13.シェアクエスト
突然チュートリアルが始まりこちらに指示をしてくる。
「うわっ! なんか急にチュートリアルが始まったな」
「ほんとだね、もっと説明して欲しいことは沢山あるのに、なんでここだけ...」
ハヤテ達はもっともな疑問を漏らしながらも、目の前に提示されたチュートリアルを読み進めていく。
要するに内容はこうだ。
クエストボードに近付くと視界にアイコンが表示され、タッチすると受注画面がポップする。
ーークエストには4つの種類が存在する。――
【デイリークエスト】
・全プレイヤーが毎日ランダムな4つのクエストを自動で受注する。
・報酬を受け取れるのは当人のみ。
【シェアクエスト】
・クエストボードに貼られた日替わりクエスト。
・1人3つまで所持でき、数に限りがある。
【サイドクエスト】
・NPCから受注するクエスト、誰でも一度だけ受けることができる。
・何らかの理由でNPCが殺された場合、あるいは進行不可に陥ると、
クエストも消滅する。
【メインクエスト】
・誰でも受けることができる。
・ただし、報酬を受け取れるのは全プレイヤーの中で最初にクリアした一人のみ。
・誰かがクリアした時点でクエストは消滅する。
デイリークエストとシェアクエストは冒険者協会の受付でしか報酬は受け取れず、サイドクエストとメインクエストに関しては、受注したNPC、もしくはその場所に行かないと報酬を受け取ることは出来ない。
そして、冒険者協会のクエストボードで受けることのできるクエストは【シェアクエスト】のみである。
シェアクエストは受注完了と同時にオブジェクト化され、丸められた手漉き紙(依頼書)がインベントリー内に格納される。
オブジェクト化されたシェアクエストは、現物を他人に手渡しすることで譲渡することができる。
※依頼書に所有権は存在しない。
メインメニューのクエスト、もしくは依頼書を広げることでクエストの内容が確認でき、クエストを開始するかどうかを問われる。
※報酬を受け取れるのは、クエスト開始時に依頼書を持っていたプレイヤーのみである。
「デイリークエストって……なんかソシャゲみてぇだな..」
「・・・最近のMMOは、みんなこうですよ?・・プレイヤー人口を保つ為だったり、毎日ログインしてもらって賑わっていると思ってもらわないといけないですから...」
「この所有権?... っていうのはなんだろうね?」
「これは~あれだろ?武器とか防具の詳細を開いた時に左上に出てくるやつ!」
コウキに助言されて、すかさずインベントリーを開くハヤテ。
「ほんとだ、左上に名前が書いてあるね。」
気になって俺もインベントリーを開いて確認する。
確かに武器の見た目が表示される描写枠の左上に《所有者:アキラ》と書かれている。
武器や防具だけでなく、モンスターからドロップした素材アイテムにも所有者が記載されている。
しかし、ポーションなどの恐らく消費アイテムと呼ばれるアイテムには、その記載が無かった。
インベントリーを閉じながら、ハヤテが首を傾げる。
「この所有権? ってなんの意味があるんだ?」
「・・恐らく、プレイヤー間で武器やアイテムの取引をする際に制限をかけるためだと思います……もしくは...インベントリーから出したアイテムを盗まれないようにするため...とか・・」
「へぇ~ なぁレン、試しに腰の剣、俺に貸してくんね?」
「・・えぇ!? なんでですか!?……」
「盗めるか試してみるだけだって~ 大丈夫! ほんとに盗んだりしねぇよw」
「・・そ...そうですね、仕様を把握するためにも……試しておく必要がありますね・・」
レンがコウキに剣を渡し、コウキが剣をじっくり眺めている。
剣を抜いたり、誰もいない所で振り回しているが、特に変化は無いらしい。
しかし、剣をダブルタップするとシステムウィンドウがポップし、《所有者権限が無いため、インベントリーに入れることはできません》と表示された。
「へぇ~ インベントリーには入れられないのか、そりゃそうか。」
「・・・」
不安そうに見つめるレンに向かって少し笑いながらコウキが提案する。
「なぁ、この剣持ったまま遠くに逃げたらどうなるか、試してみてもいいか?w」
「えぇ!!... ちょっ.....!!」
レンが制止する暇も無く走り出してしまうコウキだった。
なにやってんだ...と言いたげな表情のハヤテが仕切り直して現状確認を進める。
「要するに、冒険者ギルドで受けられるクエストは、この《シェアクエスト》って掲示板に貼られている依頼だけみたいだな。」
「あのぉ... この掲示板に載っているクエスト...段々減っている気がしませんか?...」
恐る恐るハヤテに尋ねたのは、ユウナだった。
「ん? そうかな? 減ってるようには~ ・・・? 確かに……さっきまでタブが20何ページまで表示されてたのに、もう18まで減ってる……」
「さっきの!、数に限りがあるって、これの事なんじゃないですか!?...」
「よしっ! 一旦ウィンドウを閉じて、もっかい確認してみよう! 戻ってるかもしれないし」
