第12話 就寝
寝袋はフルオープンにできる封筒タイプだったので、開いて掛布団代わりに使う事にする。
折り畳み式のウレタンマットは流石に二人で寝るには小さすぎるので、そこは彼女の寝るところの下に敷いて、自分はアルミシート製のシェラフカバーを下に敷いて、その上に着替えの衣類やらを薄く敷き詰めた。
下は落ち葉が層になっていたので、これでも何とかなるだろう。マット上に乗ったオベリスクは興味深そうにマットを押して固さを確かめている。
「不思議な素材だな。丈夫そうなのに柔らかい。表面の凹凸もクッションの役割をしているのか……裏側は銀が貼ってあるのか?」
「それはアルミという金属だよ。それが熱を反射させるんだ。マットの素材は昼に話したのと同じで、油を元に俺の世界の錬金術で作ったんだ」
「お前の世界は油でなんでも作ってしまうのだな? それなのに灯りには油を使わないのか?」
「いや、もちろん油を使う明かりもあるんだけどね。俺は横着してこれを使ってるんだよ。軽くて小さいからね」
小さくても発電用の太陽光パネルとモバイルバッテリーは持ってきているので、充電式のLEDランタンは半永久的に使えそうだ。但し使い勝手のいいLEDヘッドランプは電池式なので、これは今の電池を使い切ったらもう点かなくなる。だからそちらは当分温存すべきだろう。
「うん。寝心地は抜群だな。この上にかけるふわふわの布も気持ちがいい。なるほど、睡眠などただ寝ればいいと思っていたが、これはこれでいい感じだな」
そう言ったあとオベリスクは黙って俺の方を見た。
「しかし男と女が一つ屋根の下で夜を過ごすというのは、色々と問題があるのではないか? 川でも申したがなにせまだこの体だからな……まぁどうしてもというならなんとか魔法を使って工夫してみるが……」
「そういうのもういいから、……あと十年ぐらいしたらまた考えさせてもらうよ。俺はもうちょっと焚火の様子を見てから寝るから、オベリスクは先に寝てていいよ」
「うむ。ではお言葉に甘えて」
そう言って彼女は目をつむると、俺がテントの外に出る前に寝息を立て始めた。どうも寝つきの方は抜群にいいようだ。それが魔族共通の物なのかどうかは分からない。
テントの外に出ると、焚火はまだ緩やかに燃えていた。多分これは広葉樹系の木だったのだろう。ゆっくりと長時間燃え続けている。先ほどまですっかりオベリスクの専用席になってしまっていた椅子に座って炎を眺める。
木々は少し開けているので、頭上には満天の星空が広がっていた。星座には詳しくないのでよくは分からないが、自分の知っている夜空とは少し違う気もする。しかし天の川は見えている。月はいまがたまたまそういう時期なのかもしれないが、どこにも見あたらない。
異世界というのは、平行世界にある地球というイメージだったが、別の天体という事なのだろうか? それにしては生態系が似すぎているような気がする。
いくら考えても答えは分かりそうもなかったので、俺はただ目の前の焚火を見ながら何も考えない事にした。それは元の世界でしていた事と何ら変わりはなかった。
※寝袋には大きく二種類があります。
封筒型とマミー型です。なれていない人はマミー型は中で動けないので不快かもしれません。でも断然保温性がいいです。薄手のマミー型と封筒型を両方持って行って重ねるなんて技もあります。




