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12.静謐なる教会と冒険者の集い

 北の門から伸びている3つの大通りの内、南西に伸びる街道を進むと、明らかに建築技術の異なる建物が見えてくる。

 街並みの中でも、その建物だけは妙に荘厳だった。

 灰色の石壁と細く伸びた尖塔は、小さな礼拝堂でありながら、まるで古い修道院のような威厳を漂わせている。


「たぶん...これ~ だよね?」


 ハヤテが首をかしげていると隣にコウキが並び立つ。


「ここだけ世界観が違うな……モデルの使い回しじゃねぇか?」


「・・・取り敢えず入ってみましょう・・」


 そう言って教会の両扉に手をかけるレン。

 扉を開いて中に入ると、どこかで見覚えのあるイメージ通りの教会の内装だった。

 両サイドに椅子が並べられ、一番奥の祭壇に神父らしきNPCが立っている。


「うぉ~ すっげ、」


 「・・雰囲気ありますね・・」

 

 パーティメンバーが内装に見惚れている中、ハヤテが他に目もくれず神父の元まで駆け寄る。


「えっと...  あの~ すみません、ここで仲間を蘇生してもらえると聞いたのですが?...」


 するとNPCが反応し、ハヤテに問いかける。


「迷える子羊たちよ、サルヴァリオ教会へようこそ!

      望みは何だ? 相応しい祝福を授けてやろう。」


 定型文じみた返答と共にハヤテの前にシステムウィンドウが表示される。


『 

  ・蘇生

  ・状態異常の解除

  ・サルヴァリオ教会について

                 』


 ハヤテは試しに蘇生の文字を指で押してみる。


「焦る必要はない。

   死神は、まだ君たちの仲間の名を呼んではいない。」


「まぁ...そうだよな」


 ハヤテは状態異常の解除に目を向けるが、先程と同じような返答だろうと悟る。

 ならばと、最後の項目にある「サルヴァリオ教会について」に手を伸ばす。

 すると...


「サルヴァリオ教会は、遠い昔――

  世界に満ちる“歪み”を正すために生まれた教えだ。


  かつて、人の心や大地に溜まる邪気が、

  病や狂気、怪異を招く時代があった。

  それを鎮めるために編み出されたのが、

          サルヴァリオの祝福だ。」


「祝福は、邪気を祓い、

  人が本来持つ力を正しい形へ戻す。

  やがてその祈りは、

  失われかけた命を呼び戻すほどに深まっていった。


  だから我らは、剣ではなく祈りを選んだ。

   それが、サルヴァリオ教会の始まりだ。」


再びハヤテの前に選択肢が提示される。


『  

   ・蘇生

  ・状態異常の解除

  ・サルヴァリオ教会について

  ・※食料を恵んでほしい

                  』


 選択肢の中に赤い文字で書かれた項目が増えていた。

 ハヤテは、再び好奇心のまま追加された選択肢を選ぶ。


「申し訳ないが、今は食料を分けられる状況ではない。

  街全体が食糧難で、教会も孤児の世話で手一杯だ。


  冒険者の糧は、自ら稼いでもらうほかない。

  だが……祝福なら、いつでも力になれる。」


「それに、助けとは必ずしも形のあるものではない。

   立ち止まれる場所があることも、力になる。

   だから、理由がなくともここへ来て構わない。


 冒険者は、前へ進むことを選び続ける者だ。

  だが、立ち止まることまで否定されるわけではない。

  祝福や言葉で、背を支えることならできる。


  ……君も、無理をする必要はない。

  疲れたときは、いつでもここへ戻ってきなさい。」



 ハヤテは一言も発せず、ただ神父の言葉を聞いていた。

 気になった俺とレンも近付いて後ろから聞いていた。

 

 少なくとも、レンもハヤテも神父の言葉に聞き入っているように見えた。

 その低く渋い声と優しい口調が、妙に耳に馴染む。


 普段なら大したことのない、ありがちなNPCのセリフでも

 命がけで戦った俺達からしたら、少し優しくされただけで癒やされたような気持ちになる。

 こんなジメジメして薄暗い街の中で、ここが唯一安らげる場所かもしれない。

 そう思えてきた。


「へ~  このおじいさん、えらいイケボだな~」


「・・・優しそうなおじいさんですね」


「うん!なんかRPGって感じがするね!」


「・・僕、いろいろなゲームをやってきましたけど、NPCの会話をちゃんと最後まで聞いたのは初めてかもしれません。」


「なんだよそれw レンって効率厨だったのか? どちらかと言うと考察動画とかを熱心に見てそうなタイプだと思ってたけど」


「・・考察系は好きですよ?...でも、最近はフルボイスが主流になってきていて、ボイスが無いNPCの会話とか、読む気になれないんですよね……こういったフィールドに居るだけのNPCに...ボイスが付いてるのは珍しいですね...」


「わかる~!それは俺も飛ばしちゃう派だわ、 最近だとAIが発展してNPCとも自然な会話できるようになったらしいね。」


 俺をよそに、2人の会話は盛り上がっていく。

(気まずい...なんとなく近付いちゃったけど、ここで会話に入らないのは不自然だよな...)

(なんでハヤテはレン相手だとこんな砕けた口調で親しげなんだ・・・てか、レンって..顔はイケメンだけど、どちらかというと俺と同じ陰の者だと思ってたのに...)


 少しすると後ろの方からコウキが声をかけてきた。


「お~い そっちはどんな感じだ?蘇生はしてくれそうか?」


 歩み寄ってきたコウキに振り返るハヤテ。


「あぁ、一応蘇生と状態異常の解除はしてくれるらしい、まだ誰も死んでないから試せないけどな」


「OK、 じゃぁひとまず教会の場所は把握できたし、次はギルドだっけ?早く行こうぜ」


「そうだな、道中で街の真ん中に大きめの建物が見えたけど、たぶんあれじゃないか?」


「あったな~そういえば!  よし、早速行ってみようぜ!」


 こうして教会を後にした一行は街の中心地へ向かう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 先程の教会よりも一回りも二周りも大きく、しっかりと街並みに溶け込んだケルト風の建物がそこにはあった。

 しかし、ギルドの中は廃れていた。

 建物の半分は、冒険者に仕事を斡旋する組合スペースになっており、もう半分は酒場を兼任している。

 しかし、テーブルに座るNPCには生気が無く、もちろん酒の入ったジョッキを持っているわけでもなく、水の入ったコップを両手で包み込み、ただ下を向いているだけだった。

 周りのNPCも似たようなものだった、テーブルに突っ伏したままうなだれている者や、頭を抱える者。

 一応料理は提供されているのか、昼にレンが食べていたスラッジフィッシュらしき料理を不味そうに食べている者も居る。


 比べてクエストを受けるためのギルドカウンターの方は盛況らしい。

 他のプレイヤー達が数十人単位で掲示板の前を埋め尽くしている。

 掲示板に近付こうとすると俺達パーティメンバー全員の眼の前にシステムウィンドウが表示される。


  《チュートリアル:クエストを受けよう》

                     』


小説を書くのは今回が初めてで、手探りで進めています。

読みにくい点や気になる部分などありましたら、教えていただけるととても助かります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

よろしければ感想や評価も励みになります。

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