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過労死したら異世界転生  作者: とし
新たな挑戦
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商人ギルド


エミリーと出会ったその日の夜、なつきとアルバが就寝前に紅茶を飲んでいると、エルランドが帰宅した。


「あ、おかえり。」「おかえりなさいませ。」

「ああ・・・ただいま。」


なんだか慣れないな、なんて思いながらもそれほど嫌ではないらしい自分にも気づくエルランド。

そういえばこの二人は今日ガラクタ市に行くと言っていたな、と思い出し、そのことについて尋ねると、エミリーという少女を見つけてきたらしい。しかしアルバは複雑な顔をしていた。


「どうしたんだ?」

「・・・彼女は蟲族で、迫害を受けていたらしく両親もなくなっていて、加えて・・・スラムの子供らしいのです。」

「は?・・・なんでまたそんな人選を・・・・?」


アルバとエルランドの態度に不服らしいなつきはジト目で二人をみる。


「何よ。エミリー、いい子だったじゃない。」


まさかアルバまで虫がウンタラカンタラ言うのか!?


「なつき、怒らないで一度聞け。そのエミリーとかって子は確かにいい子かもしれないが、そうじゃないことの方が圧倒的に多い。」

「・・・どう言うこと?」

「蟲族ってのは、まあ知ってるだろうが差別的な扱いを受けている。だからほとんどが社会に反抗的だったりする。スラムもまあ同じことが言えるな。金がないから犯罪に手を染める。お前みたいなやつを陥れようとするのも少なくないだろうな。」


それは・・・わからないわけじゃない。

元の世界でもそんな人はいっぱいいた。


「あのね、、私思い出したのよ。」


そう、そんなことどうでもいい。

彼女は私に大切なことを思い出させてくれた。


「私が昔研究者になったのは、ただ研究が好きだったからじゃなかった。・・・・・人を助けたかったの。」


前世の私は病気で母を失った。それはまだ治療法が確立されていなかった不治の病だった。母がいなくなった私に、父はその代わりとでも言うように精一杯の愛情を注いでくれた。それでも父は、時折ふと、寂しそうにするのだった。


「少しでもたくさんの人を助けたくて、悲しい思いをしないように、勉強して、研究にのめり込んだの。ちょっと色々あって研究は続けられなくなったんだけど・・・・・」


過労死で、なんて言えないが。


二人は静かに話を聞いてくれた。


「だから研究所に行った時はがっかりした。必要なことなんだろうけど、私がやりたいこととは違っていたから。だから、魔具なら楽しくできるかな、って思ってたけど、それでもどこか、何かが足りない気がしていたのよ。」


魔具作りは楽しい。新しい魔法陣を考えるのもとても興味深い。

でも、それだけだ。


「エミリーに会って、助けたいって思ったの。エミリーだけじゃなくて、たくさんの子を。途方もないことってのはわかってるの。でも、助けられるのなら、助けたい・・・!」


最初は、エミリーの働き口になることから始める。万が一エミリーが悪い子だったとしても、私には失うようなものも持ち合わせていない。

住居という名の豪邸を提供してくれているアーサーさんにだけは迷惑をかけないようにしたいが。


「・・・・・わかった。」

「!」


エルランドが重い口を開いた。


「ただし危ないことには突っ込むな。無理もするな。いいな?」

「・・・エルってば、お父さんみたいね。」

「な・・・・・!?」

「な、なつき様・・・・エルランド様は心配しておられるのに・・・・・・」


寝所に行こうと立ち上がったなつきが振り返りアルバとエルランドに返す。


「ふふ、知ってる。だから怒らなかったでしょう?もう寝るわ。おやすみ。」

「「・・・・・」」


微笑んだ彼女に見とれて、なんて口が裂けても言えないが二人は言葉を失ってしまった。

パタンと部屋の扉を閉め、残された男二人はお互いに向き合う。


「・・・・・心配だな。」

「ええ・・・・・・」





* * * * *




後日、なつきはエミリーと商業ギルドに赴いた。商売をする場合は、ここに申請しなければいけない。

冒険者ギルドとは全く違った雰囲気だ。


正直、なつきもエミリーも商売に関する知識は持ち合わせていない。そういうったことも含めて、専門家に尋ねるのが一番だろうと、とりあえず足を運んだのだ。


「な、なつき!私色々作ったの!後で見てくれるかしら?」

「ええ。もちろん!」


まだ慣れない様子の彼女であるが、最初よりはだいぶマシだろう。アルバのようになつき様、と彼女はなつきを呼んでいたが、一緒に働くパートナーとして選んだのだから、立場は対等だと言い聞かせ、話し方を矯正した。アルバの敬語もなくなるといいのだが、彼は奴隷時代が長すぎて色々こじらせているため無理強いはしないでおいている。


そんなエミリーは今、目を隠すためなのかフードを被って俯いている。いつか前を向いて堂々と歩けるようになってほしいがそれは時間がかかるだろう。


早速、ギルドの受付嬢に魔具屋を開きたいとの旨を伝える。どうしたらいいか全くわからないことも含めてそういうと、一から説明をしてくれた。


「まずは営業場所の確保ですね。こちらはギルドの物件にいくつか空きがあるのでこの辺りをお勧めします。」


手渡された資料を色々と眺めてみる。うーん、よくわからない。


「今すぐ決める必要はございませんので、ご自身で足を運んで直接見てみるのがいいと思いますよ。担当の者が案内可能ですがいかがなさいますか?」

「あ、じゃあお願いします。」


不動産屋みたいなこともするんだな、と商業ギルドに感心する。


お勧めだという建物を3件ほど回った。その中から、大通りの2つ隣の道にある、大きさも十分で、かつ古いため家賃の安いところを選ぶ。ここならそこそこ人通りが確保できるし、買い物の途中で立ち寄れる範囲にある。それに店内の改装は好きなように行って良いとのことで、古くても問題はないだろう。


その他諸々の手続きを済ませ、営業許可をもらう。


「店名はいかがなさいますか?」

「あ、考えてなかったね。エミリー何か案はある?」

「んー、難しいですね・・・・」


子供の発想力に頼ろうとしたが、流石に無茶振りがすぎたか。


「あ。」


ふとエミリーを見て思いついた。うん。これは良いかもしれない。


「"サナギ" で!」


今は成長途中なだけだ。いつかきっと、大成する。

お店だけじゃなくて、エミリーも、この世界もよくなっていく。そんな願いを名前に込めて。


「了解致しました。"サナギ"ですね。頑張ってくださいね。」


こうして魔具屋サナギはオープンしようとしていたのだった。

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