表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

17.虚ろな目

 全員が全快したことを確認するとハヤテは、立ち上がってゴブリンの死体へと近付く。

 ハヤテが足を止める前に死体が灰色の粒子になって消えていってしまった。

 しかし、死体があった場所の棍棒と盾が落ちていることに気付いたハヤテは、それを手に取る。


 棍棒を手に取り、ダブルタップするとウィンドウが表示され、棍棒を所有するか問われる。


  《粗悪な棍棒》を入手しますか?


   [ はい ]      [いいえ]

                    』


「おーい! ちょっとみんな来てくれ!」


 ハヤテの号令で全員がハヤテのもとに集まる。


「これ、 さっきのゴブリンが落とした棍棒なんだけど、なんかゲットできそうだから、 とりあえず [はい]を押してみてもいいかな?」


「あ~ いいんじゃね?そこまで強そうにも見えないし、誰が貰ってもいいだろ?それに今回はハヤテが一番活躍したようなもんだし」


「ありがとうコウキ! じゃぁ... 遠慮なく」


 ハヤテが[はい]を押すと手に持っていた棍棒が消えてしまった。

 ハヤテは一瞬驚いたが、冷静になってインベントリーを開く。


「なるほど、手に入れたアイテムはインベントリーに直接送られるのか」


 後ろからコウキの声が聞こえてくる。


「なぁ、こっちの盾は俺が貰っていいか? ...って... あれ... 何も反応しねぇ...」


 コウキが何度ダブルタップをしてもシステムウィンドウが表示されなかった。


「・・オルステラが言ってましたよ、タンクをできないようにするために盾は廃止したって...」


「でも、現にゴブリンを倒しても消えずに残ってるし、インベントリーに入れられなくても、こうして持ち歩けば普通に使えるんじゃねぇか?」


「手に入れたり装備したり、売ったり強化したり出来ないだけで、オブジェクトとしてはこの世界に残ってるのかもね、 問題は街に持って入ったら消えたりしないかが心配だけど...」


「よっしゃ、じゃぁ俺がこの盾使ってタンクやるから、さっさともう1匹行こうぜ」


「わかった、じゃぁもう1回おびき出してくれないかな?」


 コウキが石を拾い上げながら親指を立てる。


「OK!、まかしとけ」


 先程と同じようにコウキが石を投げ、また1匹誘き出すことに成功する。

 岩陰を通り過ぎると同時にハヤテとレンが襲いかかる。


「ギィィィッ――!!」


 ハヤテとレンで合計2回斬りつけ、悲鳴と共にゴブリンが吹き飛び転げ回る。

 追撃をしようとするとゴブリンはすぐに起き上がり威嚇をしてくる。


 2人は立ち止まり、ゴブリンと距離を置きながら様子を見ている。

 するとハヤテはこのゴブリンが棍棒しか持っていないことに気付く。


「このゴブリンは盾を持っていない!!慎重にタイミングを見極めれば、確実に攻撃できるはずだ!」


 ハヤテの言葉で、全員が再びゴブリンを囲い込む形で陣形を取り始める。


「オラァ! こっちだ!こっち!! かかってこいや!」


 コウキが剣で盾を叩いてゴブリンの注意を引こうとする。

 それに釣られたゴブリンは駆け出すと、大きく跳躍しながら棍棒を振り下ろした。


 ゴンッ!


「ぐわっ...  いっってぇー!!」


 コウキがゴブリンの攻撃を受け止めながら痛みを叫んでいた。

 続けてゴブリンが攻撃を重ねてくるが、3回目の攻撃を防ぎきったところでコウキは盾を落としてしまう。


 大きく振りかぶったゴブリンの攻撃をコウキが避けると、後ろからやってきたハヤテに斬りつけられ、ゴブリンは砂浜にうつ伏せで倒れ込む。

 今度は起き上がる暇を与えず、レンが思い切り上から剣を突き刺し、ゴブリンの腹を貫通して砂浜に刺さる。

 そして、ゴブリンが動きを止めるまで、レンは力を込めて剣を押さえつけていた。

 ゴブリンが灰になって消えていくのを確認するとコウキは砂浜に座り込み文句を言い始める。


「おいふざけんなって~ 盾で防いでも全然痛ぇじゃん... 衝撃がもろ腕に来たんだけどぉ...」


「・・やっぱり、廃止するにあたって性能が落とされたのでしょうか?・・」


「そうだね~ その可能性はあるし、単純にゴブリンが使っていた盾が弱いだけかもしれないし...」


 ハヤテは拾った盾を眺めながら苦笑する。

 