受注画面を何度も更新していたハヤテが、焦ったように声を上げる。
「ダメだ... ウィンドウを更新しても、数は戻ってない!」
「これ、マズくないですか!? 私たちも早く何か受けないと!」
「そうだね... レン! コウキのことは放っといて、良さそうなクエストが無いか探してくれ!」
「・・……そう...ですね...わかりました。・・」
「それに、シュウヘイ君とアキラさんも! 1人3つまでらしいから、なんでもいいから受けちゃって!」
急に話を振られ、俺は少し遅れて返事をした。
「ぁ……あぁ……わかった」
(良さそうって言ってもな...モンスターの討伐依頼がほとんどだけど、名前を見てもどのモンスターかわかんねぇ……戦闘中も名前が表示されなかったし、図鑑らしき物も無いしな……)
(とにかく端から順に見ていこう……
え~っと~
・グナウラーを10匹討伐 報酬金100G 600Exp
・フェロウボアを5体討伐 報酬金200G 900Exp
・アザレクスを3匹討伐 報酬金300G 1200Exp
・ナイトボアの肉を5個納品 報酬金400G 500Exp
・リュメン草を10個納品 報酬金100G 150Exp
・スラッジフィッシュを10匹納品 報酬金200G 250Exp )
(フェロウボアとナイトボアって違う種類なんか?……ボアってことはイノシシだよな?たぶん.. でも、フェロウボアは討伐でナイトボアは肉の納品?? どっちも討伐にしてくれれば早いのに...)
(スラッジフィッシュは確かレンが食べてた魚~...だよな? リュメン草も・・・ん?...草の納品とモンスター10匹の報酬金が同じなんて……てか肉の納品が一番高い... 討伐系は経験値の方が多いから報酬金は安いのか?)
少し弾んだ声でハヤテがみんなに問いかける。
「おい!みんな! 鉄鉱石の納品ってのがあったぞ! 採取系なら俺達でもできるんじゃないかな!?」
「・・でも、僕達まだゲットしたことありませんよ?……どこで採れるかもわからないですし・・」
「鉄鉱石なんてどのゲームも手に入れる方法はそう変わらないとよ。とりあえず、ピッケルか何か道具を持っていれば見つけ次第掘れるんじゃないかな? それに、討伐系に比べたら遥かに安全だと思うし。 みんなも!できれば採取系を集めてくれないか?」
「・・・でも、報酬の欄をよく見てください……討伐系の方が経験値の貰える量は圧倒的に多いです。レベルを上げなきゃ前に進めないですし、最低限1人1つは討伐系を持っておきませんか?・・」
少し考え込むように視線を落とした後、ハヤテが静かに頷く。
「そう....だね。お金は素材を売ったり節約したりでどうにかできるけど、経験値は他に得る方法がわからないからね、レベルが上がれば敵を簡単に倒せるようになって安全性も上がるし、効率を考えたらさっさとレベルを上げる方が良いかもしれないね。」
と、俺達がシェアクエストの内容を吟味していると、外に出ていったコウキが戻ってくる。
「レン!剣はどうだ?戻って来てるか!?」
「・・何言ってるんですか?... って....手ぶらじゃないですか!?・・僕の剣は!?」
「だから! お前から借りた剣が途中で消えちまったんだよ! お前の所に戻ってきてないか?」
「・・いえ……特に腰にも手元にも戻ってきてないですね...」
「まじかよ! ごめん..消えてなくなったかもしれん!」
「・・・ちょっと!...何してるんですか!? 僕は明日からどうやって戦えば...」
「レンもコウキも落ち着いて! レン、インベントリーは確認したか?」
「・・いえ…まだですけど...」
そう言って素早くインベントリーの中を確認するレン。
「所有権って言うからには他人に盗まれたり使われたりするのを防ぐ機能だと思うんだ...だから手元に戻ってくると思うんだけど、急に出現したら返してもらった側も困るからインベントリーに入れられたんじゃないかな?」
「・・ほんとだ...! ありました! 良かったです・・」
「うぉー! 良かった!マジで無くしたかとおもった~ ありがとなハヤテ!」
「はいはい、 そんなことより..コウキも早くクエストを受けたほうが良いよ!良さそうなやつはどんどんなくなっちゃうから!」
「え、マジ? 早いもの勝ちってこと!? やっべ!」
急いで受注画面を開いて探し始めるコウキだったが、既に残りの10ページを切っていた。
(元々が何ページあったかわからないけど、少なくとも1つのサーバーに数千人は居るはず...受注画面には縦3列の横5列が表示されてるから1ページ辺りの依頼は15個... 俺達が最初に見た時は20数ページあった、それでもクエストの数は300ちょい、1人のプレイヤーが毎日クエストを3つ受けるとしたら、圧倒的に足りない... かと言ってページ数を増やしても見づらいだけだし、こんな夕方まで残ってることなんてあるか?まだみんなクエストの存在を知らないだけ?... それか、クエストが追加されるタイミングがあるのか?....今日はたまたまタイミングが良かっただけ...?)
