第7話 〝こっちにたくさん〟 1/3
夜。
キミはベッドに横になって漫画を読んでいた。
とそこへ栞乃からメールが。
〈お爺がギックリ腰になったのだ。山菜のストックもないから、みんなを誘っているのだ。今度の休みに、入山するのだ!〉
いまの時期、皆瀬村の山で採れる山菜は、フキ・ミズ・ワラビくらい。
その他のマイナーな山菜を素人が見つけるのはなかなか難しい。
〈山菜がたくさん採れるポイントをお爺から聞いているのだ。ハルも千秋も来るのだ〉
メールを読んだキミは、とくに断る理由もないので、
〈暇だから良いよ〉
と返信した。
早速キミは準備に取りかかる。
都会人のように、安易に入山して遭難しないためである。
日本で、所有者のいない土地は存在しない。
とうぜん皆瀬村の山も私有地と公有地が存在するわけである。早い話が、人様の山に勝手に侵入して山菜を盗ることになる。侵入罪と窃盗罪である。
だが、村において古くから『山はみんなのもの』という意識が根深くあり、要するに暗黙の了解が成立し、村役場でも山菜採りは黙認である。けれどもこれには例外があって、「私有地につき立ち入り禁止」や「関係者以外立ち入り禁止」の立て札がある場所での山菜採りは違反であって、手を付けないのが村の掟である。それを守って入山する。
準備するものは、帽子と手袋、雨カッパはもちろんのこと飲料水と少々のお菓子、熊よけの鈴、虫除けスプレー、ハサミ、カマ、そして収穫した山菜を入れるカゴだ。
怪我に備えて消毒液や絆創膏、包帯に、万一遭難したときのために発見されやすい白いタオルと手鏡(光を反射させるとヘリコプターからでも確認できる為)はリュックサックに常備で、スマートフォンとソーラー充電器は必須だ。
ちゃんとGPSが機能するか?
キミは地図アプリとGPSが連動して動作することを確認する。
電波の届かない山中で道に迷っても、自分の現在地が把握できるので重宝するからだ。
「……つーか、スマホのライトがあったな…………」
千秋に置いて行かれた時の夜がふと頭を過った。
千秋ばかりを責めたが、冷静に考えればこのライトを点灯することもできたわけで……。
ちょっぴり罪悪感が湧いて、明日の山菜採りでは千秋の荷物を持ってあげようと思った。




