ゴブリン・クライシス5
「アルバ〜」
「はいはい。」
宴の帰り、またもや正気を失っているなつきを背負い、宿屋へ帰る。
「はい、お水です。」
昨晩と同様に、二日酔いを軽減するために水を飲ませる。
「ふわふわ」
「や、やめてください・・!」
酔ったら恒例なのだろうか、なつきはアルバの尻尾に抱きついている。
まずい、これでは昨日の二の舞だと感じたアルバは、すぐさまなつきから離れた。
「で、ではお休みなさいませ!」
「んーー、おやすみ・・・」
不満げな顔を示していたなつきではあったが、お休みの一言で、即刻眠りについた。
今夜は余計な努力などすることもなく寝れるだろうと一安心し、部屋へ戻る。残念な気がするのはきっと気のせいだ。
「ほらよ、持ってみな。」
翌朝、旅支度を終えてからルドルフの元へ武器を取りに行く。
「すごい・・・!手によく馴染みます。」
「付与をつけたら、そんなもんじゃないぞ。」
男性陣が盛り上がっている傍、なつきは真っ青でその様子を眺めていた。
・・・・頭がいたい。なんで私は学ばないんだろう。
きっと一度楽しくなるとセーブが効かないのだろう。次回からはアルバにずっと見張ってもらおうかなとまで考えてしまう。いや、それだとアルバが楽しめないか。彼はどうやら自分と違い、酔わないタチらしい。
* * * * *
ドワーフの集落を出て、王都の方へ向かう。次はここと王都との中間に位置する街に滞在する予定だ。どうやらその街カザリスからは、王都直行の馬車が出ているらしい。
「す、すごいですよ、これ・・・」
現れる魔物をサクサク倒し進めるアルバ。受け取ったばかりの短剣には、なつきが考えうる最高の魔法付与を施してある。
その間なつきはせっせと魔物が落とす魔石を道具入れに集める。ゴブリン達のも入っているので、総合的な量はなかなかではないだろうか。ガーボッドによると、魔石は魔具作りに使うらしく、付与にも使える。
魔石によって魔法陣の効果を上乗せできるということはすでにドラゴン達から教わっていたので、あとは良い魔石を手に入れるだけである。現在なつきが持っている魔石は生活用の魔具に使われるような、ランクの低いものばかりであったため、アルバの付与には使っていない。今後レアなものを手に入れたら、使ってみようということになっている。
特に急いでいたわけではなかったので、アルバの練習も兼ねてのんびりと道中を楽しむ。野営中はアルバが不寝番をしないよう、周囲に簡易の魔物よけ魔法陣を描きゆっくりと休憩もできた。風呂は入れないが、生活用の水魔法で体の汚れは落とすことができるので衛生面も問題はない。食事に関しても、道具入れの時間が止まっているので、貯蓄さえしっかりして入れば完璧である。
そんなこんなで数日がたち、二人は無事にカザリスへとたどり着いた。
数日間歩きっぱなしで野営だったため、とにかく今日は宿屋で休もうということになり、街でも少し良い値段の宿屋を選んだ。たまには贅沢もいいだろう。
「天国ー!!」
「おやすみなさい、なつき様。」
その日は久しぶりのフカフカベッドで心置きなく一晩を明かした。
カザリスはアグニマスなどとは違い、特に何か有名な物というのはなかったが、王都との中継地点にあるだけあって活気のある街だ。冒険者が多く立ち寄るのだろう、武器屋や魔具屋も多く立ち並んでいた。
何日かは滞在する予定なので、その為と今後のためにも、と資金稼ぎをするべく冒険者ギルドへ向かう。
「なつき様ですね、少々お待ちくださいませ。・・・・あら?」
少し年配の受付嬢が、なつき用に依頼を探そうとしていると、何か不都合があったらしく慌て始めた。
「どうかしましたか・・・?」
まさか自分は何かやらかしてしまったのだろうかと受付嬢を見る。
後ろにいるアルバもどうしたのだろうと不安そうな顔をしている。
「なつき様!急いで王都へお向かいくださいませ!馬車はギルドで用意いたします!」
「????」
なぜだろうとアルバと顔を見合わせる。
「今回のギルド褒賞に選ばれておりますよ!!!」
「はい?」
受付嬢が興奮気味に、かつ大きめの声で言うものだから、カザリス冒険者ギルドは騒然としたのであった。