「ん~ まぁ 普通に考えれば木の板に取っ手が付いてるだけの物でモンスターの攻撃が防げちゃう方が不自然って言ったら不自然だからね... このゲームはその辺の物理演算を限りなく現実のモノに近付けているのかな?...」


「たしかに... 剣とかもめっちゃ重くて最初は攻撃なんてまともに出来なかったからな... 今は慣れたからいいけど...」


「・・こんな調子で自分たちよりも何倍も大きいボスとかと戦えるのでしょうか...」


 コウキが肩を回しながらぼやく。


「メ◯ゾーマみたいなデッカイ攻撃魔法とか?あと◯ードスキルみたいな剣技があって火力のインフレが進むならいいけど、オープニングセレモニーで無いって言われたしなぁ...」


「加えて、前衛が攻撃を受けて後ろから弓でチクチクする戦術も出来ないしね..このゲームは.. 本当にクリアさせる気があるのかな...」


 3人が頭を抱えて悩んでいると、コウキが顔をあげてシュウヘイの方を見る。


「シュウヘイはどう思う?」


「・・・えっ!? 僕ですか?… えっと… そ...そうですね……」


 少し考えた後に再び口を開く。


「ォ...オルステラが...レジェンダリー級の武器をゲットするのが攻略の鍵.... みたいなこと言ってましたし、強さは...武器に依存するんじゃないかなと...」


「まぁ~ そうなるよな~ 魔法もスキルも無いんじゃ武器にどうにかしてもらうしかねぇな」


「けど、その2つが無いって大々的に公言しているのに、武器を手に入れたからって大技が打てるようになるとか、そういうのは無いんじゃないかな?」


「じゃぁ 武器の攻撃力だけでどうにかしろってか~? 無理あるぜそれ~... そもそもそんなのクソ面白くもねぇ」


「ぁっ... ぇぇえっと... あと!... モ◯ハンみたいに、罠を仕掛けたり、毒で弱らせたり、アイテムを駆使して戦うんじゃないですかね?.....」


「あぁ~! たしかに、それもあるなぁ~ てかそれが一番可能性あるんじゃないか!? 流石シュウヘイ~!」


 コウキにおだてられて照れくさそうに笑うシュウヘイ。

 彼はいつの間にか3人と仲良くなっていた。


「考えても仕方ないし、どんどん次を行こう!ここが他のプレイヤーに見つかる前に狩れるだけ狩っておこう!」


「・・・今日の食費と宿泊費も稼がないと……ですしね・・」


「いっちょやりますかっ!」


 全員立ち上がり、再び狩りを再開する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そこからの戦闘は順調だった。

