↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界のバグは、七瀬由奈(73K)が上書きする 〜数式10.23と13の絶対権限を奪われた高解像度ヒロインの逆襲劇〜』  作者: Eternity Beat


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/38

第18話:氷環のヒートシンク、アマテラスの証明 

「——ふん、ただボーッと補給を待つなんて非ロジカルよ」


メインモニターの側面に、静かに、そして美しく佇む青白い氷の惑星——『プロキシマ・ケンタウリc』。

その周回軌道上に静止したアーク・クラスのブリッジで、ナナの指先がキーボードを冷ややかに打鍵していた。


「せっかく4.246光年を跳んで未知の星系へ辿り着いたのよ? 可能な限りの物理データを収集(スキャン)して、サピエンスの環境適応アーカイブへマウントするのが筋というものだわ。……無人探査ポッド、射出!」


船底から放たれた高分解能探査機が、プロキシマcの極厚な大気層へ向かって滑空していく。

コンソールに次々と送られてくる物理数値を前に、ナナは心底嫌そうに眉をひそめてみせた。レインストの防寒ジャンパーの袖をぎゅっと握りしめ、ツンと顎を引く。


「……はあ、ダメねぇ、この惑星(プロキシマc)は! 表面温度マイナス二百十度オーバー、大気は凍結したメタンと窒素の氷の地獄よ。サーバーを置いた瞬間に熱力学的に凍結壊死(パージ)するわ。新天地候補から完全除外(削除)ね!」


「ハッ、見た目はキレイな青い星だが、住むには寒すぎるってわけか! だが、これで迷いは消えたぜお嬢様! 俺たちの本命は、あのハビタブルゾーンで爆走してる『プロキシマb』ただ一つだ!」


レインストが豪快に笑いながら、コンソールのメンテナンススイッチを切り替える。

サブシートのアミィも晴れやかな笑顔で通信ログを打刻した。


「ふふ、プロキシマcの『居住不可領域』指定ログ、インデックス完了しました。……ですがナナ様、次はどちらの実験ですか?」


アミィの問いに、ナナは怪しく澄んだ青い瞳を輝かせた。


「決まっているでしょう。エネルギー側(アマテラス粒子)の実測データの確定よ。低解像度なサピエンスが『アマテラス粒子なんて高エネルギーすぎて制御できるわけがない』なんて浅い言いがかりを付けてくる前に、実測値で証明してあげるわ」


ナナがモニターのホログラムを指差し、プロキシマcの周囲を美しく彩る『巨大な氷と微小鉱物のリング(環)』を強調表示する。


「……ふん、プロキシマcの地表で直接実験を行わない理由? 決まっているでしょう。地表で直接アマテラス粒子の励起実験なんてやったら、高密度エネルギーの連鎖反応でプロキシマcが内側から崩壊して、惑星が一つ丸ごと砕けて消滅(パージ)するわ」


ナナは得意気に鼻で鳴らし、冷酷に言い放つ。


「だからこそ、この『氷のリング(環)』をハックしたのよ! プロキシマcの周囲を覆う無数の氷微粒子群……ここを天然の超巨大な冷却用ヒートシンク(緩衝帯)として利用するの。万が一エネルギーが暴走しても、リングの氷が瞬時に昇華して安全に熱をパージしてくれるわ。これで惑星消滅のリスクはゼロよ!」


素粒子捕獲ポッドがリングの氷群へと射出され、青い光の格子が宇宙を彩る。


「観測値、出たわ! 二百四十四エクサ電子ボルト! プロキシマの狂暴な磁気圏と氷のリングのバウショックが干渉するこの領域は、アマテラス粒子の天然の受光プラットフォームになっているわ! 私たちのアーク・クラスの超伝導格子なら、このエネルギーを一切の損失なしで100%運動量に変換できるわ。……これでプロキシマbへの一発アジャストどころか、一八〇〇光年先のケプラーへ飛ぶための完全な『燃料(PATH)』が証明されたわね!」


「ハッ! 惑星を爆発させずに究極の燃料を手に入れて、失敗の理由も完全解析済みか! 最高にスマートな現場監督だぜお嬢様!」


レインストが豪快に笑い、操縦桿のジャイロ(姿勢制御角)を力強くアジャストする。


「ふふ、ジャイロメンテナンスおよび姿勢制御角の補正、コンマ〇〇〇一秒の狂いもなく完了です! ナナ様、レインスト!」


アミィが晴れやかな顔でバックアップログを確定させた。


「よし……全プロトコル完了よ! 次こそは完璧な『横(並走軌道)』へ……プロキシマbへリトライ(再跳躍)よ!!」


ナナは真っ赤な顔でレインストの胸板に顔を押し当て、その裾をぎゅっと掴んだ。二人の熱が、宇宙の暗黒を溶かしていく。彼女たちの創世へのPATH《パス》は、誰にも止められない。(第19話に続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。