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過労死したら異世界転生  作者: とし
新たな挑戦
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複製の魔法陣3


「やあ、無理を言ってしまってすまないね。」

「いえいえ、いつもお世話になってるんで。」


窓から差し込む清々しい朝日がなんだかとても様になっているアーサーに挨拶をする。夕べは遅くて会わなかったので、改めて見て欲しい魔法陣の事について尋ねる。


「屋敷を守る結界を発生させる魔法陣でね、先代の宮廷筆頭魔術師が施してくれたものなんだ。本当は彼に頼みたいところなんだけど、忙しみたいで断られて困っていたんだよ。」

「守りの魔法陣ですね。見せてもらっていいですか?」


「ああ」、とアーサーが返したのと同時に彼の執務室の扉が開いた。


「おはようエル、ちょうどいいところにきたね。」


「・・・・あ、ああ。」

「・・・・・おはようございます。」


「ん?どうしたんだい、君ら?」


現れたエルランドに、昨日のことを思い出して少し気まずくなる。その様子を察したのかアーサーは途端にニヤニヤし始めた。


「ふふ、なつきを案内してあげたいところだけど、生憎私は仕事があってね。エル、なつきを魔法陣まで案内してやってくれないか?」


アーサーの提案を受けてエルランドはなつきを一瞥した。いつまでも気まずいわけにはいかないだろう。お互い時が経てば忘れる、そんな風に思いアーサーの提案を飲んだ。


「じゃあ、行くぞ。」

「は、はい。」


ピョコピョコとエルランドの後について行くなつきを見送り、側に控えていた使用人にアーサーは声をかけた。


「アルバを呼んで来てくれ。話があるんだ。」




* * * * *




エルランドに連れられたなつきは屋敷の地下室に来ていた。重厚な扉を抜けるとそこには、石造りの、冷たいがどこか神聖な空気の流れる空間だ。


部屋の中心には巨大な魔法陣が描かれていた。


「この魔法陣の調子が悪いんだったよね?」

「ああ。俺も多少の知識はあるんだがこれほど複雑なものだと把握しきれなくてな、お前ならなんとかなるだろう?」

「ちょっと見てみる。」


細かい術式が組み込めれた大きな魔法陣を細部まで確認して行く。10分ほどで解読がすんだが、特に問題は見られない。


「・・・この魔法陣自体には問題はないみたい。」

「ってことは他に問題があるということか?」

「多分だけど。・・・屋敷の地図か何かってもらえる?庭も入っているやつがいい。」


わかった、と言ってエルランドが部屋から出て言った。おそらくアーサーに尋ねに向かったのだろう。


「・・・ふう、すごいな、これ。」


かなり気合が入っている魔法陣を再び見る。


様々な要素を複雑に組み込んだにも関わらず、一点の矛盾も見られない。先代の宮廷筆頭魔導師と言っていたが、かなり魔法陣に詳しい人物なのだろう。それでも解読はできたが、一つだけ、新しい発見があった。


「持って来たぞ。これでいいか?」

「ありがとう。」


戻って来たエルランドとともに地図を覗き込む。よし、これなら大丈夫そう。


「この魔法陣ね、遠隔と接続が組み込まれていて、要は魔法陣の他に、この結界を担う要素があるの。」

「・・・つまり魔法陣はなくその要素だかに問題があるってことか?」

「うん。・・・5箇所、屋敷を囲むようにそれは配置されているはずなの。この地図、書き込んだりしていい?」

「ああ。問題ないはずだ。」


魔法陣を見ながら、その要素が配置されていると思しき場所に印をつける。この魔法陣を中心に、ちょうど半径100Mあたりの位置に等間隔でそれらはあるはずだ。


「ここと・・ここ・・・後、ここ。よし!この印をつけたところを見て回ろう!」

「ああ、わかった。」


早速屋敷から出て、庭の、先ほど印をつけたあたりを順番に確認して行く。


「・・・あ、きっとこれだよ。この石だ。こういうの他に4つある?」


示した先にあるのは石柱のオブジェ。エルランドは、確かに庭にいくつかあった気がするな、と思い起こし、首を縦に降る。


「多分これのどこかに魔法陣が・・・・・・」


石柱を色々と見て見るが魔法陣は描かれていない。


「あれ〜?おかしいな・・・・」

「隠されているんじゃないか?そういう術式あるだろ。」


確かにそういう術式はある。市販の魔具にはほとんどそれが組み込まれていて、他店がアイディアを盗用するのを防ぐ。しかし、この術式、組み込むのはたやすいが、解除はほぼ不可能。


「簡単に解除できちゃったら組み込む意味がないでしょ。うう、面倒だな・・・」

「その言い草だとできないわけじゃないんだろ。さっさとやれ。」

「鬼!」


不可視の魔法陣は、闇属性の魔法によるものだ。同量同質の聖属性で打ち消すか、それ以上の力の闇属性で読み取るかの二つの方法が取れる。しかし前者はかなり難しい、というより実質不可能だ。同量同質など、実際に術を施した本人以外知る由がない。というわけで、選択肢は自ずと一つに絞られる、のだが。


「私が契約した闇の精霊がね、ちょっと性格に難があってね、今度会った時に何を要求されるのかと思うと・・・・・・」

「それは命が脅かされたりとかか?」


ものすごく真剣に訪ねてくるエルランドには申し訳ないが、それは違う。

あいつは、あの精霊は、、


「セクハラ大王なのよ・・・」

「は?」

「だからっ、力を一回使うごとにキス一回っていう契約なの!だからできれば使いたくないの!!だって、この石全部で5つあるんだよ!?最高で5回ってことでしょ!?つ、次会った時が怖い・・・・・・!」

「・・・・・・・・」


エルランドは絶句した。

精霊との契約は、高位のものであればあるほど時間を要するし、求められる条件も厳しくなっていく。それを、キス一回?一般論でいえば、軽いどころの話ではない。


それでもエルランドとしては面白い話ではなかった。


「・・・・お前が非常識な契約をしたのはわかった。直接魔法はどうなんだ?使えないのか?」

「あんまり、闇魔法は得意じゃなくて・・・・・」

「はあ、なら仕方がないか。この石に闇属性の魔法を送ればいいんだな?」

「うん。」


エルランドは石柱に手を触れると、そこに自身の魔力を流し込む。するとある部分に魔法陣が現れ始めた。


「ごめん!もうちょっと多めに魔力を流して!」

「ああ・・・これ、きついな・・・・・・」


魔道士が本業ではないエルランドにはきついのだろう。それでもさすがはハイエルフというところだろうか。自身の中に流れる魔力はかなりのものらしい。直接魔法はどうやら得意そうだ。


「ああ!見えた!えーと、えーと・・・あ、ここには問題なさそう!もうやめていいよ。」

「そ、そうか・・・・・」


額に汗を流すエルランドを見るのは初めてだ。どうやら相当疲れる作業らしい。

が、しかし、無情にもこの作業はあと4回続くのであった。

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