ゴブリン・クライシス3
「・・・・・・!?」
朝、目覚めると頭がガンガンして「二日酔いだこれ」、と思考する前に事件が起きていた。
ーーーなんでアルバと寝てるの!?
まさかお酒の勢いで!?
焦って衣服を確認するとしっかり着ていた。
というか昨日と同じだ。
アルバも昨日と変わらない出で立ちをしていて、スヤスヤ眠っている。
正直酒場でおじさんたちと飲んだあたりからの記憶がない。
ドワーフのおじさんたちは皆気さくで、話が弾む弾む。
こっちでおしゃべりの人に会ったのは初めてだったので嬉しくなってしまったので。
ふと右手の違和感に気づいた。
ーーー私のせいか。
こうなった原因は自分にあると気づいた。
なぜなら右手にしっかりとアルバの尻尾を握っていたからだ。
そういえば、完全理系のインドア派だったのになぜか握力は強かったという記憶が蘇る。
体は全く別なものなのに、魂というのは身体能力に影響するのだろうか。
とにかくこのままアルバが起きても気まずいので、シャワーを浴びに浴室へ向かった。
* * * * *
「お加減は?」
「まだ治らない・・・」
シャワーを浴びた後、目覚めたアルバに全力で謝罪し、宿屋までわざわざなつきたちを呼びに来たドワーフに連れられ、例の鉱山へ向かっている。
ちなみに二日酔いは継続中である。
回復魔法は外傷には効くが、病の類は治せない。
体調もだが先ほどからアルバとの間に微妙な空気が流れている。
こればかりは時が立つのを待つしかないか、と諦め始めていた。
「着いたぞ。お前さんら本当に大丈夫なのか・・・?」
「あ、お気遣いなく〜」
二日酔いのせいで顔面蒼白ななつきを気にかけているらしい。
ただでさえD級で疑われているのにも関わらずこれはとんだ失態だった。
「お酒って怖い。」
「次からは自重してくださいね。」
アルバに厳しく言われ、不甲斐なく思う。
頭痛がひどいし、胃はムカムカするしコンディションは最悪だが汚名返上のチャンスだ。
鉱夫たちがなつきの腕前を見ようと面白半分で周りに集まってくる。
昨日酒場で一緒に楽しんだ者達もいた。
「ここが入り口ね。」
アルバには別な出入口があると困るので付近を見張るよう頼む。
鉱山の広さはわからないから、とりあえずこの穴からマックス火力を火炎放射みたいに打てば良いか。
ドワーフ達からは、鉱物は熱に強いから好きなようにと言われている。
「うう、頭痛い・・・。じゃあ行くよ!」
気合いを入れてアルバに初めの合図をとる。
「“フレイア”!!!」
入り口からゴオゴオと勢いよく炎を噴射して行く。
こういった力業の時に精霊魔法は非常に便利だ。なんせ自分の魔力が尽きることを気にしなくて良い。
精霊の魔力を使っているが、ドラゴンの魔力は底なしである。
想像していたのとは違い、本当に魔術が得意な冒険者であったのかと、ドワーフ達は舌を巻く。
アルバの様子からすると、入り口はここだけで、ゴブリンが他から出てくるということもない。
中から騒がしい音がする。
「なつき様!!!」
ザシュッ
突然アルバが背後に立って剣を構えたかと思ったら、巣の外に出ていたゴブリンが異変を感じて集まって来たことに気づいた。1匹2匹ではない。ワラワラと集まってくる。
今まで討伐してもまた増えて居たのはこういうことか。
中のゴブリンを倒しても、外のゴブリンが戻って来て結局もと通りに増えてしまうということだ。
それにしてもアルバが居なかったら後ろを取られて居ただろうと、若干肝を冷やす。
ドワーフの集落までの魔物をほとんど任せたのが功をそうしたらしい。危なげなくゴブリンの群れをなぎ倒して行く。
エルランドが以前言っていたように、アルバの種族は戦闘向きなようだ。
「アルバ、そっちは任せた!」
「はい!」
背後を任されたのが嬉しかったらしく、さらに勢いをつけてゴブリンの数を減らして行く。
二人とゴブリンの攻防は30分にも満たなかった。
巣の喧騒がやんだようだったので、アルバと共にゴブリンの残党がいないか確かめに鉱山内部へと進む。
数十分ほどで鉱山内部の安全確認は取れた。
入り口の外で様子を見ていた鉱夫達曰く、外にもゴブリンはいなかったということだ。
「本当にやっちまいやがった・・・・」
昨夜、酒場にいたドワーフ達は、まさかこんなD級の冒険者と名乗る人間の女が、あれほどの高位魔法を使えるなどとは夢にも思わなく、唖然としていたのだった。




