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16.矮小なる洗礼

 しばらく進むとまたもや座り込んでいる人物を1人見つける。


「あの~ すみません、ここで何をしてるんですか?」


 ハヤテが問いかけると、40代くらいのおじさんが顔を上げる。


「ん? アイテムのリポップを待ってるだけだけど?…」


「あ~ そうなんですね?・・ちなみに何のアイテムが採れるんですか?」


「・・・」

 あまり穏やかでは無い顔で男性がハヤテを見つめる。


「あー すみません、別に横取りしようとかって思ってるわけじゃありませんよ? 目当てのアイテムだったらまた今度寄ろうかと思いまして…」


「ここで採れるのはリュメン草だよ…俺はあと3つ採ったら終わりだから、そしたら譲ってやるよ」


「ちなみにそれって何分くらいかかります?」


「ん''~… 正確な時間はわからんが…  だいたい20分置きにリポップするから あと~50分~1時間ってところだな」


「あっ なるほど~結構かかりますね、そうですね~じゃぁ時間ももったいないですし、帰りにでも寄ってみますね… 」


「ああ… そうしてくれ…」


「ちなみに~なんですけど? この辺りで狩りやすそうなモンスターとかって...いないですかね?」


「・・・ 狩りやすいかどうかは知らんが、向こうの方にカエルのようなモンスターなら居たぜ、ちっこいから弱いとは思うが、もう誰かが狩り尽くしてるかもなぁ……」


「そうですよね、このゲーム、人口の割にモンスターの数が少なくてリポップ時間も長いですし、美味しそうな狩り場は、もう誰かに占領されてるかもしれませんよね……ん~ 頑張って狩れそうな場所でも探してみます! ありがとうございました!」


「あ~後……これは忠告なんだが、この先を進むと上り坂が見えてきてな、その奥に鹿みたいなモンスターが居るんだが、ありゃ近付かない方が良い... 見るからに強そうだった、なんでも……昨日だけで3パーティはソイツに全滅させられたらしい…… 会う度に他プレイヤーの手足や生首が角に刺さってたらしいな…」


「うわぁ~ マジすか、それはヤバそうですね... 近付かないように別の道を探しますね !ありがとうございました!」


「おぅ… こんなことになって…あんちゃん達も大変だとは思うけど、頑張って生き延びてな!」


「あっ ありがとうございます、おじさんも またどこかでお会いしましょう!」


「おぅ! 気~付けてな!」


 おじさんの忠告を受けた俺達はそのまま道沿いに進むと、またもや張り込んでるパーティに何組も出会う。

 誰に話を聞いても、「獲物を横取りするな!」だの「他を当たってくれ」などと言われて軽くあしらわれてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 しばらく進むと海岸が見えてきた。

 おじさんの言う通り、正面に少し高い台地へと続く坂があり台地の海岸側は絶壁になっている。

 右手側には深い森が、左手には一面の海が広がっていた。白い浜辺が続いており台地との間にそこまで広くはないが道ができている、ここを通ってみようとハヤテの提案で一行は海岸沿いの道を行く。

 歩きながら、ふと視線を上に向けると台地の崖際に鹿のようなモンスターが立っており、空を見上げて佇んでいた。遠くにいたため、詳細な姿は見えずシルエットだけがぼんやりと見える程度だったが、頭から生えた角は……まるで翼が生えているかのように大きく見えた。

