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過労死したら異世界転生  作者: とし
新たな挑戦
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開業!


「そうなるとこういうのを作っても良いのね・・・」

「あ、それ良いかも。」


現在なつきたちは商品を色々と考えていたのだった。それと同時並行で、店の改装も行なっている。そちらはプロに任せている。お金はギルド褒賞でもらったものを使っている。


エミリーは女性が好むような雑貨やアクセサリーを作るのが得意なので、そこの客層に焦点を絞ろうという話に落ち着いた。普段使いできるものから女性冒険者向けの付与がついたアクセサリー、子供が楽しめるぬいぐるみ。こちらは魔法陣でぴょこぴょこ動く仕様だ。なかなか可愛らしくできている。


「色々なものがあったほうがいいと思うから、作りたいのだけれど、材料がなくて・・・・」

「あ〜、材料費か。」


これから運営していく上でなるべくコストを低く材料を得る必要がある。


「素材屋で買うか冒険者ギルドに材料を依頼するかどっちが安いのかしら・・・・・」


エミリーは12歳らしいが、かなりしっかりしていた。ここまでの商品の打ち合わせも、なつきを唸らせるアイディアを多く出した。文字の読み書きもできるようだし、簡単な計算もできる。学校はやめたと言っていたが、もしかしたら商才が有るのかもしれない。本人にやる気があれば、経済の本なんかを買ってあげるのもありだとさえ思った。


「自分で探しにいくのは?」

「え?でも街の外に行かないと材料は取れないじゃない。魔物がいるわ。」


そんなの危なくてできないと、当然のようにエミリーが言った。そういえば自分が冒険者ギルドに登録していることを言っていなかった。慌ててそのことを告げるとエミリーは驚いたようだった。


「なつきはお嬢様なのではなかったの?」

「え?違うよー。ただの田舎から出てきた魔導師だよ。」

「そうなのね。私てっきり、訳ありの元貴族とかそんなものだと思っていたわ。」


嘘は言っていない。龍の峰と言う都会とはかけ離れた環境からきた、ちょっと魔法が得意な女の子だ。


「じゃあこの辺りで取れるものはなつきにお願いすればタダで集められるわね。」

「じゃあ、改装中の間は、私が材料集めと付与で、エミリーが雑貨作りね。」



こうして着々と魔具店「サナギ」開業へ向けての準備が進められて行った。


本日はアルバと久しぶりに冒険者業だ。冒険者ギルドの決まりでは1ヶ月に一度は依頼を受けなければいけない。

ちょうど依頼を探していたら材料となる花が咲いているあたりの魔物の討伐があった。アクセサリーに魔石も使えるらしいので、1石3鳥だ。


ちなみにいつの間にかアルバはD級に昇格していた。なつきが王都で好きなことをしているうちに頑張っていたらしい。


「"フレイア"!」


なつきは魔法で、アルバは短剣で大量発生したらしいホーンラビットという小型の魔獣を次々に討伐していく。


「・・・やっぱりすごいですね。魔法。」

「急にどうしたの?」

「俺も、まだまだだと思って・・・・」


久しぶりに弱気なアルバを見た気がした。どうも彼は自己肯定感が低いようだ。バックグラウンドを考えるとしょうがないのかもしれないが、人生楽しんだ方がいいに違いない。もっと気楽にできるといいのだが。


「強くはなっているでしょ?動体視力一般人の私でさえわかるくらいなんだから。」

「そうなのですが、もっと、強くなりたいのに、うまくは行かないなと思っていまして・・・」


もしかして伸び悩んでいるのだろうか。これに関してはあまりアドバイスできるような経験をしていないため言葉に詰まる。


ん、アドバイスできる経験・・・?


「エルに聞いて見たら?どうやったら強くなれますかって。」

「エルランド様に、ですか・・・?」

「うん。私は魔法以外はさっぱりだから戦い方のことはエルに聞いた方いいと思うの。」


確かにその通りだ、とアルバは考え込む。

至高の冒険者と共に暮らしているのにその結論にたどり着かなかった。灯台下暗しとはこのことか、と思った。

しかし、エルランドは対応してくれるだろうかと不安になるアルバをなつきは見透かしたようだった。


「エルは態度はそっけないけど優しいし、アルバの本気が伝わればちゃんとアドバイスしてくれるわよ。」

「・・・・そうですね。今夜聞いてみます。」




冒険者ギルドに行き依頼報酬を受け取る。魔石と目当ての一つだった花を入手したなつきは満足そうだ。

帰りに食材を購入してホールデイン侯爵邸に帰宅する。


「あれ、エル、帰ってたの?」

「今日は冒険者の依頼ではなかったからな・・・・・」


そう言った彼の表情は疲れ切っていた。どうしたのだろうか。


「・・・貴族の相手をしていたんだ。あいつら自分のことしか考えてない。俺を権力抗争に巻き込もうとしてるんだ。」

「権力抗争・・・大変ね・・・・・・」


強いというのも考えものなのだな・・・・

よっぽど鬱憤が溜まっていたのか彼は饒舌だった。


「第3皇子がうつけだのなんだのとか、皇太子より第2皇子を擁護するべきだとか・・・・俺には関係ない話だ・・・・・」


第2王子とはあいつか。研究所で暴言をはいたやつだな。

とりあえずあの人を擁護する必要はない。と個人的に思う。あんな人がえらい世の中なんて嫌だ。


「まあお疲れ様。今からアルバと夕食作ろうとしてたんだけど、エルも食べる?」

「お前ら自炊してたのか。せっかくだし食べてやる。」

「何その言い方。」


まあ、いいかと区切りをつけ、アルバに手伝ってもらいながら夕食を作る。無難にハンバーグだ。料理はあちらもこちらも同じような進化を遂げている。これに関しては幸いだった。


数十分後、ハンバーグが完成した。美味しそうにできている。

今日は屋敷の大きな厨房を初めて使い、ダイニングに皿を並べる。気分はプロの料理人だ。作ったものは普通の家庭料理だが。


「料理は普通にできるんだな。」

「料理はって何?」

「なつき様、冷めてしまいますよ・・・」


言い合いを始めそうな空気を鎮めようとアルバがやんわりと牽制する。


「そうだ、エル。アルバが話しあるって。」

「い、今でございますか?」


そんな話しにくいことでもないだろうとアルバを促す。


「つ、強くなるにはどうしたらいいのかと・・・・」

「強く?焦ることもないだろう。」

「その、恥ずかしい話、なつき様が魔法で手早く魔物を討伐していくのを見て、力不足を実感いたしまして・・・」


あれ、私のせいなの?となつきは気まずくなる。

エルランドに視線を向けると、呆れたような声が返ってきた。


「はあ、魔導師とお前では戦い方が違うのだから比べるもんじゃないだろう・・・・」

「それは、そうなのですが・・・・」


俯くアルバに何か思うところがあるのだろう。エルランドは考えを巡らせていた。


「・・・ちょうど討伐でもして今日の鬱憤を晴らそうとしてたところだ。明日一緒に依頼を受けるか?」

「!!」


S級冒険者からのまたとない誘いにアルバは二つ返事で了承した。

アルバとエルランドが次第に仲良くなっていく様子を見てなつきはなぜだか嬉しくなるのあった。

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