそんなには離れていなかった。太い茎は確かに大木以上の太さがあり、地面に突き刺さっている。葉とも弦とも見分けがつかないようなものが茎から多数生えている。


 そうして上部には花弁の厚い花状の部分がある。赤黒いちょっと嫌な色をしている。これはどう見ても食べられない奴だ。気味の悪い斑点状の模様もついている。ほかに手足や目のようなものはついていない。


「あいつは基本的には触らない限り反応はしない。太陽のほうを向くので、光は感じ取っているんだろうけどな」


 オベリスクがそう言った。魔物との距離はまだ四十mくらいある。それでもその姿はよく分かるのでかなりの大きさだ。


「あいつを狙ってこのクロスボウを打てばいいんだよな」


 オベリスクは頷く。


「それで矢が当たって、毒魔法攻撃を周囲に放ったその後、余が近づいてやつの地面際の茎を切断する」


 音は感知していないと思うが、一応そこからは俺とオベリスクは無言で近づいて、三十mぐらいのクロスボウの射程に入ったところで俺は構えた。相手は植物のようなものであるのに狙った腕は震えている。


「あ、基本的には動けないんだけども、瀕死の状態になると根を足代わりにして動くこともあるらしいからその時は逃げろ」


 急にオベリスクがそんな事を言い出した。そういうことは早くいってほしい。毒でやられなくても、あんな大きいものが向かってきたなら死ぬしかないだろう。


「まぁそんな細い矢で、あいつが瀕死の状態になるとも思えないから大丈夫だろう?」


 オベリスクも余計なことを言ってくれる。それは死亡フラグというやつじゃないか。ただ実際にこの細い矢で、あの大きな魔物に重傷を負わせられるとも思えない。俺はうなずくと、クロスボウの弓の曲がり状態を保っている部品に手をかけた。


 部品を抜くとクロスボウに仕掛けてあった矢は、空気を切り裂く音をあげて、魔物のほうへと飛んでいく。そうしてそれは確かに魔物の茎の部分に突き刺さった。


 口が無いのに魔物からは高い悲鳴のような声が上がる。そうして光しか感じないはずの花弁はこちら側に向くと、どす黒い霧を周囲にまき散らした。


「よし、魔法の効果は数秒間だけだ。霧が晴れたら余が出るぞ!」


 黒い霧が薄くなったところで、オベリスクが魔物のほうへと駆け出した。そうして次の瞬間魔物の茎の部分が真っ二つに……切断されていない。半分くらいは繋がったままだ。魔物は声ともつかない声をあげてその根を地面から上に出現させ、ものすごい勢いで俺のほうへと向かってきた。


 いや、お前に瀕死の重傷を負わせたのは俺じゃないだろうと、頭の中で叫びながらも俺はあわてて回れ右をして駆け出した。後ろを振り返る余裕などない。


『ズッズーンッ!!』


 背後で何やら大きなものが地面に倒れる音がした。振り返って確認してみると茎のところで真っ二つに切断された魔物とその上に立つオベリスクの姿が見えた。


「スマンスマン。予想以上にこいつが硬くてな」


 命拾いしたとほっと一安心したところで、意識が薄れてきた。何かがおかしい。そういえばオベリスクは二十m以内でなければ毒は致命傷にならないと言ったが、それは魔族の肉体での話だ。ちゃんと俺の体力も考えてくれよと愚痴ったところで、意識が途切れた。こんな事ならビールを飲んでおけばよかった。

※クロスボウは作ろうと思えば作れそうな気もしますが、物騒なのでもちろん作った事は無いです。

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