 おじさんと会話せずに道なりに進んでいたら、今頃あんなやつと戦う事になっていたのかと思うとゾッとする。


 しばらく浜辺を進んでいくとモンスターの群れを発見する。

 そいつらの中心に焚き火があり、その周りを囲うようにトゲトゲしい木製の柵がいくつか置いてあった。

 そして、柵の近くに1本だけ奇妙な模様が書かれた旗が建てられている。


 肌は灰色で二足歩行、道具を扱う小人のような姿をし、

 尖った耳に長く伸びた鼻、腰にだけ布を巻いたその姿は、

 誰もが一度は創作で見たことのある“ゴブリン”そのものだった。

 あれはいわゆるゴブリンだと誰もが推測できた。


 俺達は急いで岩陰に隠れ、様子を伺う。

 岩陰から顔を覗かせていたコウキが、小声で呟く。


「おい あれがゴブリンじゃないか?」


「たぶんそうだろうね… たしかシュウヘイくんがクエストを持ってたよね? 倒す前にクエストを開始しておこう!」


「ぁっ…… わかりました…」


 シュウヘイがウィンドウを操作し、クエストを開始する。


「はい… これで行けると思います。」


「よし、まずは一匹ずつ誘き出そう!…」


 ゴブリン達は目視できる限りだと手前側に歩いているゴブリンが2匹、焚き火を囲んでいるゴブリンが3匹、その奥にもう1匹見える。


「おびき出すって.. どうやって…」


 ハヤテが小さく首を傾げながら提案する。


「石を投げて注意を引くとか?…」


「そんなんでうまくいくのかよ…」


「……でも、他にいい方法が思いつかないよ.. コウキは投げるの得意だったりするか?」


「あ~ 昔野球やってたけど、さすがにここからじゃ無理だぜ..?」


「じゃぁ もう少し近付いて... あの岩の後ろからとか、投げられないか?」


 嫌そうに顔をしかめたコウキが、石を拾いながら振り返る。


「マジかよ… まぁ行くけどよぉ… ぜってぇ逃げんじゃねぇぞ?アイツが追いかけてきたらちゃんと戦えよな…?」


「わかったわかった、  誘き出すなら俺達が今居るこの岩場よりも後ろで戦おう…」


 作戦を決め、コウキが定位置に着くと石を手に取る。

 おそらく巡回しているゴブリンが一匹、右手に棍棒と左手に木製の盾らしき物を持ったまま近付いてくる。

 ゴブリンがキョロキョロしたまま背を向けて群れの方に戻ろうとしたタイミングでコウキが石を投げつけた。

 石はゴブリンの頭部に命中し、驚いたゴブリンは武器を構えて周りをキョロキョロし始めた。

 しかし、周りを警戒するだけでその場から動こうとしない、コウキがハヤテの方を見ると、もう一度投げろとハヤテがジェスチャーで合図を送る。


 渋々投げたコウキの2打目がゴブリンの手前で落ち、音に気付いたゴブリンが石の方へと近付く。

 これだ!と思ったコウキが続けて3打目4打目と続けて投げる。

 ゴブリンが充分近付いたと思ったコウキがゴブリンの前に姿を表す。


「ヒギャァァァ!! …」


 ゴブリンが奇声を発しながらコウキに向かって走ってくる。

 コウキはそのまま背を向けハヤテ達の居る岩陰の方まで走る。

 コウキは岩陰の近くまで来ると、ハヤテ達の元には行かず、すぐ横を通り過ぎる。

 ゴブリンが岩陰を通り過ぎようとしたその時、飛び出したハヤテが不意を突いてゴブリンの脇腹を切り上げる!


 ゴブリンはそのまま吹き飛び地面へと倒れ込む。

 すかさず岩陰に隠れていたユウナ以外の4人が走り出し、コウキも合流する形でゴブリンを取り囲む。

 起き上がったゴブリンはその場から動かず、盾を体の前で構えて周りを見渡し、まるで俺達の顔を1人1人確認している様だった...


(コイツ!?… ゲームのAIなのに俺達の人数を確認している…!?)

(近くにいるプレイヤーに追従するわけでも、あらかじめ決められた挙動でもない... 体はずっと正面を向きつつ、最小限の動作で周りを見ている。何より顔と視線の角度が俺達の顔の高さに合いすぎている…)


