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第18話 箸

 一度大量に具材を放り込むと、煮えるまでにはしばらく時間がかかる。俺はその間に薪の中から具合のいいものを一本取って、ナイフを使って細い破片ができるようにバトニングした。そうしてその小片をナイフでさらに削って箸を作る。


 作りなれていることもあって、それはすぐに完成した。しかも選んだ材料がよかったのか、なかなか強度もあって長持ちしそうだ。俺は完成したばかりの箸をオベリスクに渡すと、それまで使っていた割りばしを焚火の中に投げ込んだ。


「改めて考えると、木という材料は本当に便利だな。形も簡単に変えられる割には、それなりな強度もある。それでいてこうやって燃えてしまえば跡形もなくなるんだからな」


 オベリスクが燃える割りばしを見ながらそう言った。


「うん。俺の世界でも昔から道具の基本は石と木だったよ。そこに金属と、もっと後になって油から錬金したものを使うようになった感じかな。新しい材料が優れているとも限らない。まぁテントや風呂の防水なんかには、便利に使わせてもらっておいてこういうのもなんだけどね」


「……これはケンローから余への初めての貢ぎ物だな。うん。大切に使わせてもらうとしよう。……お返しに主にも何か与えられるといいんだが、何分余には今は何も持ち合わせがないからのう」


 オベリスクは先ほど俺が作った箸を見ながらそう言った。


「何言ってるんだよ。オベリスクがいなかったら魚も肉も手に入らなかったし、クーラーボックス内の食材は傷んでしまって、風呂にも入れなかったろう。何よりも孤独でつらかったと思う」


「そのキャンプというのは一人になりたくてやっていたのであろう? それなのに孤独を恐れるとは変わったやつだな。 でもまぁなんとなくわかる気はする」

 そう言ってオベリスクは笑った。


 いつの間にか鍋の具材に用意したものはすべて使い切ってしまった。あとは飯盒の中にある分だけだ。当然日本酒も無くなった。俺は荷物の中からインスタント麺を取り出す。よくある袋入りのインスタントラーメンではない。棒ラーメンという、乾麺だがそうめんのように束になっているラーメンだ。


 この系統のインスタントラーメンは、荷物としてコンパクトで収まりがいいので、山に登ったりキャンプをする人間は好んで持ち歩くことが多い。非常食にもなる。


「それじゃあ締めにはいりますか」


「締め? 締めとはなんだ?」


「最後の仕上げって意味だよ。 これは人類最大の発明かもしれないと思っているインスタントラーメンというやつだ」


 俺は飯盒の残り汁に水を足すと、火吹き棒で焚火の火力を上げた。ぐつぐつと煮立ってきたところで麺を投入する。この手のラーメンは二食分がワンセットになっているが、一束だけにしておいた。


 麺は細いのですぐに火が通る。そうしたら鎖を上にあげて飯盒を火から遠ざけた。そうして粉スープを一つだけ入れてかき混ぜた。そうこれもラーメン最強と言われる豚骨スープだ。豚骨の強い匂いが周囲に漂う。


「なかなかに野性的な香りだな。これは何の匂いだ」


「豚骨と言って、豚の骨をベースにしたスープだね。これを発明した人を俺は尊敬するよ」


 スープを溶かしたところで、よそい分ける。自分はまあ食べ慣れた味ではあるが、当然オベリスクは驚嘆する。それはそうだろう。人生初めての豚骨スープなのだ。


「なんだこれは!! 今までのスープも大概そのうま味とやらが幅を利かせていたが、これはまた更にその一段上を行ってるじゃないか! 豚の骨からこんな……なんであったか……そう、だしが出るなんて話は知らなかったぞ」


 そう言ってから今度は俺の見よう見まねで麺をすする。今度は彼女は黙ってしまった。


「……なぜ穀物を加工して細長くする必要があるかと思えば、成程これでスープと一体にして味を合わせようというのだな。お前の住む世界には変態しかいないのか? 主がこの世界に転生してきたというなら、余も主の世界に転生できるのだろうか? これは魔法を超えているぞ!!」


 なかなか大げさだなと思ったが、俺が初めて豚骨ラーメンというものを食べた時も、確かに衝撃を覚えた。豚骨スープには確かにその力がある。


「塩豚骨ぐらいならこの世界でも再現できるかもしれないよ」


「この森には豚はいないからな……しつこいようだがやはりこれは森を出る必要があるな……。明日から本格的な準備を始めるとしよう」


 食後はお茶と行きたいところだったが、ストックが随分と少なくなってきた。仕方がないので食べ残したスープをお湯で薄めて二人で飲んだ。しかしそれすら抜群にうまかった。


 屋外で飲み食いすれば何でもおいしい。しかしそれはソロキャンプ以外では誰と一緒に飲み食いするのかがとても重要である。そうして二日目の夜は更けていった。


※キャンプ時は暇なので、ナイフとそこらに転がっている木材で何かしら作ったりします。

箸なんかはその代表ですね。しかしながら杉などの針葉樹で作ったものはすぐにダメになります。

広葉樹系の堅木なんかを見つけた時はチャンスですね。

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