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第15話 ビール

 結論として、今回調味料は粉末しょうゆベースのものではなく塩と胡椒だけにした。


 はっきり言って粉末しょうゆベースのやつは、かけるとなんでもおいしくなってしまう。だから多用しがちなのだが、すべての味が似てしまうという弱点もある。間違いはないのだが、折角のジビエなのだからここは素材本来の味を楽しむのが礼儀というものだろう。


 先ほどまでオベリスクの解体の様子を見て食欲が無くなっていたのに、肉を焼く音を聞いたところで、そんな話はどこかへ飛んで行ってしまっていた。


 オベリスクのほうを見ると、彼女は焼いた先からどんどん食べている。最初は焼けた肉を半々にして分けていたのだが、三枚目からは二対八ぐらいに切って、八割を渡すようにした。いくら魔王候補とはいえ八歳児同様の体のはずなのに、どこにそんなに入っていくのか不思議であった。


「ケンロー、シュワシュワは温存なのか? これは今飲まないとだめなんじゃないか?」


 そういう彼女の提案を否定できるほどの理性を俺は持ち合わせていなかった。クーラーボックスからキンキンに冷えた缶ビールを一本取り出すと、オベリスク用のシェラカップと自分のカップに注ぎ乾杯をする。


「今日は何に乾杯なんだ?」


「鹿肉に乾杯だね!」


 そうして二人でビールを一気に飲み干してしまった。


「これは塩より先にシュワシュワの心配をした方がよさそうだな」


「考えたんだけどさ、魔法で収納している間は腐敗が進まないなら、人間の街でビールを買って魔法で収納しておけばいつでもキンキンの生ビールが、気の抜けてない状態で飲めるんじゃないか?」


「……ケンロー、主は天才か? その発想はなかったな。人の街でビールとやらを買えば毎日心おきなく飲めるわけだな。魔王の地位なんぞには興味はないが、やはり森を抜ける必要はありそうだな」


 昼食が終わったところで、一旦俺は食器やらなんやらの片づけを始める。近くに川が流れていると本当に便利だ。洗い物がはかどる。キャンプ場ではそんな事はタブーだが、この世界でなら問題は無いだろう。


 オベリスクはといえば、先ほど解体した鹿の皮の内側から脂肪などをそぎ落としているようだ。ナイフではなく指先でちょこちょこと魔法を使っているように見える。


 雷魔法や火魔法と違って、昨日丸太の木を切るときには呪文を詠唱していなかった。風魔法の一種なのかなと思ったが、きっと詠唱が不要なくらいに使い込んでいるのだろう。その気になれば俺はあっという間に寝首をかかれてしまうわけだ。これは本気で怒らせるような事はしない方がよさそうだ。


「オベリスク、その皮はどうするんだ?」


 俺は聞いてみた。


「ああ、いつまでもこの服一枚ってわけにもいかないだろう。布は手に入らないから動物の皮で服を作るんだよ。ケンローにもパンツぐらいは作ってやるぞ」


 鹿皮のパンツの履き心地は想像できないが、なんとなくオベリスクに女子っぽさを感じてしまった。


「じゃあ俺は風呂を作っておくよ」


 俺は昨日風呂を作ったあたりに、大きめの石を選んで集めた。昨日の窪みはまだ残っていたが、単なる大きな水たまりのようになっている。その水たまりを囲むように大きな石を積んでいく。昔よく作った川をせき止めるダムのようなものだ。


 そうしてあらかた石が積みあがったところで、窪みの底の方の石をもう少し掘り下げて中の小石を外に放り出す。その後底にブルーシートを敷いた。ブルーシートは180㎝×180㎝しかないので、底から立ち上げて縁部分まですべてをカバーすることは無理だが、少なくとも底の部分から水が漏れたり入ってきたりすることは無くなるだろう。そうしてブルーシートの上にまた、大き目の石を敷き詰めた。


 そこまでできたところで、今度はテント場のほうへ行って草刈りだ。鉈を使ってテント場の周りの草を刈っていく。ある程度刈れたところで、今度は周囲に粘土質の土がないかを探し回る。オベリスクは鹿の皮のなめし作業が満足のいくレベルまで行ったのか、こちらへ様子を見に来た。


「なんか探しているのか?」


「ああ、土の中でも粘り気のある粘土ってやつなんだけどね」


「なるほど、ちょっと待て感知してみる」


「そんなこともできるのかい?」


「土魔法の応用だな。言ったであろう、魔王の血族は魔法はなんでも使えるのだ……ま、今はすべてしょぼいけどな」


 そう言ってオベリスクは目を閉じて地面にそっと右手のひらを置いた。しばらくすると地面が持ち上がったかと思えば中から土が柱状に出てきた。


「ちょっと深かったんで自然薯のように上に出てきてもらった」


 オベリスクはこともなげに言うが、流石は魔王の血族といったところか……しかし世界がどうこうの存在を、こんなしょぼい作業に付き合わせて本当にいいんだろうかと、若干申し訳なくも思った。


※粉末しょうゆベースの調味料で一番有名なのは「ほりにし」だと思います。但し少々お高いですし、ちょっとだけ試してみたいという人にはイオンで買える「醤油が香るブレンドスパイス」をお勧めしておきます。

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