 一帯に緊張が走り、誰も斬りかかろうとしなかった。

 最初に動いたのはゴブリンの方からだった。

 ゴブリンはハヤテの方へと走って行き、自分の腕よりも太い棍棒を振り上げる。

 一撃、二撃と棍棒を振るが、ハヤテが後ろに下がりながら避けていく。

 ゴブリンは再び奇声を発しながらハヤテを追いかけ連続で棍棒を振り回す。

 ハヤテが下がり過ぎた所為で陣形が乱れ、動揺しているみんなは足が動かなかった。

 真っ先にコウキが走り出す。

 ハヤテへの攻撃が止み、一息つこうとしているゴブリンを左側からコウキが斬りつける。

 ゴブリンには見えていたのか、それともコウキが叫んだからなのか、ゴブリンはコウキに気付くとその攻撃をあっさりと交わし、2回ほどバックステップを踏み距離を取る。


 1テンポ遅れてやってきた他3人が再びゴブリンを取り囲む。

 コウキがゴブリンと睨み合っている中、今度はゴブリンの左側に居たレンが斬りかかる。

 するとゴブリンは盾でレンの攻撃を受け止め、左に受け流すと、右手に持っていた棍棒でレンの左太ももを強打する。

 あまりの痛みに膝から崩れるレンに、再び振り抜いた棍棒が今度はレンの顔面に直撃する。

 血飛沫と共にその場に倒れるレン。


「クッソォォォ‐!! 」


 頭に血が登ったコウキがゴブリンを斬りつけるが、またもやあっさりとかわされてしまう。

 再びコウキにヘイトが向くと、距離を取り直したハヤテが、周囲へ鋭く指示を飛ばす。


「やみくもに攻撃しちゃ駄目だ! 誰かが狙われている時に、後ろから確実に仕留めるんだ! 側面からの攻撃じゃ効果が無い!」


「「「・・・!?」」」


「コウキ! そのまま引き付けつつ、できればかわすんじゃなくて、ガードしてできるだけゴブリンが動かないようにしてくれ!」


「...んなこと言われてもよぉ!!....」


 攻撃をかわすことで精一杯だったコウキだったが、意を決してガードの体勢に入る。

 剣の腹を相手に向け、まるで野球のバントをするかのような構えで相手の様子を見る。

 ゴブリンが大きく振りかぶったのに合わせて剣を突き出すコウキだったが、棍棒が剣の腹に当たった途端、添えていた左手は剣を離れ、剣もろともコウキの脇腹を強打した。

 コウキがその場に膝をつくものの、一瞬の隙が生まれ、ハヤテが後ろからゴブリンを攻撃する。


 再び背中を斬りつけられたゴブリンは痛みで奇声を発し、よろめきながら俺の方へと移動してくる。

 チャンスだと思った俺はゴブリンに斬りかかるも、ゴブリンはすぐに体勢を立て直し、持っていた盾で俺の攻撃は弾かれてしまった。


(コイツ!?... パリィもできるのかよ!!....)


【パリィ】:盾などで攻撃を弾き、相手の体勢を崩す防御技術。


 体制を崩した俺のスネにゴブリンの攻撃が命中する。

 痛みで膝をついてしまうと、今度はゴブリンが飛び上がり、ドロップキックをかましてくる。

 俺はそのまま勢い良く後ろに倒れ込んでしまった。


(コイツ..どんなAI積んでんだ.... 攻撃も回避も多彩すぎるだろ)


「ギャヒャッ! ギャヒャヒャ!」


 余裕の表れなのか、その場で2回ほど威嚇の声を上げると、再び俺を攻撃しようとする。

 後ろからハヤテが襲いかかって来ており、ゴブリンは咄嗟にかわすも剣が足をかすめてしまう。

 痛がりながら後退するゴブリンだったが、飛び退いた先が悪かった。

 起き上がったコウキが、今度は息を止めて渾身の横払いをする。


 ゴブリンがコウキに気付き、振り返った頃には、

 すでに頭と胴が離れていた。




 しばしの沈黙の後、ハヤテがレンに駆け寄り肩に手を添える。


「大丈夫かレン!!」


 鼻を押さえながら立ち上がるレン。


「・・大丈夫です...  もろ顔面にもらいましたけど... 痛みは引きました... ちょっと鼻血が出るだけです....」


 レンの無事を確認して皆がホッとする。

 その後、ハヤテの指示でポーションを取り出し、怪我の具合に合わせて全員で分けあった。


小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。

読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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