複製の魔法陣4
5つ目の石柱に魔力を流し終えた頃にはエルランドはもう限界だった。
それでも、そこでわかった原因には戦慄した。
今げんざい、二人はアーサーの執務室にいた。
「お疲れ様。エルは・・・なんというか、随分と疲れているようだね・・・・」
一体何をさせたんだろうとアーサーは不審に思ったがあえて追求しないでおいた。
アーサーの前に屋敷の地図を広げてなつきは解説を始めた。
「ここの、裏庭の西にある石柱に描かれた魔法陣が欠けていたみたいです。書き足しておいたので、もう結界に不備はないはずです・・・・・・」
「そうなんだ。ありがとね。・・・・・成功したわりには、浮かない顔をしているね?」
魔法陣は問題なく復元できた。まあ、なつきの力があってこそであるが。そこは問題ではない。問題は、魔法陣が欠けていたという事だった。
「・・・・・魔法陣一つ一つには強固な防衛の術式が組み込まれていたから、劣化とかちょっとやそっとの衝撃じゃかけるわけがないんです。だから・・・その・・・」
「人為的なものというわけだね?」
予想していた範囲内とでも言いたげな顔でアーサーは言い放った。
「思い当たる節があるようだな、アーサー。」
「・・・・誰かが壊したならば、私が王都にいた隙にって事だね。まあ、私には敵も多い。思い当たる節はいくつもあるが・・・・・」
「お前最近、王城に出入りしているという噂を聞くぞ。気をつけるんだな。」
「ああ、わかってるよ。」
「???」
一人状況を把握しきれないなつきは困惑の色を浮かべた。おそらく権力抗争の話であろう。貴族というものは大変だな、なんて呑気に考えていた。
「ところでなつき、報酬は何がいい?これほどの働きができる魔術師というのもなかなかいないだろう。欲しいものがあるなら遠慮なくいうといい。」
「え?報酬・・・・?でも、アーサーさんにはおうちまで貸してもらってるし、むしろ家賃がわりにって感じだったんですけど・・・・・」
現在のなつきは王都にあるアーサーの屋敷に寝泊まりしている。貴族の屋敷をタダで使わせてもらっているのだ。これ以上の報酬はない。
「ふふ、奥ゆかしいんだね。まあ、君がいいというならそれでいいよ。その代わり何か困ったことがあったらいつでも言っておくれ?」
「はい。ありがとうございます。」
そしてその後、アーサー、アルバ、エルランドとともに昼食をとり、なつきとアルバは王都に戻るべく馬車へ乗り込んだ。エルランドはもう少ししてから戻るそうだ。
馬車の中、アルバに午前中何をしていたのか尋ねると、アーサーとずっと話をしていたという。
「あ、あの人、忙しいって言っておきながら・・・・・!!」
おそらく嘘ではないのだろうが、アルバとのんびり話しをするくらいの時間はあったということだ。食えない人だ。
「それで、アーサー様から、その・・・あの・・・・・」
「?」
どうしたのだろうと、急かすことなくアルバの言葉を待つ。
「き、騎士の養成学校に興味はないかと尋ねられまして・・・・・・」
「学校?」
「はい。アーサー様が武器は多いほうがいいと言って、武術だけではなく学問も身につけたほうがいいと勧められたのです。確かに一理あるなと思いまして・・・・」
アーサーがアルバを見込んで学校に入れてくれるということなのだろうか。
「それって騎士にならないといけないの?」
「いえ、斡旋はしてくれるようですが強制ではないらしく、平民から貴族まで騎士や冒険者を志す者が多くいるとのことです。」
「なるほど。良さそうだね。で、どうするの?」
アルバが行きたいならいけばいいと軽く考えてそう質問すると、彼は驚いたようだった。
「え・・・・俺が、ですか・・?」
「へ?だってアルバの話でしょ?」
自分は何か誤解して話を聞いていたのだろうかと、もう一度会話の内容を思い返すが、これは間違いなくアルバが学校に行くか行かないかという話である。
「な、なつき様がどう思われるかな、と思いまして・・・・・」
「え?何言ってるの?」
なるほど。どうやらアルバは私の意見に従おうとしていたのか。なんともアルバらしい。ここでもし私が行くなといえば行かないし、行けと言ったら迷わず行くのだろう。
「ダメよ。自分で決めなさい。前に言ったでしょ、やりたいことが決まったら好きにしなさいって。あなたはもう奴隷じゃないんだから自分の意思で選択しないとダメよ。」
アルバと出会った頃を思い出す。彼は自分に仕えたいと言い、自分はそれをしぶしぶ了承した。しかしそれは、やりたいことができるまでという条件付きだ。
「学校に行って学びたいのならそうすればいいし、武術だけを磨きたいならそうすればいい。アルバ、これはあなた自身のことなの。私に委ねることじゃない。わかるよね?」
「・・・・・はい。しばらく・・考えてみようと思います・・・・。」
少し厳しいことを言ったかもしれないが、実は前からアルバは自立すべきだとは思っていた。奴隷だった過去が邪魔をして、勝手に自身の限界を決めてしまっている。本当にこの奴隷制度とは忌々しいものだと悔しくなるが、自分にできることはない。今はとにかくアルバの未来を照らしてあげられればいい。
「ところでアルバ、私ついに思いついたの!」
「何を・・・あ、魔法陣ですか?」
「そう!」
実は今回の依頼で、あることを思いついたのだった。核となる魔法陣を中心に、それとはまた別に描かれた5つの魔法陣。これがヒントとなった。
「うふふ、エミリーに会うのが楽しみね。」