 皆戦闘に慣れてきたこともあり、ゴブリン1匹を相手にするだけならそこまで苦戦することもなく、

 ポーションの消費を最小限に抑えられた。


 最後のゴブリンを倒すと、レベルアップの表示が出現する。

 砂浜に腰を下ろしたコウキが大きく伸びをする。


「ようやくレベル3か~ 先は長いな~」


「・・でも、6匹倒してレベルがあがるってことは.. あのネズミの倍以上の経験値が貰えるみたいですね・・」


「そうだね、俺的にもネズミよりゴブリンの方が戦いやすいし、もしかしたらクエストとか関係なく、しばらくはここでゴブリン狩りをするのが最適かもね。」


「あ~そういえば、シュウヘイが受けたクエストにゴブリンが居なかったっけ?あれはどうなった?」


「あ... えっと... クエストは...進んでません... フレイフェイス・ゴブリンじゃなかったみたいです... 」


 コウキが露骨に嫌そうな顔をする。


「マジ? ゴブリンって何種類もいんのかよ...」


「これは~地道に探していくしか無いね... なんだったら、クエストを破棄してもっと簡単そうなクエストを受け直しても良いと思うよ?」


「そう...ですね... あまり考えずに受けてしまって... ごめんなさい...」


「・・大丈夫だよ.. 少なくともゴブリンが2種類以上いることは分かったんだし・・」


「そうだね、今度クエストボードでフレイフェイス・ゴブリン以外の名前を見つけたら、ここのゴブリン達の可能性もあるわけだし、候補を1つ潰せただけでも良いことだよ!」


「あ… ありがとうございます……」


 などと会話が続く中、コウキの背中側にゴブリンが1匹出現したところをハヤテが目にする。


「みんな! ゴブリンがリポップしたみたいだ!」


 ハヤテの声で全員がゴブリンの方へ顔を向ける。


「なぁハヤテ、ゴブリンも一匹しかいないし、誘き寄せるの面倒だからちゃちゃっと倒さないか?」


「ん~ そうだね、 でも安全を考慮してコイツだけは誘き出して置かないか? コイツを倒しても数分間他のゴブリンがリポップしなかったら次からは誘き出さずに倒そう!」


「まぁ、しゃぁないかっ、わかった、ちょっと行ってくる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そうして次の1匹を倒し終えても他のゴブリンがリポップする気配は無かった。

 恐らく、リポップ時間は個体毎に別々で計算されているらしい。

 一周目で時間をかけて倒したこともあり、リポップするタイミングがかなりバラけ、1匹ずつ確実にかることが出来た。


 昼におじさんが居た場所でリュメン草を取りつつ、ご飯を食べるために一度街へ戻り、再び海岸でゴブリンを狩る。


 レベルが4に上がる頃には、西の空が橙に染まり始めていた。


「クッソ.... 1日中狩ってレベル4か~ 」


「他のゲームなら.. レベル20とかそこら辺まで上がっていてもおかしくないのにね... 」


 時間を置いているとはいえ、みんなの顔に疲れが見えてきた。


「今日はこの辺にしとくか?」


 ハヤテが答える前に、近くでゴブリンがリポップする。


「じゃぁ、アイツだけ狩ってから帰ろう!」


「OK~」


 全員が立ち上がり剣を構える。


 いつも通りコウキが最初にゴブリンの気を引き、全員で囲い込む。

 ここからは慣れたものだ。

 誰しもが勝ちを確信し、コウキの余裕に満ちた笑顔に釣られ、みんなの表情も緩み始めていた。


 しかし、コウキ以外の顔が一瞬にして青ざめる。

 なぜなら、コウキの後ろに、急に現れた奇形な姿をしたモンスターを見たからだ。



 身長はコウキの2倍近くある。

 体表は腐肉に覆われ、所々緑がかっており、本来あるはずの獣の皮はほとんど残っていなかった。

 角は枝のように無数に増殖し、目は虚ろで光を宿していない。

 何より醜悪なのは、胴体の下半分は肉がなく、あばら骨が剥き出しになっており、中にあるはずの臓器が1つも見当たらない。



「あれって...!?」


「・・あの おじさんが言っていた、鹿じゃないですか!?・・」


(アイツは... 今朝崖の上に立ってた.... まさか!? 崖を降りてきたのか!?....)


 全員が動揺して、数秒間動きを止めてしまった。

 ゴブリンの攻撃をいなしつつ、不思議に思ったコウキが皆に声をかける。


「おい! みんなどうしたんだよ!」


 コウキの呼びかけで我に返るハヤテ。


「ハッ!?... コウキ!後ろだ! 逃げろ!」


「えっ!?……」


 コウキが振り返る前に、コウキの背中を無数の角が貫いた。


「グオォーン!!……」


 大きな鳴き声と共に、コウキの体が勢い良く持ち上げられる。

 鹿が大きく角を振り回したにも関わらず、コウキの体が抜ける気配がなかった。


 目を見開き、一言も声を発せず... ただ口から大量の血を垂れ流しているだけで、ピクリとも動かないコウキが目に入る。


 俺達は、あまりの恐怖にその場で立ち尽くした。

 コウキとやり合っていたゴブリンは鹿に怯えてその場から走り去る。


「いやあああっ!!」


 戦闘に参加していなかったユウナが遠くで悲鳴を上げ、街の方に向かって逃げていくのが見えた。


 シュウヘイは腰を抜かして地面に座り込み、他2人は震えながらも剣を構え、相手から目を離さなかった。


(こんな奴に...勝てるわけがない!!)


(朝からゴブリンと戦っていたが、他のプレイヤーにこの狩り場が見つかる事は無かった。つまり、ここで全滅したら救いに来てくれる人はいない... 俺達は... ここで死ぬ....)


