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過労死したら異世界転生  作者: とし
異世界と出逢い
13/47

いざアグニマスへ2


「名前は?」


「な、なつきです。」



涼しい顔でこちらへ戻ってきた男は、表情を帰ることなく名を尋ねた。

その顔の美しさについ腰が引けてどもってしまった。



「そうか。俺はエルランド=ハルスだ。」

「あ、はい・・・・」



普通ならよろしくだとか言うのだろうが、そんな気が回らなかった。


再びフードをかぶり、馬車の中へ戻るエルランド。



「あいつ、S級のやつだ。俺も運が良かったぜ・・・・・」



先に外へ出ていた乗客の男がそう呟いた。

どうやらエルランドという男はかなりやり手の冒険者らしい。





* * * * * 





パチパチと焚き火が音を立てる。


あれから馬車はまた1時間ほど走り出し、野営についた。

そして現在は真夜中で、朝日が登るのを待つ状態だ。


「そいつは何者なんだ?」


ほとんどのものが眠る中、エルランドは起きていた。フードは外してある。

見張りは御者のものがやってくれている。

そして、アルバもまた眠らないでいた。傍には、なつきがすやすやと眠っている。

たった一人の女性であるなつきを少しでも守れるようにと、不寝番の役目を買って出ている。

当のなつき本人は知らないでいるが。


「・・・・・俺も出会ったのはつい最近で、わかりません。ですが、、女神のようなお方です。」


「女神、か。」


油断しきった寝顔を見せ、眠る女。

長い黒髪に、意志の強そうな黒い瞳。


「・・・・俺はバルキリーのようだと思った。」


戦の勝敗を決する女神、エルランドにはそう見えた。


「最初、馬車でお前らを見たときは丸腰で乗ってくるから驚いた。痩せこけた男と、軽装の女。襲ってくれと言ってるようなもんだ。次からは気をつけるんだな。」


「はい・・・もしかして、あなたが何かしてくれたんですか・・・?」


エルランドでいい、と言った後、彼はアルバの質問に答えた。


「少しは名が知れていてな、ちょっかい出そうとした輩をひと睨みしただけだ。」


S級冒険者エルランドをこの辺りで知らないものはいなかった。

長身で黒フードの男に気をつけろ、というのは界隈で有名だ。

彼に睨まれたら、どんな魔獣も尻尾を巻いて逃げるのでは、とアルバは思ってしまった。



「・・・・・ありがとうございます・・・。俺は、まだ彼女を守れない・・・!」



悔しそうに俯くアルバ。



「アルバとか言ったな。お前はなぜなつきと一緒にいるんだ?」


「詳しくは言えませんが・・・・彼女に救われたのです。なつき様に恩をお返ししたい・・・でもそれができない自分を、歯がゆく思うのです。」



深いわけがありそうだ、とエルランドは思った。

彼の生涯においてややこしそうな者は何人も見てきた。

その中でもこの二人、特になつきは異質だ。



ワイバーン討伐の後に聞いたところによると、彼女は新米でEランクの冒険者だという。

直感でなかなかの魔術師なのだろうと思ったが、あれほどとは思わなかった。

一体どこであのような強力な精霊魔法を契約してきたのだろうか。


そして、その割には物を全く知らない。


馬車に乗ってきたときも物珍しそうにしていた。

かと言って、どこぞの世間知らずのご令嬢という感じでもない。



「アグニマスに向かうんだろ?欲しい魔具があるなら、馴染みの店に連れてってやるが、どうだ?」

「それは、、、なつき様がお目覚めになられてからお尋ねください。俺は魔具のことはよくわからないので・・・・」



そうか、と言って沈黙が訪れ、やがてエルランドは眠りについた。



(この人、悪い人ではなさそうだけど・・・・・)


話していてとても緊張する人だ。


とにかく明日なつきが目覚めてから、先ほどの提案について尋ねようとアルバは夜空を見上げ、朝日を待つのだった。

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