自分の世界に入り込み、周囲の音が耳に入らなくなるほど考え込んでいると、
突然、ハヤテの声が脳裏まで聞こえて来て我に帰る。
「みんな!クエストは受けられた? 受けられたなら、ここは騒がしいから外で話さないか?」
全員が各々の方法で同意の意思をハヤテに伝えると、一行はギルドの外に出る。
ギルド前の広場で、ちょうど空いているベンチを見つけ、コウキが我先にと座る。
その隣にハヤテが座り、他のメンバーは自然とその場に集まる流れだった。
「よし、 じゃぁみんな、クエストは3つ受けられたかな?」
「・・なんとか・・・」
ベンチに深く腰掛けたまま、コウキが片手を上げる。
「俺も取り敢えず3つ受けたぜ?」
「私も受けられました...」
俺とシュウヘイも頷く。
「そっか、良かった、これってメインメニューか現物を開いてクエスト開始を押さないと始まらないんだっけ?試しに一個試してみるね」
ハヤテはメインメニューを開きクエストの項目から受注しているクエストを1つ選んで開始ボタンを押した。
「どう? みんなのところにも表示された?」
「いや? 何もねぇぞ? てかこういうのって開始する前にメンバーに参加の確認が出てくるんじゃ?」
「・・無いですね....・・・多分ですけど...チュートリアルで報酬を受け取れるのは開始時に依頼書を持っていた人間だけと書いてあったので...もしかしたら、パーティで共有するクエストでは無いかもしれません・・」
「だとすると、パーティ内で所持金や経験値に差が生まれそうだね...」
「マジか! よかった~ 俺必死で経験値や金が多いやつを探した甲斐があったぜ~」
「そうでもないよ... 報酬が高いってことはそれだけクリアが難しいってことさ。もし討伐対象が昼間に戦った飛行型モンスターを10体討伐しろ、とかだったら...クリアは難しいかもね...」
「えぇぇ!? たしかに……そこら辺、あんま見てなかったかも...」
「・・それに、門の一番近くにいるあのネズミですら手強いですし、パーティメンバーが手分けして各々のクエストをクリアするのはほぼ不可能ですね・・・パーティの行動方針に合わないクエストはやらないほうが良いかもしれませんね・・・」
「じゃぁ どうすんだ?? ローテーションで回すか?」
「まった、 討伐対象が同じモンスターのクエストなら同時進行できるんじゃないか?」
「・・・たしかにそうですね、パーティで共有しないのであれば各々の進行状況に依存しますし、仮に1人が同じようなクエストを2つ持っていても同時進行は可能だと思います……少なくとも僕がやってきた大抵のゲームではそうでした・・・」
「なるほど……みんな! 受けたクエストを1人ずつ言って行ってくれないか?」
・・・
最初に口を開いたのはレンだった。
「・・僕が受けたのは....グナウラーの討伐と、リュメン草の採取と、フェロウボアの討伐です・・」
「俺は~アザレクスの討伐に? ナイトボアの肉の納品.... アンデッドディアの討伐?.... ダメだ全部わかんねぇ」
「それ、俺も見た気がするね、たしかに報酬は高かったからよく覚えてるよ、難しそうだったからやめておいたけど...」
「言うなって~....そういうハヤテは何を受けたんだよ?」
「俺はレンと同じリュメン草の採取と、鉄鉱石の採取、ロットトード ??...の討伐だね..」
「お前のモンスターも聞いたこと無い名前じゃんかw 強かったらどうするんだよw」
「モンスター名だけじゃわからないから、とりあえず強さと報酬が中間くらいのモンスターを選んだんだよ」
コウキが嘲笑しながらハヤテを小突き、ハヤテも笑顔でやり返していた。
(またコイツらだけの世界に入り込んでるな、こうなったら長くなりそう...まだ言ってない人いますけど?...)
