魔具の街アグニマス
「じゃあエルランドさん、色々とありがとうございました。」
「ああ。俺は今日明日には街を出るが、冒険者を続けるならまた会うこともあるだろう。」
エルランドと別れ、二人はガーボッドの店を後にする。
まずはギルドで依頼を確認しようということになり、アルバを連れ、冒険者ギルドが建っているらしい広場へと向かう。
「ご依頼の確認でしょうか?」
その問いに頷くと、受付嬢はEランクの依頼の一覧を示す。
「こちらがなつき様が現在受注可能な依頼になります。アルバ様は仮登録でございますので、こちらの依頼を後20件受けて頂いてから、本登録になります。」
ーーーそうか。アルバのことも考えないとな・・・・・
アルバと相談し、今後のプランを練る。
魔具を購入したいがそのための資金は足りないので依頼は何件かこなしたい。
ついでに魔具のことについて学んでみたいということもあり、アグニマスに1ヶ月弱滞在し資金集めをしながら、なつきは魔具の研究、アルバは本登録を目指すという結論に落ち着いた。
アルバとギルドで待ち合わせをする事に決め、それぞれの依頼の場所へと向かった。
アルバは薬草採取、なつきはシルバーベアの討伐だ。
薬草が生えているというあたりには魔物の出現もほとんどないという事で安心してアルバを送り出した。
アルバの方はなつきを一人にする事に心配していたようだったが・・・・
* * * * *
アグニマスに滞在してから1週間ほどが経過した。
アルバは日に1・2件の依頼を順当にこなし、二人の資金にも順当に貯まってきたので、今日は依頼は受けずに魔具を見に行く事になった。
「こんにちは〜」
ガーボッドの店にやってきた。
色々な魔具店を見るのもよかったが、何分二人は魔具に関しては素人なので、エルランドに勧められたこの店に最初に来るのが良いだろうとなった。
「お前らか、えーと、なつきにアルバだっけか?」
二人でその質問に頷く。どうやら忘れられてはいないようだった。
しかし前回同様不機嫌そうな顔をしているガーボッドに接客は大丈夫なのかと不安になる。
「魔具を買うのは初めてで、何もわからないので色々教えていただきたくて。」
「ああ。なるほどな。」
面倒臭そうにしながらもガーボッドは意外にも丁寧に一つ一つ教えてくれた。
彼の店にあるものは全て彼自身が魔法陣を施した魔具らしい。
「適当な道具に魔法陣を描いたらそれはもう魔具って事なんですか?」
「そうなるな。」
なるほど、ということは私にも作れるのか・・・?
「なつき様は魔法陣の造詣が深いですから魔具も作れそうですね。」
アルバがなつきの心の声を読んだかのようにそう言った。
「魔具作りに興味があるのか?」
「興味・・・あるかも。」
ガーボッドはなつきの返答を聞くと店の奥に行った。
すぐに戻ってきた彼の手元には布らしきものがある。
「まだこいつは只のガラクタだ。これから魔法陣を書こうと思ってたんだが、やって見るか?」
「え、いいんですか?」
ガーボッドからペンを渡される。
「これは魔力を込めなくても半永久的な魔法陣を描ける特殊なインクでな、俺らの商売道具だ。」
「へえ、便利なものがあるんですね。」
本来、魔法陣は魔力を込める必要はないのだが、普通のインクで描くと一回きりしか使えない。
しかし魔力を込めると、アルバの奴隷印が良い例だが、半永久的に効力を持続する、または何回でも発動することができる。
ガーボッドに教えられながら、渡された布に魔法陣を描いていく。
「あ、空間拡大の陣ですね。そっか、みんなどこから荷物を出してるのかと思ったらこれを使っていたのね・・・」
「冒険者は大荷物が必要な場合も多いからな。これで小さな袋でも沢山入るんだ。にしても、よくわかったな。」
「じゃあここにこう陣を書き足せば、時間が止まって食材を入れたりもできますね。」
「!?」
なつきが軽く提案するとガーボッドは目を見開き、その場の空気が一変した。
「なつき、それは時の魔法陣で国家機密に当たるもんだ。どこで知った!?」
ガーボッドは責めるように問う。
その問いの内容にアルバも驚いたが、なつきだって初耳だ。
ーーードラゴンに教わったなんて言えない。
「・・・・私は人里離れた山奥で育てられました。私を育ててくれた人は、魔法陣にのめり込む私を見てたくさんのことを教えてくれたのですが、彼らが何者かなんて疑問を持つことなく旅に出たもので・・・・・でもこれが国家機密だとは知らなかったのだと思います。そういったことは教えてくれるはずなので・・・・」
ドラゴン達はあまり人と関わらない。
そのため、人の法や慣習に疎いところはある。
現に彼らに知識を学んだなつきは、街に出て初めて知ることが多かった。
「そうだったのですか。だからなつき様はおかしなことを尋ねられたりしたのですね。」
アルバはようやくなつきのこれまでの不可思議な言動と異常な実力との齟齬の理由を知れた気がした。
もちろんドラゴンのことは言えないが。
「てめぇを育てた奴ってのは何者だよ・・・・もしかしたら元宮廷魔導師筆頭とかかもな。」
「も、もしかしたらそうかもしれませんね。それよりも、ガーボッドさんこそ何者なんですか?エルランドさんが勧めるくらいだし、腕が立つんだろうなとは思っていましたけど、時の魔法陣を知ってるということですよね?」
その質問にガーボッドはグッと息をつまらせた。
「いや、俺の話はいい。おいおい、な。」
あ、これ教えないやつだ。
まあ人には大なり小なり秘密はあるか、と結論づけて、魔具作りを再開した。
出来上がった魔具は道具入れ(空間拡大×時間停止)で、ガーボッドはそんなもの売る訳にはいかないからやる、と行って手渡された。




