旅立ち
季節はあっという間に過ぎ去り、早いもので、なつきが転生してから15年が経とうとしていた。
今彼女は18歳、この世界ではすでに成人として認められる年だ。
毎日勉学に励み、様々なドラゴンから、魔法を学んだ。龍の峰を走り回ったおかげで体力もだいぶついている。
そしていよいよ、龍の峰を出て、なつきは独り立ちしようとしていた。
「なつき様、いつでも戻ってきてよいのですからね。」
「うん。たまには里帰りするよ!メイ、みんなも、今までありがとう。」
15年と言う歳月はこの地を故郷だとみなすには十分な時間だった。
いざ旅立とうとなると、少し視界が潤んだ。
「ドラゴンの加護がありますから大丈夫だとは思いますが・・・道中お気をつけて・・・!!」
「みんなもね。何かあったら知らせて。すぐに駆けつけるから!」
そうしてなつきは歩き出した。
「じゃあ!また!!!行ってきます!!!」
* * * * *
龍の峰の裾には樹海が広がっていた。すぐ近くに最高位精霊であるドラゴンがいるためであろうか、魔獣はほとんどおらず、大小様々な精霊が多く生息していた。
精霊と魔獣は似て非なるものだ。
精霊の魔力が暴走すると、それは精霊ではなく魔獣へと変わる。
魔獣にると、途端に善悪の区別がつかなくなり、破壊衝動に襲われる。
龍の花嫁はドラゴンの魔力暴走を防ぐ役割がある。
つまり、至高の魔力をもつドラゴンが魔獣へと変わるのを防ぐのだ。
魔獣になったドラゴンほど恐ろしいものはない。
1体で軽く一つの国を吹き飛ばすくらいの力を持っている。
それに対抗できるものはほとんどいないだろう。
『なつきー、どこいくのー?』
「ハツェルホルティ!」
樹海をスイスイ突き進むなつきに声をかけたのは木の妖精。
手のひらほどの大きさの人の形をとっていて、頭にまりものような帽子をかぶっている。
樹海の妖精の中には龍の峰にいたなつきを知っている者が多くいた。
『こっちが近いよ!』
「ほんと!?」
妖精に案内され、ハツェルホルティ王国へと向かう。
龍の峰はどの国にも属さない。しかしその近隣にはいくつか大国があった。
ハツェルホルティ王国もその一つ。
多種族からなる国家で移民にも寛容であるため、まずはそこで身分証を確保する必要があった。
これまで龍の峰を出ずに、勉強付の日々を送っていたため、知識だけはある程度蓄えてある。
『ほら!あそこが端っこの街だよ。』
「街!!ほんとだ!ありがとう!!」
妖精と別れ、ハツェルホルティ最北端の街マイナルへ到着する。
国境の町なだけあって、なかなか立派で、警備の兵も多くいた。
ということで、門のところで身体チェックを受けなければいけない。
女性の係のものが現れて問う。
「身分証はありますか?」
「いえ。孤児なので持っていなくて、これから取得するところです。」
転生して、ドラゴンに育てられて〜とは言えないため、あらかじめ考えていた理由を話す。
孤児で、下働きをする身分証を持たない者は珍しくなかったため、特に不信にも思われない。
「わかりました。では、明日までにマイナルで身分証を発行して再度ここにいらっしゃってください。期限をすぎますと、強制的に追放措置をとることになるので、お気をつけください。お名前と魔力の登録だけ先にしていただきます。」
「はい。えー、名前はなつきです。」
そうして、女性から渡された水晶玉のような魔具に魔力を少し注入する。
元の世界でいう、指紋のような者だ。
こちらでは、指紋を持たない種族もおり、その上、魔法で変えられる可能性も大いにあるため、誤魔化しの効かない魔力でセキュリティーチェックをすることが多い。
と、知ってはいたけど、初めての体験にワクワクしながら登録を行った。
「はい、仮登録完了となります。常時受付はできるので、身分証だけ忘れずにお持ちしてくださいね。」
「わかりました。」




