マイナルの闇
「・・・ん?」
シルバーベアの魔石を持ちマイナルに向かっている途中だった。
「どうしたんだろ・・・」
森を出てすぐ、マイナルの南門が見えたところで、何やらもめているような声が聞こえた。
「お許しくださいませ!!」
「うるせえ!!使えねえクズはいらねえんだよ!」
上流階級っぽい小太りの男と、汚れたボロボロの衣服を着た男がいた。
ーーーあれは・・・・・・もしかして、奴隷・・・?
どうしたらいいか分からずに、気づかれない程度の距離をとって様子をみる。
この世界には奴隷制がある。知識として知ってはいても、実際にみるとあまりいい気はしない。
しかし、それに対して意見できるような立場ではない。
奴隷制に反するということは、王政に楯突くことと同義だからとメイに以前教わった。
どんなに理不尽に思っても、勝手に誰かの奴隷を解放したりなんてことは窃盗に当たるため、耐えるしかない。
ことが終わるまで、ここで待とう、そう思ったときだった。
「・・・っ!!!」
男が奴隷に対して鞭を振るったのだ。
何を話しているかまでは分からないが、奴隷の方は苦しみ、許しを乞うているようだった。
なつきが必死に耐えていると、小太りの男は奴隷を置いて馬車に乗りマイナルへ行ってしまった。
行ってしまった馬車を見つめたかと思うと、奴隷の男はその場に倒れた。
「あ!!!」
思わず奴隷の元へ駆け寄った。
「う・・・」
「意識がない・・・それに・・・・・」
ーーー身体中にひどい傷がある
奴隷は獣人のようで、犬のような白い耳と尻尾が生えていた。
ボロボロの衣服からはひどい怪我が伺えた。おそらく先ほどの男の鞭によるものであろう。
「"ノエル"!」
なつきがそう唱えると、獣人の傷がみるみる治って行く。
先ほどまでは険しかった表情が和らいだが、まだ意識は戻らないようだ。
「さて、どうしようか・・・」
おそらく、何らかの問題があって主人に捨てられたのだろうと当てをつける。
奴隷は「物」と同じ扱いだ。
捨ててしまえば、誰かが拾わない限り、たちまち路傍の石となる。
そう、誰かが拾わない限り。
「"シルキー"」
なつきは見捨てられなかった。
今度は攻撃用ではない風が舞い、獣人の体を浮かせる。
これでマイナルまでとりあえず運ぼう。
* * * * *
「取り敢えず一泊。二人分で。」
夜の21時、なつきは宿屋にいた。そばには意識のない獣人がフヨフヨと浮いている。
あてがわれた部屋のベッドに獣人を寝かせる。
「・・・長い1日だった。お風呂入りたい・・・・・・」
風呂場で疲れを癒しながら、1日を振り返る。
あのあと、検問を通る際、ついでに身分証を登録した。
初めにマイナルに入った門とは反対側であったが、それでも大丈夫だそうだ。
なぜ急いで登録したのかというと、この獣人を街に入れるためである。
奴隷は犯罪を犯す率が高いため、一人では街へ入ることはできない。
しっかりとした身分を持つものと一緒でいなければいけなかったため、急いで身分登録を行い、獣人を連れてギルドへ向かった。
傍に獣人を浮かせて依頼達成の報告を行う女は奇怪であっただろう。
本当ならば先に宿を取りたかったのだが、なんせお金がなかった。
だからギルドで依頼報酬100フェントを受け取った。
そして宿をとった。
「ん〜、癒された。あがるか・・・」
体を拭き、用意してあった寝巻きに着替え、ベッドへ向かう。
二つあったベッドの一方で眠る獣人を確認して、自身も眠りにつく。
ああ、今日はぐっすり眠れそうだ。




