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第16話 露天風呂

 「よし、じゃあこれと草をもって河原に行こう」


 俺は地面に出てきた柱状の粘土と、積みあがっていた草を持って先ほど作った風呂のベースのところに持って行った。そうして粘土と草を混ぜて、ブルーシートが届いていない石の隙間に詰めていく。


「なるほど、それで石の隙間を埋めていくんだな」


 そう言ってオベリスクも一緒に作業を始めた。風呂桶といってもだいぶ小さいのですぐにそれは完成した。


「うん、汗もかいたので早速風呂に入るか」


 そう言ってオベリスクは俺の返事も聞かぬ間に、また魔法で出来立ての風呂桶に川から続く溝を作って水を流し込む。そうして火魔法を使ってまた溜まった水をお湯に変えた。


「でもこの量じゃ昨日と変わらないな」


「まぁまぁ入ろう入ろう」


 そういうと俺は川へと続く溝の風呂桶との接続部分に石を積んでふさぐと、服を脱いでお湯の中に飛び込んだ。するとお湯のかさは俺が入った分だけ上に上がってきた。


「なるほど防水性が上がったので、誰かが入ればその分水位があがるんだな」

 そう言ってオベリスクも服を脱ぐと風呂の中に入ってきた。


「うむ、確かに昨日と違ってすぐにはお湯が抜けてはいかないな。川の水も底から入ってきていないようだし、これなら結構長い時間気持ちよく浸かっていられそうだ。しかし止水の為の粘土の方は少しずつ水に溶けだして濁って来るな」


「そこは少し火で熱を加えた方がいいかもね。でも今は下にブルー……油で作った膜を敷いているのでまた今度かな。しかし日の高いうちから風呂に入るなんて最高の贅沢だな。これもオベリスクの魔法のおかげだ。でね、ちょっと気になる事があるんだよな……」


 そう言いかけてやめた俺にオベリスクが聞いて来る。


「なんだ、なんでも申してみよ。主と余の中ではないか」


 まだ昨日会ったばかりだが、なぜか俺もオベリスクとは旧知の仲であるような感覚になっていた。これがキャンプという魔法なのだろう。


「えーっと、雷魔法がイカヅチ、火魔法がホムラダマ、土魔法がイシツチだったかな……ほかの言葉は意味は理解できても違った音に聞こえるんだけども、魔法の名前は音と意味が一致しているように感じるんだよな。なんでだろう?」


「ほう、それは興味深いな。魔法の言葉だけがお主の世界の言葉と共通しているというのか?」


「今もその魔法って言葉だけ違和感が無いんだよ。もう一回『魔法』って言ってみてくれるか?」


 オベリスクはこちらを向いて口の動きがよくわかるように


「ま・ほ・う」と言った。


「やっぱりそうだ。その言葉は音と意味が一致してる」


「なるほど、主の世界とこの世界は全くの異世界ということも無いようだな……そもそも植物や動物も一緒ならビールとやらも同じく存在しているのだからな……まぁしかし考えても仕方がないのではないか? 確かにそこに元の世界に戻るヒントが隠されているのかもしれんがな」


 オベリスクは少し寂しそうな表情を浮かべた。


「毎日キャンプして過ごすなんて最高だから、別に帰りたいとも思ってないけど、知的好奇心てやつは止まらないんだよ」


 そんな話をしていると徐々にお湯の量は減って、底からしみだしてくる川の水で温度も下がってきた。


「さてそろそろ上がるか。しかし昨日よりはいいがもう少し長時間ゆっくり浸かれる温泉が欲しいな……先ほど粘土を感知していて気が付いたのだが、このあたりもかなり深くには温泉の水脈がありそうなのだ。但し今の余の魔力では感知はできても、それをどうこうはできそうにないがな。そのうちこれもまた掘り出す方法を考えねばならんな」


「温泉があるのか……地形によっては近くに自然に出てきているところもあるかもしれないな。でも結界の外だったらどの道行くのは難しいか……」


 風呂を作るのに結構時間がかかったので、湯上りに体を拭いて服を着た時には日は傾きかけていた。俺とオベリスクはとっととテント場に戻って焚火を始めた。

「焼肉もうまかったけど、今日は汁物でも作ろうか?」


 そう言って俺は持参している小型の飯盒の中に、少し大きめに切った鹿肉と昨日オベリスクが掘った方の自然薯も細かく切って入れて、水を入れて焚火の上で三脚から吊るした。味付けは粉末のだしの素と醤油、それにインスタント味噌汁が一袋だ。煮立ったところで、そろそろ鮮度が落ちてきた小松菜も加える。


「うーん、自然薯だけじゃなくて少しは野菜も欲しいな……キノコは怖いしな……」


 興味深そうに俺の調理の様子を見ていたオベリスクが聞いてきた。

「野菜というのは植物だよな。そんなもの食べなくても死にはしないだろう。それよりなんでキノコが怖いんだ。あれはあれでうまいだろう?」


「キノコは見分けが難しいからね。毒にでもあたったら大変だし……」


「ああ、魔族なら問題ないが、人族は毒には弱かったな。しかしならば鑑定魔法を使えばいいではないか……あ、ケンローは魔法が使えないのか」


「魔法ってホントに何でもできるんだな。それって練習すれば俺にもできるようになるの?」


「うーん、人間でも魔法を使えるものはいるが、ケンローにはなんていうか魔力の流れを一切感じないのだ。今日捌いた小鹿と一緒だ。魔力が無ければいくら練習しても魔法は使えないだろう。スキルは別なんだけどな」


「そのスキルっていうのは俺にはないのかな?」


「あるのかもしれないが、余の鑑定魔法ではそこまでは分からぬ。魔法ではなく鑑定のスキル持ちなんかになら分かるだろう。魔族にも鑑定スキルを持った奴がいるぞ」


「その魔族にはどこに行けば会えるのかな?」


「まぁ確実なのは魔王城だな」


「……無理だな」


「そのうちにそういう人間や魔族に会うこともあるだろう」

 そう言ってオベリスクは俺の肩をポンポンと叩いた。


※野性のキノコは本当に危険だと思います。私も手を出したことはないです。

かなりのベテランで地元の人でも、たまに当たってますよね。

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