 直感でそう感じた俺は自然と辺りを見渡し、どうすれば逃げられるのかを考える。


 すると、ハヤテが大声を上げ、俺達に指示を出す。


「レンとアキラさんは左右から挟み込んでください!」


 レンと俺は戸惑いながらも適切な距離を取りつつ敵の側面へと迂回する。

 2人が位置に着くと鹿がキョロキョロと周りを警戒する。


「ここでコイツを仕留める! コウキを絶対に救うぞ!!」


 大声で叫ぶハヤテとしばらく対峙する鹿型のモンスター。


「グオォーン!!……」と再び咆哮を上げ走り出す。


 俺は、思わず叫ぶ。


「ちょっと待て 俺かよ!!」


 走り出した鹿はなぜかハヤテではなく俺の方に走り寄ってきた。


「クッソ!!」


 必死に避けようとしたが鹿の角があまりにも大きく、攻撃範囲が広いため避けきれなかった。

 大きく吹き飛ばされた俺は海の方へと落ちていった。


 その頃、完全に背中を向けた鹿にレンが走り寄り、鹿の尻を目掛けて斬りつける。

 続いてハヤテも側面から攻撃するがあばら骨に剣が弾かれてしまう。

 振り返りざまに攻撃した鹿の角がハヤテを吹き飛ばす、幸いにも鹿と距離が近かったため、角の側面で攻撃を受け貫かれることは無かった。


 しかし、1人残されたレンは必死に鹿の尻側へ張り付き、紙一重で攻撃を交わし続けた。



 俺はというと、海の中に落ちることはなかったが、波が押し寄せると顔以外が水に浸かるところまで吹き飛ばされ、仰向けで倒れていた。


 全身が痛い。


 いっそこのまま、立ち上がらずに死んだふりをしていれば助かるんじゃないかと思ってしまう。


 だが、このゲームがそう簡単に見逃してくれるわけもない。


 それに、仲間が必死で戦っているのに自分だけ助かろうなんて、何を考えているのだろうか。


 どうにか立ち上がろうと全身に力を入れる。

 

 立ち上がれない……

 

 というより足の感覚が無かった……

 

 どうにか上半身を起こすと、自分の両足が欠損していることに気付く。


「.....ゥ!?..... うわぁぁぁぁ!!!……」


 柄にもなく大声で叫んでしまった。


(アッ....ッ.....クッ.... ハッ!?... どういうことだ... さっき吹き飛ばされた時か!?…… )


 混乱する脳内で、どうにか状況を整理しようと奮闘していた。


(まずい!まずい!まずい!……足をやられた!… このままじゃ戦うことは愚か逃げることすら出来ない!… っていうか 治るのかこれ!? ずっとこのままなのか!? 治らなかったら、俺は明日からどうやって生きていけばいい!……)


 痛みに耐えながら必死に体を動かし、どうにか海水が当たらない場所まで這い出てきた。


(どうする!? とりあえず回復ポーションだ!...)


 インベントリーから回復ポーションを取り出すと一気に飲み干す。


 HPは回復するが足は治らず、回復したはずのHPバーが徐々に減っていくのが見えた。

 そしてHPバーの近くに見慣れない水滴のようなアイコンが表示されているのに気付く。


(これって... もしかして出血ダメージか!?)


 傷口を塞がないとHPが減り続けてしまう状態異常のことだ。


 しかし、他のゲームでよくある包帯などの止血アイテムは持っていない。

 俺は半信半疑だったが、回復ポーションをもう1つ取り出して足にかけた。


 コウキの傷を治療した時にまるで魔法のように傷口が塞がっていったことを思い出し、試してみたが、傷が塞がることと足が生えてくるのは全然違う。

これで治らなかったら立ち直れないかもしれない……


 ポーションをかけた瞬間、足の痛みが一気に引いていく。


 だが、欠損した両足は戻らない。


 ――回復しないのか。


 そう思った矢先だった。


 断面の肉が脈打つように蠢き、傷口から新しい皮膚がじわじわと伸び始める。


 まるで3Dプリンターのように、失った足が少しずつ形成されていく。


 再生速度は遅い。

 だが確実に、俺の身体は元に戻ろうとしていた。


 生還した安堵と、死の淵を覗いた興奮で、頭の芯が焼けるように熱かった。

 だが、安心するにはまだ早い。

 俺はすぐにレン達の方を振り返った。

小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。

読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

よろしければ感想や評価も励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