第2話 幽霊を探し訪ねて 〝下り坂の先〟 2/4
「どうよ! 新車だよ~、先日納車されたばかりのピッカピカの愛車!」
カエ姉が水色フィットのフロントに頬擦りして、息を「はぁ~」とかけてボンネットをキュッキュッと磨いた。
「カエ姉ー、荷物積んだよー」
「出発進行なのだ!」
リアシートの後ろのスペースに荷物を積み込んだ千秋がテールゲートをバンッ! と閉めた。
「あぁんもう、千秋ったら。もっと優しく閉めて。やさ~しく」
カエ姉の気持ち悪いほどの甘え声に、千秋は身震いした。
「……やだ、車を溺愛してる……」
キミは千秋の隣に立って、
「まあ新車だし。俺も免許とって車欲しいなあ」
「車買ったら助手席に乗せてね、ドライブに連れてって」
「買ったらな」
キミの言葉に、千秋は淡桃色の唇から白い歯を覗かせて頬笑んだ。
車に乗り込んだ栞乃がはしゃぐ。
「サンルーフが付いているのだ! すごいのだ!」
助手席にハルが座って、後部座席のカエ姉の後ろにキミ、中央が千秋でその左に栞乃が座った。
「はいはい、はしゃがないの。それじゃ出発するよ~忘れ物ないねー?」
「「なーーし!」」
みんなで声を合わせると、車は軽やかに発進した。
栞乃がリュックサックをごそごそ掻き回す。
それを見てキミは、
「なんだ栞乃、もうおやつタイムか? 遠足みたいだな」
「違うのだー。みんなに配るものがあるのだ」
取り出したのは、数珠。
「百円ショップで買って来たのだ」
白い丸玉の珠で、紅色のボンボンが二つ付いた片手数珠をみんなに配る。
「どうしたの栞乃ちゃん? 何に使うの?」
ハルは首を傾げた。
「悪霊退散に使うのだ! エイッ! エイッ!」
栞乃は片手数珠を握りしめて、シャドーボクシングのようにパンチしてみせる。
「ああー! もしかしたら!」
千秋は荷物を積んだスペースへ振り返った。
「おかしいと思ったのよね、どうしてこんな物があるんだろうって」
キミも振り返って荷物を見る。
茶色の業務用クラフト紙袋が積んであり、それには伯方の塩と印字してある。
二十キロもの塩が入った大きなものだ。
「栞乃……この塩は何に使うんだ?」
「お清めなのだ。幽霊が出たらふり撒くのだ。これも買ったのだ!」
よいしょ、と栞乃は伯方の塩の横に立てかけられた水鉄砲を引っ張り出した。
バズーカくらい大きくて角張ったゴツいデザイン。
空気を圧縮して発射するタイプの水鉄砲には肩ひもが取付けられていて、その全長は栞乃の身長の半分以上ある。
「この中に聖水を仕込んであるのだ」
まるで釣り上げたマグロを抱きかかえるようにして、水鉄砲を両腕で持つ栞乃。
キミは半笑いで眺めた。
千秋は呆れ顔で、
「どこで買って来たのよ? そんなもの……」
「インターネットでいろんなものが購入できることを知って、注文したのだ。こんなのも買ってみたのだ」
悪知恵を習得した栞乃は、今度は束になった短冊をリュックサックから出した。
「悪霊をその場に封印するお札なのだ。水にも強い超強力粘着テープでペタッと貼れる優れ物なのだ。安心の50年保証付きなのだ!」
「それ効き目ないだろ。うさんくさ過ぎる」
「お金の無駄遣いしちゃって栞乃は……」
キミと千秋が言うと、栞乃はムッと膨れた。
「幽霊に襲われて助け出された2人が、『ありがとう、ありがとう、栞乃様のおかげで助かりました』って言うのが目に浮かぶのだ!」
「「ないない」」
キミと千秋は首を横に振った。
一行を乗せた車は国道398号線を安全運転で走行し、目的の橋へと向かう。