ようやく気が済んだのかハヤテは笑いながらコチラを向き直り他メンバーに聞き始める。
「他のみんなは何を受けたの?」
「私も... リュメン草の採取と....ヴェルダ苔の採取....カトラの実の採取...の3つです!....」
「みんなリュメン草が好きだねw まぁ唯一見た目を知ってるからね、そこは安心できるよね。じゃぁ 次は... アキラさんは何を受けたの?」
(俺の番か...)
「えっと..... 俺もリュメン草の採取に....グナウラーの討伐と...スラッジフィッシュの納品..かな?」
「意外とみんな被るクエストが多いね、スラッジフィッシュは魚だから釣りをすれば良いのかな?」
(いや...俺に聞かれてもわからんて...)
「たぶん... そうなんじゃないかな?... 街で釣りをしてるNPCを見かけたし...話しかけたら何か教えてくれる...かも?...」
「あ~~...そうですね、そこら辺も確認するためにまた今度みんなで散策してみましょうか」
「あ....ぅ....うん....」
ハヤテは視線を逸らしながらちょっと戸惑ったような笑顔で答えていた。
心にもないことを言わせてしまったのだろう。
「じゃぁ 最後にシュウヘイくんは何を受けたの?」
「ぼ....僕は... グナウラーと...ノクトファングの討伐... ぁ.....あと.....フレイフェイス・ゴブリンを...6体討伐.....です。」
それまで退屈そうに聞いていたコウキが、食いつくように身を乗り出す。
「おぉ! ゴブリンが居たのか! やっとファンタジーっぽくなってきたな!」
「でも.. このゲームのことだから、ろくなモンスターじゃなさそうだね... 頭の方に不気味な単語が付いてるし…… まぁ..取りあえず重なった依頼が多かったリュメン草はやるとして、あとは~・・・グナウラーが多かったけど、このモンスターいったいどこで狩れるんだ?...」
「・・たぶんですけど、一番最初に戦ったネズミじゃないでしょうか? 依頼を比較している時によく名前を見かけましたし、報酬の量も討伐系の依頼の中で一番低かったので可能性は高いと思います・・・」
ハヤテが納得したように腕を組む。
「なるほど……たしかに」
「そもそもモンスターの名前もHPも表示されないってのがクソなんだよな!こんなん、目標のモンスターがどいつなのかも分かんねぇよ!...」
「俺がさっき試しに開始したリュメン草のクエスト情報を見ると、進捗状況のところに[0/10]って書いてあるから、目標のモンスターを倒したらここのカウントが進んで、ついでに名前も分かるんじゃないかな? まぁ...最初に一回倒さなくちゃいけないけど...」
コウキが膝を叩いて声を上げる。
「あ~! なるほど、その手があったか! まぁ一匹くらいなら大丈夫っしょ、狩って損することはないし、仲間さえ呼ばれなければ倒せない相手じゃないしな」
「...またアイツと戦わないとなの....」
ユウナが下を向きながらボソッと呟いた言葉をハヤテは聞き逃さなかった。
「大丈夫、今度も男だけで戦うから、ユウナちゃんは安全な所に居るだけでいいよっ」
「....はい...」
コウキがシュウヘイの元に近寄り肩を組む。
「シュウヘイもっ!今度こそ頑張れよな~」
「は...はい... すみません、」
などと話していると、空を茜色に染めていた陽は完全に落ち、暗い街にランタンの火が灯り始めた。
「よしっ、もう暗いし、今日は食事をしてそのまま宿に泊まろう!」
全員が賛同したことを確認すると、ハヤテは率先して前を歩き、再び飲食街へと足を運んだ。
小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。
読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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