開幕!
全体で約1ヶ月にもわたる世界で最も盛り上がるイベントの一つであるギルドゲームがついに開幕した。
なつきは今日、王都のスタジアムをアーサーと共に訪れていた。目的は、冒険者ギルドゲームのソロ戦だ。
エルランドだけではなく、アルバも参加登録をしたらしい。参加人数はかなり多く、予選の選考は大変そうだ。
競技内容は、約20人が一斉に戦い、20分後に最も多くのポイントを稼いだ2人だけが本戦であるトーナメント戦に出場できる。ポイントは、参加者に自分が受けたダメージ・与えたダメージを自動で計算する魔法がかけられているらしく、時間が経てば勝手に勝者がわかるらしい。
「アルバとエルが違うブロックでよかったね。」
「ええ。本当に。本戦で二人が戦うところを見てみたいですね〜。」
呑気に客席から試合の開始を待つ。右手にジュースを抱え、準備はバッチリだ。ちなみにアーサーが取ってくれたこの席はかなりいい席のようで、すぐ近くにフィールドがあるが、土埃や攻撃が飛んでこないように見えない結界が貼ってあるらしい。しかし臨場感はどの席よりも感じることができるだろう。いわゆるVIP席というやつで、個室になっており、他の観客と鉢合わせることもない。フードメニューも頼み放題だ。
流石に申し訳なく思って、アーサーにお金を払おうとしたが、入賞できなかったらいただこうと言われてしまって、どうしようもなかった。
第1試合が始まり、ギルドゲームの激しさを痛感した。もっとお祭りのようなものを少しだけ期待していたのだが、予想以上にガチンコバトルだった。筋骨隆々の男たちが投げ飛ばしたりされたり、流血もザラにで、みていて恐ろしかった。
「こ、こわ・・・!」
「ははは。団体戦よりもやっぱり激しいなあ。まあ死にはしないから大丈夫だよ。」
この世界には魔法があるからなのか、怪我に対する恐怖心が前世よりかなり少ない。いくら治るといっても、呑気すぎやしないかと思うこともしばしばだった。
「おや、終わったね。」
「次、アルバですね。大丈夫かな・・・・」
アルバは第2試合だ。フィールドに現れる彼を見つけた。いつもと同じような顔をしているが緊張はしていないのだろうか。なんだかこっちの方がハラハラしているようだった。
「アルバーーーー!!頑張ってーーー!!」
大きな声でアルバに呼びかけブンブンと手を降る。すると彼はこちらに気づいたようで、少し頬を染めて照れ臭そうに小さく手を振り返した。
しまった。声が大きすぎたかな?恥ずかしく思ったかもしれない。・・・まあいいか。
『それでは第2試合・・・・・はじめっ!!!』
審判の試合開始の合図と共に、ウオオオと戦士たちの雄叫びが響く。なぜだか第1試合とは盛り上がりが違う。
なぜだろうとアルバが活躍する様子を眺めながら考える。
「うーん、アルバは運が悪いね。クリスと同じ組みだなんて。」
「クリス?」
誰だそれは、と思って注意深く参加者たちを見ていると確かに1人やたら強い人がいる。素人目に見てもわかるのだ。その実力はかなりだろう。
あれ、というか見たことある。いや、知ってるぞ、あの人。
「クリスって、ギルドマスターですか!?出ていいんですか?主催者じゃないの!?」
あの人はハツェルホルティの冒険者ギルドマスターのクリストハルト=バーナーではないか!?
ギルドゲームってギルドが主催者じゃないの!?出ちゃうもんなの!?
「ギルドゲームは我が国の王族が主催しているんだ。私たち貴族も運営に携わるんだよ。だからこうして自領は人に任せて王都にきているんだ。」
「あ、そうなんですね。・・・てかクリストハルトさんがほぼ勝利確定ってことは、残る枠はあと1人!?アルバ大丈夫かなあ・・・・・」
「私が見た感じだとうまく攻撃も避けているし、ポイントを稼いでそうだけどね。」
だといいんだけど・・・・・
おそらく本人よりドキドキしながら戦況を見守る。
『タイムアーーーーーップ!!!!!!!それでは皆様!ボードをご確認ください!!!!』
スタジアム中が歓声に包まれた。
1:クリストハルト=バーナー 36pt
2:アルバ 28pt
「やっぱりクリスが一番だ!」
「2位の子、初めて見るわ。」
「3位以下はザルだがなかなかいい試合だった。」
色々な声が聞こえてくる。アルバがこちらの観客席に向かってきた。
「あ!お疲れ!おめでとーーー!!」
「なつき様たちが応援してくれたおかげですよ。」
優しく微笑むその表情からは、とても先ほどの激闘を戦い抜いたとは予想がつかない。
「怪我は?治すよ?」
「擦り傷だけですが・・・・お願いしてもいいですか?」
「うん。あとに響いても嫌だしね。・・・"ノエル"!」
早速回復の魔法を施すついでに生活魔法で体を綺麗にしてあげる。
「よし!OK!」
本日はアルバの試合しかないため、アーサーとともに屋敷へ帰った。
「そういえばエルは?」
「まだ試合をどこかで見ているんじゃないかな?毎回ダークホースが現れるからね。自分のためにチェックしているのだと思うよ。」
「そっか。それも戦いのうちってわけかぁ・・・・。でも今回のダークホースはきっとアルバだね!」
その日の夕食時に帰ってきたエルランドに、本日の成果を尋ねてみると、特に例年通りだったという。
「アルバが一番の例外だろうな。」
「ほら!やっぱり!」
「?」
自分がいないときにどんな話をしていたのかわからないため、エルランドは不思議そうな顔をしていたが、察したのだろう、「油断するな。」といつものぶっきらぼうな口調で釘を刺した。




