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過労死したら異世界転生  作者: とし
異世界と出逢い
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マイナルの闇2


俺は孤児だった。

気づいたらスラムで必死に生きていた。


それでもそれなりに楽しかった。



あの日までは。





「いや!お兄ちゃん!助けてよ!!」


「待て!!連れて行くな!!」


スラムの妹分が悪い噂ばかりの貴族に見初められて連れていかれそうになった。


そしてそいつを殴った。


それが始まり。







「お前は今日から6番だ。」


「な、何を!?や、やめろ!!!」


「口の利き方がなっていないな・・・・」



ジュウウウウウウウウゥゥ・・・



「ああぁあああぁあ!!!!」





胸に押された焼印の痛みは決して忘れられない。





「躾がなってないぞ!!!」


「申し訳ありません!打たないでください!!」





鞭の痛みに怯え、全てに怯え続ける日々。




「・・・っ!」


「醜い声を出すんじゃない!!!」




鞭で打たれようと、蹴られて骨が砕かれようとも耐えた。


それなのに、




「・・・足が折れたのか。なら、お前はいらん。」


「お、お待ちくださいませ!!!どうかご慈悲を・・・!!!」




主人の暴力で折れた足のせいで、働くことが困難になった。


町の外に捨てられては、奴隷である自分は一人で街へ入れない。


ボロボロの体では、いつ魔獣に食われるかもわからない。


働けない奴隷は死ねということだった。







主人の馬車が小さくなって行く。


遠くなる意識の中で、白い光が見えた。


ああ、天国は住みやすいところかもしれない、そう思った。









匂いがした。


食べ物の香りだ。


天国にも食事の概念はあるのだと思いながら、ゆっくりと目覚めた。





「・・・・・・・?」




目覚めるとそこは普通の部屋のようで、自分は今まで寝たこともないような柔らかいベッドの上だった。


隣にももう一つベッドはあるが、そこには誰もいない。

しかし、誰かが寝ていた形跡がある。




「傷が・・・」



そこで自身の体の異変に気付いた。


今まで何年も何年も付き合い続けた痛みがない。

腕を見ると、自分のものかと疑うくらい綺麗な肌だった。



やはりここは天国なのか、そう思ったときだった。




「あ!起きたのね。体は?大丈夫?」


「・・・・・・女神様・・・・・?」


「はい?」








* * * * *






開口一番の女神様にドン引きながら、現状を伝えた。


ようやくここが天国なんぞではないと理解したようだ。




「とりあえず、ご飯が冷めちゃうわ。いただきましょう?」


「は、はい・・・」



朝食が置かれたテーブルにつく。



「・・・・・・ねえ、」


「(ビクッ!)なんでございましょう?」


「・・・ご飯食べるよ・・・」



獣人の彼はあろうことか、床に座り、なつきを怯えた目で見つめる。



「立って。ここに座って。」


自身の目の前の席の椅子をさしそういうと、彼は躊躇いながらもおどおどと席に着く。


「そのパンとスープはあなたのよ。さ、食ベましょう!」


怯えながらも、なつきがスープに口をつけたのを確認して、それを真似るように、スープを飲み始めた。


「!」


「美味しい?」


その問いに頷くと、彼は勢いよく、スープを飲み干し、パンにかじりついた。

だんだんとその瞳には涙が溢れ出した。




ーーー辛かったんだ。きっとろくにご飯も食べれなかったんだ・・・


彼のやせ細った体がこれまでの生活を物語っていた。




「・・・ゲホッ!」


「ああ〜、がっつくから・・・・はい、お水。」


勢いよく食べたため、喉に詰まったのだろう。

水を差し出すと、それで流し込む。


朝食を平らげた彼はおずおずとなつきを見つめた。

なつきも食べ終わり、彼がやたらと見ていることに気づく。

その目には先ほどよりかは収まったものの涙が溜まっていた。



「はい、これで涙拭いて。」



席を立ち、備え付けのタオルを渡すと、彼は途端に泣き崩れた。


どうしていいかわからなかったので、とりあえず、背中をさすってやる。


前の世界で幼い時に、私が泣いていたら母がよくこうしてくれたな、なんてことを思った。




「あ、あなた様の、お名前を伺ってもよろしいでしょうか・・」

「私はなつきよ。あなたは?」


そういえば名前を聞いていない、と今更気がついた。


「・・・6番」

「ロクバン???え・・・6番!?」


そんなのって、、名前じゃない!!!


「名前、ないの?」

「・・・遠い昔、呼び名はありましたが、忘れてしまいました・・・・」


名前を忘れてしまうような日々を彼はおくってきたのかと絶句した。




「じゃあ・・・今からあなたはアルバ。そう名乗りなさい。」


「!!!」




これが、私とアルバの出会いだった。


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